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或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「その女アレックス」(著:ピエール・ルメートル/訳:橘 明美)

2017-03-06 23:44:20 | 【書物】1点集中型
 ずっと気になってはいて、ブームもまあ落ち着いてきて待ち期間なしに借りられるようになったので、今さらながらやっと読んだ。

 おぞましい誘拐事件が物語の主軸かと思いきや、それ自体はあっさり解決。だが、自力で犯人から逃げ出したまま行方不明の被害者を追う中、別の事件が浮かび上がってくる。……という点は実は裏表紙の粗筋に書いてあったのだが(笑)それを読まずに読み始めたのだった。
 被害者の女が実は別の事件の加害者である可能性が浮上し、その足跡を辿ると殺害の手口が誘拐事件に負けず劣らず凄惨なものであることが判明する。女は本当は何者なのか? 予想外の方向に二転三転する物語と事件には、こういうストーリーテリングもあるのかぁ、と目から鱗が落ちる思いだった。ネタバレするのはもったいないサスペンスフルな展開なので、あえて詳細は措いておく(笑)。

 タイトル通り、女=アレックスのすべてをさらけ出す物語である。誘拐も、その後の彼女の足取りも、次第に明らかになるその壮絶な過去からも、読み進めていくとどんどん目が離せなくなっていく。自らも傷を負っている捜査担当カミーユ・ヴェルーヴェン警部と、捜査班の面々の個性にちょっと癒されもする。ルイとアルマンの両極端さがいい。このチーム編成はまさしく実写向きかも。
 最後は、アレックスがまさに命を賭した復讐を試みる形になる。なぜ彼女はその選択をしたのか。そしてその真意をおそらく知りながら、カミーユをはじめとする捜査班が下した決断とは。
 この結末、例えば杉下右京とは相容れないタイプの正義だけど(笑)どこかで共感はしてしまうんだよなー。でもこの決断がもしかして捜査官としてのカミーユのその後に影響を及ぼしたりすることがあるのだろうか。その点も含めて、カミーユが登場するほかの作品にも俄然興味が湧いてきた。


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