金木犀、薔薇、白木蓮

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62:柴田よしき 『小袖日記』

2017-05-16 11:07:39 | 17 本の感想
柴田よしき 『小袖日記』(文春文庫)
★★★☆☆3.5

【Amazonの内容紹介】

上司との不倫に破れて自暴自棄になっていたあたしは、
平安時代にタイムスリップ!女官・小袖として
『源氏物語』を執筆中の香子さまの片腕として働き、
平安の世を取材して歩くと、
物語で描かれていた女たちや事件には意外な真相が隠されていた―。
ミステリーをはじめ幅広いジャンルで活躍する著者の新境地。

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「平安貴族は臭い」というのをきちんと書いた物語、として
ネットで見かけて読んだもの。

確かに、「トイレは庭の小川で」「風呂にはめったに入らないから体臭を香でごまかす」
「死体置き場に死体を捨ててたので、風向きによってはその臭いが」等々、
優雅なだけではない平安京ライフをしっかりと描いている。
話し方(発音、発声)の現代との違い、にもちゃんと触れてたし。

話としては、不倫の果てに自暴自棄になっていた現代のOLが、
落雷によって、紫式部の手伝いをしていた「小袖」という女官と中身が入れ替わり、
『源氏物語』の知識をもとにして、
「モデルになった人物・事件はこうだったんじゃない?」
と謎解きをしていくというもの。

好きな要素もいっぱいあったのだけれども、
「○○(架空の人物)は本当は××(実在の人物)だったんだ!」
とか、
「これは、主人公がああしたことが影響してるのね!」
とかいう展開を期待していたので、少々肩透かしを食らった。
「もといた世界より重量が弱い」というのも、繰り返し出て来るので
何かの伏線かと思いきや、単純に
「現実の平安時代じゃない、パラレルワールドですよ」
というのを示すためだけ、都合よく話を進めるためだけの
設定だったみたいでがっくり。
フェミニズム色が強くなっていくのも好みじゃない。

ただ、「『源氏』の元ネタ」を作り上げ、それをミステリー仕立てで
追っていく試みは面白い。
源氏&平安時代ファンにはおすすめ。


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