2024年3月9日に日比谷コンベンションホールにて「混迷する世界情勢とメディアの情報操作」と題する講演会が開かれました。基調講演として元外交官、東アジア共同体研究所所長の孫崎 享氏、第二部講演として経済・文明評論家の増田悦佐氏、政治経済学者の植草一秀氏とrakitarouが行い、その後パネルディスカッションに移りました。全体として内容の濃いまとまりのある講演会であったと自負しますが、以下に備忘録として概要を記します。
第一部 基調講演 孫崎 享 氏
1945年9月2日の日本の降伏文書調印と同時に日本は連合国軍最高司令官の命令に全て従う事を約束した。占領下において、日本を管理するため、戦前からの支配層を「生活と利権を保証」してそのまま使うことを決定。当時の支配層も米国に追従することで生き延びた。結果全て米国の支配に従う体制が戦後続くことが決定的になり冷戦後もそのまま続いた。細川政権、鳩山政権はその体制から逃れたが、官僚、経済界、メディアが総出で潰しにかかった。統一教会潰し、安倍元総理暗殺と安倍派潰しは現在のグローバリズム体制がそれらの勢力が残る事に不都合が生じたためであり、22年7月の安倍元総理暗殺は22年2月に始まったウクライナ戦争に対するロシアの立場を代弁する安倍元総理の存在が23年5月に開催された広島サミットの共同宣言に影響を与える事をグローバル陣営が嫌った可能性がある。いずれにしてもグローバル一極支配は限界に来ている(下図)。
2024年CIA資料によると購買力平価では米国は既に中国に経済力で抜かれている
第二部講演 増田 悦佐 氏
なぜ二酸化炭素が目の敵にされ、EVというエネルギー浪費がもてはやされるか
生物の大絶滅は歴史的にCO2が低く、気温が高いか、逆にCO2が高く、気温が低い時に起きやすい(下図)。三畳紀の生物80%絶滅時は、60万年かかってCO2が高く、気温が低い状態で絶滅が起きた。人間が100年かそこらで何かして起こる絶滅などない。アフリカで暑さによる死亡は殆どなく、寒さで120万人毎年死亡している。(下図)クリーンエネルギーは高コストで環境破壊でもある(下図)
第二部講演 植草 一秀 氏
軍産・戦争問題とメディア ウクライナ戦争と台湾有事
ウクライナ戦争でロシアの経済制裁に賛成しているのはG20では10国だが人口比では19%。(下図)
民主党2010年6月政変で尖閣漁船衝突事件が誘発され(下図)、尖閣棚上げ合意が反故にされた。
戦争と財政収奪、パンデミックと温暖化という国際的詐欺で断末魔のビジネスをグローバリストは展開。
第二部講演 rakitarou
2023年の死亡者数は2016年から2020年までの5年間の平均を23.5万人上回り、とびぬけて多かった2022年22.7万人増加よりも増えた。(下図)ワクチンを打つほどコロナ感染者数は爆増し、死亡者数も増加している(下図)。
第三部 パネルディスカッション
議題 1 米国の意思(Deep state)とは誰が決めており、何を求めているのか。
孫崎 1%の富を独占する人達が国の方針を決定できるシステムができてしまっている。メディアも権力を見張る側でなく、権力機構の一部になってしまっている。
増田 1946年の連邦ロビイング規制法により、ロビー活動の合法化がなされて、贈収賄による政治が確立された。イスラエルロビー(AIPAC)やライフル連盟は目的があるが、WEFや巨大資本は人口削減を狙ってくる。
植草 利潤追求の資本主義は結局少数の人間が意思決定をする機構に集約する。資本主義と民主主義は対立するので、民主主義側の多数の人達の意思決定をゆがめるためにメディアの偏向が行われる。
議題 2 社会を本来あるべき姿に戻す方策はあるか
孫崎 個々の事例で是々非々を皆で考えられる体制を作る。
増田 ガザの虐殺を批難する世界中の声を現実に反映することの方が容易だ。
植草 選挙で50%を占める無党派層が情報統制で無関心になっている状況を変えられる公益に徹した政党集団やメディアの確立が急務だ。
議題 3 今後グローバリズム一極主義がのこるか、多極主義に向かうか
孫崎 G7の凋落は著しく、一極支配はすでにないが、多極陣営がどこに向かうかの道標も現在存在しない。
増田 一極支配自体が幻想であり、グローバリズムは計画性のない出鱈目な政策で人間を殺している。愚かな大統領が核のボタンを押してしまう事が一番恐ろしい。
植草 G7が応援しているウクライナは負ける。力ずくの支配がもう不可能になり、日本も一極支配側の従僕にとどまると一緒に没落してしまう。
議題 4 IT化やAIが世界情勢に影響するか
孫崎 AIは人類よりも進化が早いから将来人類の脅威になりえる。
増田 AIは決まった計算をする事は早いが、曖昧を理解できない。IT化による経済成長は蒸気機関の普及による経済成長よりもはるかに小さい。
植草 AIによる意思決定、特に軍事的な意思決定をAIに任せるリスクが大きすぎる。
シンポジウム後の参加者からの質問
質問 通貨発行権が各国政府にない状態だが、問題か?
増田 通貨発行中央銀行が管理している金よりも市中でやりとりされる金が何倍も多いから経済そのものをコントロールすることはできない。
質問 良い情報を得る方策はあるか
各氏 基本となる良い書籍を読む。海外のサブスタックなどのネットを当たる。
質問 次期米国大統領候補とイスラエルロビー(AIPAC)の関係は?
増田 バイデンとトランプはAIPACからの支援が切れないのでガザ虐殺反対を強く出せないのだろう。RFKJr.は本人自体がシオニスト側だ。
質問 日米委員会が日本の統治に現在も強く関与しているか
孫崎 日米委員会自体は外務省管轄で米軍司令官と極めて事務的な連絡調整制度に堕している。米国の要望は大使館や国務省から直接該当部署や大臣に言われる事の方が多い。日米委員会は米国支配のシンボルとしてやり玉に挙げやすい存在だが、現実的にはそれほど重要ではない。