湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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☆バックス:ヴィオラ・ソナタ

2016年10月20日 | Weblog

○プリムローズ(Va)コーエン(P)(DOREMI)1937・CD

都会的な趣をもつピアノと民謡調のしらべをかなでるヴィオラのハーモニーが印象的な、イギリスの作曲家アーノルド・バックスの佳作のひとつ。バックスには珍しく難しいパッセージも晦渋な雰囲気もなく、ここでは二人の名手によっていくぶん感傷的な音世界が繰り広げられている。ヴォーン・ウィリアムズと比較される事があるが、どちらかというとウォルトンの室内楽作品を感じさせるような所もあるし、旋律構造やピアノ伴奏にはドビュッシーからの顕著な影響がみられる。強烈な個性は余り感じないが、連綿とうたわれる旋律やちょっと特殊な伴奏音形には魅力があり(傾倒していたアイルランド音楽が引用されているらしい)、ロマンティックな中にも近代的な作曲手法が施されたバックスならではの世界を堪能できる。27分弱というかなりの大作であるが、全般にゆっくりとした箇所が目立ち、「アレグロ」とされる部分でもさほどスピーディではない。名技性より音楽性を重視した曲作りは結果としてかなり聴き易い音楽を産み出しており、この点バックスの曲にしてはわかりやすいという印象を与える。バックス入門盤としては適切であろう。コーエンは洗練された手さばきで「イギリスの印象主義音楽」をそつなくかなでている。プリムローズにかんしてはもはや何も言うことはあるまい。少々ヴァイオリン的な明るい響きが快く耳朶を震わす。テクニックの必要な曲ではないが、それでもこれだけ印象的な音楽をかなでられるというのは20世紀のヴィオリストを代表する巨匠にして可能となったものであろう。感傷的な雰囲気が何ともいえない、この曲を聴くには最適のソリストだ。名演。 ,
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