習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

西加奈子『まく子』

2016-08-06 20:07:32 | その他

 

こんな話ありなのか。なんでもありの今の西加奈子には怖いものはない。ふつうやらない。西加奈子版『ET』は、スピルバーグも驚きの展開だ。もちろん、これはSFファンタジーではない。

 

ひとりの少年の成長物語だ。彼と不思議な転校生の少女の交流を通して、小さな田舎町で起きる奇跡の物語が始まる。そんなバカな、と思いつつも、信じたくなる。宇宙人はいる。だって、僕自身がほかならぬ宇宙人なのだから。

 

こういう大きなスケールのお話を、この小さな田舎の温泉町で見せていく。まく、という行為はふつう女の子はあまりしない、なんてことを、言われて改めて納得させられる。そんなこと、今まで考えたこともなかった。

「まくことが好きなのは、男だけだと思っていた。」という一文から始まるのだが、そんなことすら思いもしなかった僕は、そこから始まる、この一見たわいもないようなお話にどんどん引き込まれ、最後は信じている。

 

コズエという少女の正体がなんであろうともいい。子供から大人へと変わっていくからだの不思議の少年は戸惑い、嫌悪する。彼の初恋物語だとして受け止めてもいい。だが、この小さなお話はそんな簡単な枠に収まることはない。壮大なスケールのちっちゃなお話なのだ。

 

宇宙人だという、まく子の存在を信じてしまう自分。彼女が誰であろうと、何であろうと構わない。自分は彼女が好き。人を受け入れる。好きになるって、そのすべてを、そのまま受け入れて信じることで、だまされてもかまわないと思えることだ。宇宙人であることは、たまたま、でしかない。

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『コングレス 未来学会議』他 | トップ | 『フレンチアルプスで起きた... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。