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映画・演劇のレビュー

濱野京子『石を抱くエイリアン』

2016-08-18 14:12:14 | その他
  草野タキ『Q→A』に続いて中3男女の群像劇。受験までの1年間の物語なのだが、ただしこれは特殊なケース。彼らは1995年に生まれた。だから、2011年3月中学を卒業する。この運命的な時間がこの小説の基本設定としてある。一目瞭然だが、阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件の年に生まれ、3・11のとき、卒業する。茨城県のとある中学の6人の少年少女たち。   それだけで、もうこの物語は涙なくして読めな . . . 本文を読む
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『ロマンス』

2016-08-18 07:45:52 | 映画
  タナダユキ監督の最新作。こんなタイトルなのに、甘い話ではない。主人公を演じる大島優子はずっと不機嫌だし、彼女の周囲にいる人たちはみんな彼女を不愉快にさせるばかり。何もいいことなんかない。ロマンスの種は彼女の周囲にはゼロ。なのに、このタイトルなのは、彼女の仕事がロマンスカーの販売員だからなのだが、もちろん、それだけではない。   恋人のようなヒモ男はお金をたかるだけ。職場の同僚はグズでドジ . . . 本文を読む
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『ソレダケ』

2016-08-17 20:46:24 | 映画
  石井岳龍監督が復帰後、初めてアクション映画に挑んだ作品。それだけに期待は高まる。評判はよかった(ようだ)。だが、僕は乗れなかった。『シャッフル』のように走るだけの映画か、と思わせる滑り出しは快調だ。だが、捕まってから、また、逃げ出して、追われて、という展開にまるで緊張感がない。これはふざけているのか、と思うくらいに、危機感のない描写で、同じところをぐるぐるまわるばかり。   これは疾走す . . . 本文を読む
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草野タキ『Q→A』

2016-08-17 20:43:29 | その他
5人の中3、少年少女。彼らの1年間を追う。5人の視点から描かれる5つの短編小説がそれぞれふたつずつセットになって、全部で10篇の短編連作で、1年のお話を成す。さらには、2つの作品はタイトル通りQ→Aという対応をする。さらに、さらに、それぞれの短編の内容ででも、質問に答えるエピソードが根幹をなす。いろんな意味で、なんだか、実にスタイリッシュなのだ。アンケートに答えることで、自分をみつめていく。Qから . . . 本文を読む
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『X-MEN アポカリプス』

2016-08-15 20:01:23 | 映画
もうこの手のヒーロー映画はいいよ、という気分なのだが、X-MENシリーズの完結編なので、ついつい見に行ってしまった。暑かったからスカッとするアクション映画が見たかったというのもある。あまり期待はしてなかったのだが、想像以上の出来で大満足する。 複雑なストーリーを用意して人間ドラマとしても楽しめるように作られてある。旧シリーズ3部作につながる新3部作の完結編という『スターウォーズ』のような連作なの . . . 本文を読む
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空の驛舎 『ただ夜、夜と記されて』

2016-08-11 16:00:34 | 演劇
いつも無口な芝居を作る中村賢司さんが、今回はとても饒舌に気持ちを語り尽くす。しかも、説明不要な単純な内容で、さらには、ファンタジーのような設定を臆せず使う。これは一体どういうことだろうか。なんだか不思議な気分だ。もちろん、作品はとても素敵だし、コミカルな描写も微笑ましい。(山羊の役になった石塚さんがとても受けていた)   夜の闇の中にたたずむ。そこはこの世とあの世の境目だ。そんなふたつの世界を . . . 本文を読む
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『トランボ  ハリウッドに最も嫌われた男』

2016-08-09 18:49:46 | 映画
ダルトン・トランボの伝記映画なんて、そんな地味な企画が1本の映画になるなんて、もしかしたらこれは奇跡だ。と、冷静に考えたらわかる。でも、そんなことより、まず僕がこの映画が見たかったのは、トランボという男が好きだから。それだけ。  『ジョニーは戦場に行った』という1本の映画が子どもの頃の僕を打ちのめした。だから、彼の名前は今も記憶のかたすみに深く刻まれている。中学3年生の頃、TVで見た。あまりのシ . . . 本文を読む
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『秘密  THE TOP SECRET』

2016-08-08 14:34:06 | 映画
『るろうに剣心』の大友啓史監督作品。2時間半に及ぶ大作。しかも、始まったところからもう事件の核心に迫る。少しの余裕もない。息せき切るようにお話が展開する。怒濤のドラマ。圧倒的な情報量。待ったなし。あれよ、あれよと言う間にどんどん話が進展する。取り残されないようにしなくてはならないから、スクリーンに集中するしかない。だが、なかなかお話が読めない。どうなるかも予想がつかない。なんだ、なんだ、と思わせる . . . 本文を読む
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伊坂幸太郎『サブマリン』

2016-08-08 14:31:30 | その他
『チルドレン』から12年振りの続編。あの家裁調査官陣内と部下の武藤が帰ってくる。陣内のいいかげんな対応は健在。自己中で、適当。みんなに迷惑ばかりかけている。実に困った男だ。だが、みんな彼を憎めないやつ、と思っている。彼のペースに巻込まれて嬉々としている。   ふつうなら、こういう人物は胡散臭いし、関わり合いたくない、と思うはず。確かにみんなもそうも思っている。表面では。だが、みんなは知っている . . . 本文を読む
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山崎ナオコーラ 『美しい距離』

2016-08-08 14:22:06 | その他
    40代初めで、まだまだ若いのにガンに罹り、死にゆく妻を看取る夫、という図式は昔の「難病もの」映画の設定そのもの。6、70年代じゃあるまいし、今時そんな「お涙頂戴映画」はもうない。だが、山崎ナオコーラはそれに挑む。   もちろん読者の涙腺を刺激するためではない。今こんな状況にある。それを受け止めて出来ることを全力でしようとする男の姿を静かに描くだけ。介護休暇を取り、仕事を出来るだけ家 . . . 本文を読む
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『フレンチアルプスで起きたこと』

2016-08-06 20:10:37 | 映画
  このさりげないお話の虜になる。最初はパニック映画か、と思ったほど。リゾート先で雪崩に巻き込まれた家族のお話だと思っていたから。だが、そうじゃなかった。   確かに雪崩のシーンは出てくる。しかも、映画のかなり最初の方で。そのエピソードが起点となり、お話は進行する。だが、ここで描かれるパニックは、目の見える、体験するそんな「災難」ではなく、内面的な問題なのだ。デザスター映画じゃない。   . . . 本文を読む
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西加奈子『まく子』

2016-08-06 20:07:32 | その他
  こんな話ありなのか。なんでもありの今の西加奈子には怖いものはない。ふつうやらない。西加奈子版『ET』は、スピルバーグも驚きの展開だ。もちろん、これはSFファンタジーではない。   ひとりの少年の成長物語だ。彼と不思議な転校生の少女の交流を通して、小さな田舎町で起きる奇跡の物語が始まる。そんなバカな、と思いつつも、信じたくなる。宇宙人はいる。だって、僕自身がほかならぬ宇宙人なのだから。 . . . 本文を読む
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『コングレス 未来学会議』他

2016-08-06 20:01:46 | 映画
  『コングレス 未来学会議』はロビン・ライトが本人役で出演する。売れなくなった女優だなんて、酷い設定を受け入れる。さすが大物女優だ。アリ・フォルマンは今回、前半を実写、後半でアニメーションというスタイルを選ぶ。   役者が自分のイメージ(外見だけではなく、内面も、である)をそのままトレースしたCG映像に身を売る。コンピュータに本人のすべての情報をインプットして、そのCGが自在に演技をする権 . . . 本文を読む
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『ワンピース フィルム GOLD』

2016-08-06 19:53:25 | 映画
  3年半ぶりの新作となるようだ。前作『Z』も面白かったけど、今回も気合いの入った大作仕立てで、前作に続き本作も原作者の尾田栄一郎が自らプロデュースする2作目。   「ようこそ、グラン・テゾーロへ」という何度となく聞いた予告編の冒頭の一言が、この作品を象徴する。巨大なカジノであり、船であり、国家。無法地帯の独立国。ここに君臨するテゾーロは、ここからやがて世界を支配するつもりだ。そこにやってき . . . 本文を読む
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樋口直哉『キッチン戦争』

2016-08-06 19:51:19 | その他
  料理は戦いだ。そんな感じの小説なのだが、描こうとすることは、「自分に負けないように努力する」というすべてに通用することだ。その普遍性がこの小説を感動的なものとする。スポーツ小説に近い感触だ。日本最高峰のフランス料理コンクールに挑む若きシェフを主人公にしたスポ根。   おいしいものが出てくるはずなのだが、小説なので、見えないし、作るほうなので、食べる描写は少ない。しかも、コンクールなので、 . . . 本文を読む
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