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映画・演劇のレビュー

『トガニ 幼き瞳の告発』

2013-04-27 08:25:35 | 映画
 こんなにも怖い話はない。それをここまでストレートに見せる。凄い映画だ。もちろん、これはホラーではない。ホラー以上に怖い事実だ。聴覚障害を持つ子どもたちに暴行や性的虐待を行い、それを隠蔽する教育者たち。ありえないような目を覆いたくなる行為が生々しく描かれる。こんな話の映画に挑戦した3人の子供たちがすごい。彼らの体を張った迫真の演技がこの恐ろしい映画を成立させた、と言っても過言ではない。絵空事ではない。まるでドキュメンタリーでも見るくらいに生々しい。何度も目をそむけようとした。そむけたかった。でも、目を逸らすわけにはいかない。

 その覚悟のほどに、この作者の義憤と決意を見る。これを描かなくてはならない。そこから目を逸らしてはならない。その事実を広く人々に伝える。そうすることで、世の中を変える、と信じた。実際にこの映画を通して、韓国では、児童への虐待、性的犯罪に対する法律が変わったらしい。

 前半はこの学校に赴任した美術教師が、ここで行われるとんでもないことを目撃し、告発するまでが描かれる。後半は裁判。悪魔のような犯罪者たちは、なんとかして自分たちのしてきた事実を隠蔽しようとする。見ていて、見ているだけで苦しくなる。卑劣な人間たちばかりだ。主人公の教師と被害にあった子どもたちは、被害者であるにもかかわらず、どんどん追い詰めれていく。

 こんな酷いことが現実にあった、ということに驚く。でも、それだけではない。もっと怖いことは、告発した者が、こんなにも不当な扱いを受けるという事実だ。検事も弁護士も裁判官も最悪で、こんなやつらの裁判を委ねるなんて、堪らない。果てしなく悲惨な話である。救いようもない。だが、その事実の先に未来がある。そう信じたい。

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