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映画・演劇のレビュー

藤谷浩『花や今宵の』

2016-10-25 00:43:14 | その他
最近こういうファンタジーがあまりに多すぎて、またか、と思ってしまう。まぁ、実を言うと『君の名は。』が大ヒットしたことで、ついついそんな気になるだけで、これは今に始まったことではないのだけれども。しかも、この小説が『君の名は。』にあやかった企画であるはずもないし。



しかし、これはいかにも新海誠がやりそうな話で、藤谷浩がなんで、と思いつつ、読む。ラストのパラレルワールドとか、冬に咲く桜の謎、とか、神隠しにあった19年間、とか、19年に一度咲く、とか。お話自体はミステリアスで、よく出来ているし、19年前と現在を往還してその日(19年後の今日!)を描く、という構成もよくあるパターンなのだが、それはそれで悪くはない。



だけど、今の僕には少しインパクトに欠ける。(要するに、またかぁ、なのである)田舎の村に残る平家の落ち武者伝説(『八つ墓村』!)、平忠度の謎の和歌(「行き暮れて木の下かげを宿とせば花やこよひのあるじならまし」)というお膳立てもよく出来ている。しかし、それがあまり「純文学」のタッチの中に上手くは落としこまれてない。



あの事件のことを、あの時と今とを並行して時系列に見せていく。あの日失ったものを取り戻せるのか、がお話のポイントになるのだが、彼女との再会にはならないだろうし、単純に結末の興味だけでお話を作るわけではない。要するに、こんな話で、この展開なのに、ドラマチックにはしないのだ。ずっと不在だった彼女の消息も、新展開はないにもかかわらず、それが作品全体の魅力を形作れるのかが、作品の鍵を握る。だが、残念ながら、あの終わり方では納得がいかない。失ったものをずっと抱え続けて生きたことに意味を問うようなラストが欲しい。それは主人公の彼だけの問題ではなく、親友のラーメン屋と、彼女の父親。3人の対比も含めて描かれるべきだった。
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