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No1491『PLAN75』~身につまされるようなリアル感~

久しぶりに映画館で新作を観た。
倍賞千恵子さん主演、
75歳になったら、政府が奨励する「PLAN75」で安楽死できるという話。

冒頭、いきなり、不穏な空気から始まる。
血に染まった腕、
銃を握っている若者、
倒れた車いす。

日本では、老人が増えすぎて、若者の負担が過酷であり、
若者の未来が奪われているから、
老人を大量殺人したと遺言を残して、
若者は自分自身に銃口を向ける。

この映画、解説的な描写はほとんどなく、
想像の余白がたっぷり。
どうも老人介護施設で、大勢の老人が殺害されたらしいとわかる。

この最初の導入がなんともショッキングで、
実際に起こりそうに思えるから悲しい。

政府が主導で、
75歳以降ならだれでも安楽死できる制度ができ、
しかも10万円までもらえて、共同埋葬もしてくれるという。

将来に不安を感じているお年寄りに
まるで保険か旅行でも勧誘するかのように、
安楽死プランを薦める若者たち。

プランにかかわる若者たちの疑問やわだかまりも
映画は描く。

断片的に描いていくから、
たとえば、倍賞さんが演じる主人公の過去も、
深くは語られない。
でも、夫に死なれて独り身だということだけはわかる。
子どもも、いないか、死なれたか。

どういう決断をするのか。

一番辛かったのは、倍賞さんが
職を奪われ、夜の工事現場の警備で
道路に立っている姿だ。

赤いランプがピカピカ光る工事現場で
同じようなランプが光る服を着て、赤く光る棒をもって
交通整理に当たる倍賞さんの背中を
カメラは、じっと写し続ける。

ここまでしないと生きていけないのか。
倍賞さんは、しっかり者で、礼儀ある立派な日本人であることが
日常生活のふるまいからよく伝わる。
解雇されて、職場を去る時も、使い慣れたロッカーに
お礼を言うほど。
きっちりして、同僚にも優しく、面倒見がよくて、
まだ働けると思うから、生活保護を受けずに
働こうとするけなげな生きざま。

この映画を観て、いろいろな感想があると思う。

でも、最後はやっぱり、どんな状況でも、生きていくこと自体に希望があるのだと
思いたい。
そして、そこには、自然があり、世界があり、歌がある。
倍賞さんの歩いていく後ろ姿が心に焼き付いた。

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