小山田桜台ジョギングクラブ

尾根緑道、小山田緑地、小山内裏公園周辺をフィールドとしている走友会です。
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八ツ沢発電所導水路巡り

2024-04-16 16:36:48 | Weblog

前回の導水路巡りの続きということで、八ツ沢発電所導水路巡りに行ってきました。

八ツ沢発電所は駒橋発電所の5年後の明治45年に完成した日本で初めての大規模な電力需要に応じて水量を調整する調整池式発電所(最大出力42,000kw)で、建設当時は水力発電所として東洋一の規模を誇り、1世紀以上たった現在でも稼働しています。

また、この発電所関連施設では取水口~発電所水槽までが2005年に国の重要文化財に指定されています。
東京電力のニュースリリースでは
「今回、重要文化財に指定されたものは、取水口施設、隧道、水路橋(谷間などに水路を渡すための橋)、調整池をはじめとする合計20箇所の発電所関連施設と土地で、約14kmの範囲におよび、わが国の重要文化財の中で最大規模となります。
 重要文化財の指定にあたっては、明治後期の水力発電所建設の黎明期における大規模な水力発電所関連施設が水系全体として残っていることに加え、当時の鉄筋コンクリート構造の水路橋としては国内最大級の径間(橋脚の間隔)を実現した第1号水路橋や、ダムの高さとしては国内最大であった大野調整池堰堤など、複数の構造物に高度な土木建設技術が発揮されていることなどが評価されました。」

八ツ沢発電所の導水路は今までの導水路より長い(2個分以上)のはなぜだろうか?調整池を作るためか?と思いましたが、地形図を見ると桂川が大月から中央本線沿いに向きを変えると傾斜が緩やかになり、そもそも100m程度の落差を得るには四方津辺りより先(東京寄り)にする必要があることが分かりました。また、桂川の右岸で取水したのになぜ猿橋の水路橋で左岸に渡るのかは左岸の方が調整池を設けるのに適した土地があったからではないか?など思いました。

今回の導水路巡りは元々、国道20号線を通る等あまり乗り気ではなったのですが、八ツ沢発電所導水路巡りは長そうだが、どの位の距離なのか、どの位の時間がかかるか/一日で回れるのかと結構詳しく検討をしてしまい、前回と同程度で回れるだろうという結論だったので検討内容を忘れない内に出かけたという感じです。季節的には桜が終了しかけて葉が展開を始め、森の見通しがギリギリという条件でした。天気もやはり曇りの日を選びました。

ここも中央道から見えた記憶がありますが、JRの中央本線が発電所の水槽の真下を通るので、甲府方面に向かって上野原駅を出て直ぐ右手に水圧鉄管が一瞬ですが大きく見えます。


中央道からの眺めで、グーグルのストリートビューから借用した写真です。駒橋発電所のときより遠いので見難いですが、中央奥に見える4本線がそうです。(2024年1月の画像)


これが今回のガーミンのGPSウォッチのログです。JR中央本線の猿橋駅をスタートし、上野原駅がゴールのコースです。
国道20号線沿いをメインに進み、鳥沢駅と梁川駅の中間辺りで山に向かい、大野調整池に寄って発電所近くまで再び国道20号線を進むルートです。実際の距離と時間はガーミンで30.5km、時間は8時間39分、YAMAPでは距離26.6kmでした。まあ、大体想定内といったところでした。


予定より早く着けたので猿橋駅を8時にスタートしました。


まずは前回行った駒橋発電所の放水口を見たくて、上流の発電所の方に向かいました。
この地図で、猿橋駅は右側、駒橋発電所の放水口は左側で「駒橋発電所」の「所」の位置です。放水口は桂川の対岸から見ることになります。(地理院地図)


駅を出て少し高い所から上流の駒橋発電所方向を見たところです。見える多くのものが八ツ沢発電所の取水設備で、結構大規模です。発電量が多く、大量の水が必要なせいでしょうか?


少しアップして撮影しました。中央やや左上のクリーム色の建物が駒橋発電所です。中央で大きく弓状に曲がって伸びているのが桂川の堤防で、この右側が桂川、この中を中央を左から右に伸びる白っぽいものが重要文化財「取水堰堤」です。このおかげで桂川にあまり水は見られません。一方堤防の左側が駒橋発電所からの放水路です。


駒橋発電所を過ぎて画面奥から対岸に渡る橋に来ましたが、滝が見られました。中央本線の下から出ていますが、どうも駒橋発電所の余水路の流れのようです。前回来た時は気が付かなかったので流れていなかった?


本題からはそれますが、少し戻って上ってみました。これが余水路です。足元の水路トンネル出口から流れています。余水路は右に曲がって防災倉庫を越え、今度は青く見える金網部分で左にS字状に曲がり、中央本線の線路を潜っています。


さて本題に戻り、対岸からの駒橋発電所放水口ですが、事前にストリートビューでも色々確認していましたが、やはり難しいです。今回、何ヶ所かで撮影してこれが最高の見えでした。画面中央付近で放水口が横に並んでいるのがどうにか分かります。もう少し早い時期なら多少ましかもしれませんが。ちなみに、ここは河原に下りても間に堤防があるので見ることが出来ません。


先程の橋を渡って再びこちら側に戻り、駒橋発電所からの放水路を下って来ると、重要文化財「取水口制水門」があります。取水堰堤でせき止められた桂川の水が向こう側から入ってきます。入ってきた所からは重要文化財「取水口沈砂池」となります。


制水門をアップしてみました。100年以上前の現役施設で、中々風格があります。


制水門を過ぎて上流側を振り返って見ています。左奥に見える桜辺りが駒橋発電所の放水口になります。
人道橋があって分かり難いですが、画面右上2/3が駒橋発電所からの放水路及び沈砂池で、左下1/3が八ツ沢発電所取水口に向かう水路です。沈砂池から低い堰を越水して流れて来ています。


ほぼ同じ位置から反対方向(下流)を見ています。左に見える人道橋が前の画面で中央を横に走る人道橋です。
左側の水路が沈砂池、右側が八ツ沢発電所取水口に向かう水路です。


更に下流に来ました。暫く沈砂池と取水口に向かう水路が並んでいます。両者の水面の高さの違いが分かります。


水路の末端ですが、ここでも沈砂池からの水を受け入れています。


八ツ沢発電所取水口です。ここから水路トンネル重要文化財「第1号隧道」に入ります。
まだ導水路の始まりですが、ここまで1時間ほどかかってしまいました。


猿橋から始まる、水路橋などが多い、今回のハイライト部分を示す地図です。(地理院地図)


約1kmの第1号隧道が終わって街中に現れた重要文化財「第1号開渠」です。前の地図で左端近くにある短い水路です。


近づくと金網越しに水の流れを確認できます。水は画面奥に流れています。


途中に水路の幅が広がっている所がありましたが、用途は?



反対側の重要文化財「第2号隧道」に入る所から見ています。


第1号開渠の隣にある猿橋公園です。


桜(特に枝垂れ系)が多くありました。


大月市郷土資料館横のベニシダレです。


名勝猿橋に向かう遊歩道からの桂川の眺めです。奥に見える橋は中央道です。


名勝猿橋です。


猿橋から見た重要文化財「第1号水路橋」です。ここを通って導水路は桂川の左岸に渡ります。やはり緑があると雰囲気が良いですね。


前回来た際には見忘れた水路橋の上からの眺めです。水は画面奥に流れています。


重要文化財「第3号隧道」入口です。なかなか立派です。


きちんとした表示もありました。

ここからは街中を抜けて国道20号線に沿った導水路を見てゆきます。メインは重要文化財「第2号水路橋」、「第3号水路橋」、「第4号水路橋」です。


前掲した地図です。(地理院地図)
「第2号水路橋」は多分、画面中央やや上で水路が小さな流れを越える部分(白抜きになってないが)の緑色リング部分
「第3号水路橋」は画面右上の国道20号線(赤線)の近くの緑色リング部分
「第4号水路橋」は「第3号水路橋」の右下で水路が小さな流れを越える部分の緑色リング部分
地図をみると簡単そうですが、木々や藪に隠れていたり、そこまでの道がない、立入禁止で近づけないなどの問題があります。特に2号と4号が難しいようです。


まず、「第1号水路橋」から4~500m程の距離にある「第2号水路橋」です。
細い道を通って開渠の導水路に下りて来て「第2号水路橋」のある方向(上流側)に向かいますが、金網のかかった開渠の水路が山に向かっているだけでそれらしい橋が見当たりません。しかし、よく見ると金網の両側の地面の色が違っている所があります。


ひょっとしてと思い、そばに近づくとやはり水道橋でした。しかし、水道橋への巡視路はありましたが、立ち入り禁止でした。


もっとよく見える場所はないかと国道20号にも戻ったりしましたが、結局、導水路反対側の擁壁とフェンスの間を進める所まで行き撮った写真がこれになります。


水路橋と反対方向(下流)を向いて撮った写真です。ここは「第2号開渠」のはずですが、重要文化財には指定されていないようです。


国道20号線に上がり、少し進むと何かが見えました。


重要文化財「第3号水路橋」です。ここはすぐ分かり、また見やすい所です。写真では水は画面奥から流れて来ていることになります。


少しアップして撮影したものです。重要文化財「第4号隧道」の出口になります。


横から見た状態ですが大分草が生えていますね。水は右から左へです。


少し拡大してみました。


再び、国道20号線に上がり、少し進むと右側に水路が見え始めました。「第3号開渠」が始まる所です(水は手前から奥へ)。しかし、これも重要文化財には指定されていないようです。左端に見えているのは国道20号線です。


少し先で国道20号線から導水路に下りて行く道には春の花々が咲いていました。


重要文化財「第4号水路橋」です。ここも見難い場所にありましたが、「第2号水路橋」の経験で近づけました。水の流れは右上から左下です。


下流に向かって見ていますが「第4号水路橋」に続く「第4号開渠」です。ここも重要文化財には指定されていないようです。しかし、中々感じの良い所です。桜も咲いています。



同じく「第4号開渠」です。導水路に沿って歩けます。


「第4号開渠」が終わり、大野調整池まで長い水路トンネル(5.5km)となります。


「第6号隧道」と読み取れます。どう区分されているか不明ですが、大野調整池までの水路トンネルは重要文化財「第6,7,8,9,10号及び11号隧道」となっています。


国道20号線に上がる際、振り返ったらきれいに桜が咲いていました。


水路トンネルになってしまったので、ここで導水路は暫くお休みとなり(画面左端)、ここから国道20号線を約4km進みます。(地理院地図)


大型トラックが通る国道20号線は集落が無くなると歩道がない所が多く歩きにくいですが、今回は所々で桜の花が癒してくれました。


11:30頃、鳥沢駅前を通過しました。


花の季節です。


梁川駅手前で国道20号線から離れ、大野調整池まで行く道を示す地図です。ちょっとした峠越えです。
左下から右上に向かっている青い破線が水路トンネルです。(地理院地図)


ここから左へ入り、国道20号線にお別れです。


少し中央本線に沿って行きます。電車が通りましたが、あわてて撮った写真で少し前ピンです。
12時過ぎですが、この辺が中間地点だと思います。


ここから右へトレイルに入ります。「大田➡」という小さな道標がありました。


20分もかからず、大田峠に着きました。


大田峠からダラダラ下って行くと集落が見えてきました。なかなか立派な家が多かったです。


まだ桜が良く咲いていました。


13:15頃、大田調整池に着きました。重要文化財「第11号隧道」の出口です。水が流れる音がしていましたが、直ぐ隣に流れ込む渓流の音でした。画面中央部で白く泡立っている所です。


11号トンネルという表示がありました。


竹林越しに見た水路トンネル(第11号隧道)出口です。


大野調整池周辺地図です。(地理院地図)
先程の「第11号隧道」の出口が左の緑色リング、重要文化財「大野調整池取水口制水門」が上部の緑色リング、重要文化財「大野調整池堰堤」が調整池右端の直線部、重要文化財「大野調整池余水路」が右下の緑色リングです。




重要文化財「大野調整池取水口制水門」に当たる部分です。制水門は調整池に面した部分だと思いますが良く分かりません。また、調整池なので取水口は水面下のはずで、重要文化財「第12,13,14,15,16,17号及び18号隧道」は分かりませんが、ここから発電所水槽まで5kmです。


「東京電力八ツ沢発電所 大野調整池」という看板が掲げられていました。



調整池という名前ですが大きな湖です。こんなものもありました。


重要文化財「大野調整池堰堤」です。ため池などと同様なアースダムで、調整池側は石垣にモルタルを塗り込めたような感じでした。


調整池への流入口(第11号隧道出口)方向を望遠レンズで撮りましたが、かなり遠いです。



堰堤上部です。


堰堤を先へ進み、振り返って見ました。まだ見頃の桜が一杯咲いていました。


重要文化財「大野調整池余水路」に向かいます。


中々良い道です。


画面左から進み右に回り手前に来て撮っていますが、ここが余水路があると思われた入江の奥です。撮影位置近くに「大野調整池余水路」という表示がありました。


ここが一番奥で古い石垣があり、直径30cm程度の開口(画面上から1/3位の位置)がありました。しかし、調整池のサイズからすると明らかに小さすぎます。著作権のためリンクの引用としますが、文化遺産オンライン「八ツ沢発電所施設 大野調整池余水路」の写真とも感じが違います。
そこで「大野調整池余水路」という表示があった辺りの下を探しましたが、笹などがあって良く分かりませんが無さそうです。巡視路の道は続いていたのですが、入江の奥は回ったし、その先は調整池周囲を巡る遊歩道だろうと思い、時刻は14時近くなのにまだ行程の1/3位が残っている状況なので若干心残りはありましたが、所在不明で導水路巡りを先に進むことにしました。

帰宅してからネットで大野調整池余水路を調べたところ、ここを訪ねた方がいました。
その方のブログに寄れば、余水路は今回行った少し先に存在していました。しかも意外な形でした。形状は湖岸に沿って堤防を築いて水路を形成しその奥の開口に流すというものでした。しかし、ブログによれば巡視路は途中で立入禁止となっていて開口部は見ることが出来なかったそうです。
私は「余水路は入江の奥にあり、山に開いた開口である」という先入観で、かすりもしませんでした。心に余裕がありもう少し先に行っていれば(多分数分の距離)確認はできたのですが。また、その方は対岸から望遠レンズで撮影していて開口部は分からないものの水路は認められました。実は私も対岸から望遠レンズで撮影していたのですが、入江の奥ばかりで撮影範囲外でしたし、もし写っていたとしても先入観でそれを余水路とは思わなかったでしょう。

さて、大田調整池から下ってきて、再び国道20号線を2.5km程歩きます。


上野原までの終盤の地図です。(地理院地図)
地図の左端付近を黄線で下がってきて、赤線の国道20号線を右端の八ツ沢発電所へ向かうことになります。水路トンネルは主として地図中央付近を通っています。


14時半頃、四方津駅前を通過しました。だんだん晴れて日差しが出てきました。


上野原周辺の地図です。(地理院地図)
中央左に八ツ沢発電所、右端に上野原駅があります。またやや右下に八ツ沢発電所の放流水を利用した松留発電所があります。
発電所水槽に向け、画面左端246.0の表示の左から国道を離れ上ります。


登り始めのポイントです。カラーコーン、土嚢などがあり通行止めかと思ったのですが、直ぐ右から上がれる道がありました。雨での土砂流出防止のための措置でしょうか?


上がってきました。上野原の市街が見えます。


15:15頃、重要文化財「水槽」及び同「水槽余水路」に着きましたが、フェンスが水槽から離れていて水が見えません。駒橋発電所の場合とかなり違います。また、水槽は幾つかに分かれているようです。


水槽の反対側に回っても状況は同じでした。ただ、この水槽は山の上にありますが本当の山頂は水槽裏の20m程度高い所で、そこに向かうトレイルがあったので山頂に登ると、うまい具合に水槽側が開けており、良く見えました。
水槽は3つに分かれ、右側の三角部分が隣と壁が低いので余水路と思われます。中央部分だけ水面が見えました。ここに手前側から重要文化財「第18号隧道」で導水されるようです。一方、左側の部分は良く分かりません。


水圧鉄管の上部です。


結構高いです。


水圧鉄管に沿って下りて来ると電車が通過しました。慌てて撮ったのでひどい写真ですが。


水圧鉄管の下部と発電所建屋です。水圧鉄管は現在、再塗装の最中のようです。


4条の水圧鉄管の全体です。西日が眩しいです。


下りて来ると、あちこちで桜が咲いていました。


松留発電所に来ました。八ツ沢発電所の16年後にできた、その放流水を利用した有効落差4.24mの小さな発電所(最大出力1,440kw)です。表示がなければ倉庫ですね。


取水側から見ています。画面手前が八ツ沢発電所の放水路トンネルの出口で、2つのアーチ状の開口部から取水されています。右側の流れは余水路です。なお、ここはフェンスの金網の穴が小さく、またフェンスの高さも3m程度あるため仕方なくその小さい穴から撮っています。


放水路側からの撮影です。長旅を終え使い切った水を解放しています。建物の下から流出していますが、開口は水面下のようです。中央左の2つの穴は昔の写真では水が出ていて余水路だと思いますが、今はその左の余水路から流しているようです。


16時半過ぎ、漸く上野原駅に着きました。長い旅が終了です!
殆ど休憩なしで進み、足が棒のようになりました。

大野調整池の余水路を見逃したのは残念でしたが、八ツ沢発電所の取水から放水までの全域に渡って、省略なしにほぼ導水路に沿った長いコースを辿れ、充実感はあります。

やはり国道20号線は歩くのは辛いですね。集落が無くなると歩道がない所が多く、路肩が片方しかない所もあり、そのそばを大型トラックが通ります。ただ、今回は時期的に所々で桜が咲いていて癒されました。

ここまで来たら、残りの桂川水系の発電所導水路巡りもやらざるを得ないと思います。後2回程度ですが今秋以降になります。

トレイルF 



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