温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

朝日町 りんご温泉

2015年07月14日 | 山形県
 
季節外れの記事が続いて恐縮です。半年前の冬の某日、山形県朝日町の中心部から程近い場所にある「りんご温泉」へ立ち寄ってまいりました。


 
町を南北に貫く最上川、そして朝日連峰を一望する見晴らしの良い丘の上に位置していますので、入館する前にまずはこの景色を眺めて深呼吸しました。
斜面を登った先にある離れには露天風呂もあるのですが、冬季は閉鎖されており、そのアプローチはすっかり雪に埋もれていたため、利用はもちろん、近寄ることすらできませんでした。従いまして今回は内湯だけの利用です。


 
入場して券売機で料金を支払います。受付の先にある物販コーナーでは、浴場名にもなっているご当地特産のリンゴの他、ワインや各種食品、そしてお婆ちゃん向けの衣類やバッグなどが販売されていました。入浴施設であると同時に、小さなアパレルショップを兼ねているところが田舎の温泉の特徴でもあります。なお画像には写っていませんが、2階へ上がると食堂です。



 
受付や物販コーナーから左へ曲がった先に浴室の暖簾が掛かっており、その手前には休憩スペースも設けられていました。
脱衣室はそこそこ広く、ロッカーやドライヤーも備え付けられており、使い勝手はまずまずです。後述するようにパワフルに温まるお湯ですから、湯上がり時のクールダウン対策が肝要であり、それゆえ室内には扇風機の他に冷風機も設置されていました。


 
出入口の戸に手をかけると同時に、浴室内から強いアブラ臭が香ってきました。「りんご温泉」といえばアブラ臭が強い温泉としてファンから知られていますが、私もこのアブラ臭に酔いたくて、今回こちらへ訪問したのでした。見晴らしの良い方向は全てガラス窓となっていますので、室内は大変明るくて、眺望も素晴らしく、白銀の朝日連峰を一望することができました。冬だというのに湯気篭もりが少ない点も、快適な浴室環境向上に一役買っています。
男湯の場合は、浴室に入って右手に洗い場が、左手に浴槽が配置されており、浴槽は5m×6mのものが1つだけというシンプルな構造ですが、(あくまで個人的な好みとして)下手に機能的な浴槽を設けて騒々しくさせるよりははるかに良く、奇を衒わずお湯の良さだけでお客さんと接しようとする姿勢に好感が持てます。浴槽にはリンゴジュースを彷彿とさせる、やや翠色掛かった山吹色濁りのお湯が満たされており、その透明度は50センチ前後。手前側の縁の左右両端から溢れ出ており、オーバーフローの流路や飛沫がかかるタイル等は黄土色に染まっていました。



洗い場にはシャワー付きカランがコの字に計10基取り付けられていました。なおカランから出てくるお湯は真湯です。


 
リンゴと名乗る温泉だけあり、湯船にはご当地特産のリンゴがたくさん浮かべられていました。「りんごには やさしくさわるだけに して下さい」という一文字以外全てひらがな表記の注意書きが、りんごのデリケートさを物語っているかのようです。思春期から精神年齢の成長が止まってしまう男という哀しい生き物は、たとえ大人であっても「これ食えんのかな」なんて本気で考えちゃったり、「中身はどうなってんだべな」と割ろうとする人が現れかねないので、子供に諭すように、ひらがなで丁寧に注意しているのかもしれません。
なおリンゴがたくさん浮いているからといって、特にお湯に何らかの変化があるようには感じ取れませんでした。新鮮なりんごを浮かべた時には良い香りがするのでしょうけど、何しろここのお湯は強いアブラ臭を放っていますから、優しいりんごの香りなんてあっという間に打ち消されちゃうんですよね。


 

館内表示によれば湯加減調整のために加水や加温が行われており、また掛け流しを併用しつつ循環も実施されているとのこと。実際に私の入浴中は、湯口から出てくるお湯の量や温度が短い時間内でこまめに且つ大幅に変化しており、適宜人為的に管理されていることがよくわかります。びっくりしたのが大量の黒い湯の華でして、槽内には常時、上画像のような溶き卵を黒くしたような大小の湯の華が浮遊・沈殿しているのですが、循環装置の運転などによって、湯口からの吐出量が増加すると、そこから出てくる湯の華も急激に増え、湯の華が大好きな私ですらも「こんなに出ちゃって大丈夫なのか」と不気味に覚えるほど、浴槽内は夥しい量の大きな黒い湯の華に塗(まみ)れてしまいました。野湯で湯の華まみれになることは往々にしてありますが、人為的に管理されている温泉でこんな状態と遭遇するのは珍しく、不気味さと興奮を同時に感じた私は、アドレナリンの分泌が著しくなり、その場で卒倒しそうになりました。こりゃすごい!

黄土色に濁るお湯は非常に塩辛く、苦味も伴っています。クレゾールとケロシンの匂いを足して2で割ったような強いアブラ臭、そして臭素臭、弱ヨード臭が漂い、アブラ臭はお風呂から上がった後も、体にしぶとく残ります。館内表示によれば塩素系薬剤を使用しているそうですが、そもそも温泉由来の匂いが強いため、カルキ臭なんてちっともわかりません。
入浴中は食塩泉らしいツルスベ浴感がはっきりと得られますが、強く火照るパワフルなお湯であるため長湯は禁物。そのかわり湯上がり後の保温効果は抜群であり、厳しい寒さの中で暮らす地元の方にとっては強い味方であるはず。私が訪問したのは平日の午前中でしたが、常時5~6人のお客さんがいらっしゃり、皆さん地元のお年寄りでしたので、湯っこで体の芯から温まって、寒さを乗り切ろうとなさっていたのでしょうね。

海から遠く離れた山間部なのに塩辛くてアブラ臭の強い温泉が湧くのですから、自然って不思議で面白いものです。この「りんご温泉」のお湯は、にごり方や塩辛さ・匂いなど、新潟県下越地方の中条や新発田界隈に点在する温泉と似ている気がします。最上川を下った先にある「テルメ柏陵」(大江町)や「ゆ~チェリー」(寒河江市)、そして最上地方鮭川村の羽根沢温泉などもアブラ臭の温泉として有名ですが、いずれの温泉もおそらくはグリーンタフが関係しているのでしょうね。
露天風呂はとても眺めが良いので、次回は冬季を避けて再訪したいと思っています。


第1号源泉
ナトリウム-塩化物強温泉 71.1℃ pH7.3 蒸発残留物17510mg/kg 溶存物質17090mg/kg
Na+:6207mg, Mg++:27.5mg, Ca++:135.1mg, Fe++:0.7mg,
Cl-:9892mg, Br-:46.5mg, I-:4.9mg, HCO3-:597.6mg,
H2SiO3:47.4mg, HBO2:68.7mg, CO2:200.5mg,
加水あり(源泉温度が高いため)
加温あり(入浴に適した温度に保つため)
循環あり(衛生管理のため・掛け流し併用)
塩素系薬剤使用(衛生管理のため)

山形県西村山郡朝日町宮宿1353-1
0237-67-7888
ホームページ

6:00~21:00(受付20:30まで)、露天風呂は8:00~19:00(冬季閉鎖)、年中無休
300円
ロッカー(100円リターン式・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5

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