温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

大野目温泉 旅館安部

2012年08月02日 | 山形県
 
山形市郊外にある多目的ホール「ビッグウィング」の近所に、良質な温泉を掛け流している旅館が存在しているとの情報を得て、日帰り入浴をお願いすべく現地までやってきました。ビッグウィング前の表通りにはその温泉施設の看板が立っているので、それに従って路地へと入ってゆき、地元では有名らしい有頂天ラーメンの前を通過します(今回は時間の都合上、ラーメンはいただいていません)。


 
そのラーメン屋さんと棟続きになっている「旅館安部」の玄関は、路地の裏手にひっそりと佇んでいました。かなり地味で渋い雰囲気なんですね。



庭先には源泉と思しき小屋があり、そこには「地下800M(花崗岩)より湧き出る源泉50℃」と書かれています。


 
渋い外観に反して玄関は意外と広く、ごめんくださいと声をかけるとラーメン屋さんの方からおばちゃんがやってきて対応してくれました。帳場から右手へ延びる廊下を歩いてゆくと、暖簾がかかっている浴室入口へとたどり着きました。


 
脱衣所はごくごく普通で使い勝手もまずまずですが、室内には様式こそ異なるものの内容は同一な温泉分析表が3種も所狭しと掲示されており、湯使いに関する表示とともに、いかに自分のところのお湯が素晴らしいかをアピールしているかのようでした。温泉協会のお湯に対する評価もすべて五つ星となっています。


 
そしてもっと気になるのが、脱衣室内のみならず帳場や廊下奥などに飾られている、写真やスポーツ新聞の切り抜きが収められている額の数々。その多くは大魔神佐々木に関するものなのですが、こちらのオーナーさんと佐々木氏とは何かのご縁があるのでしょうね。


 
浴室は男女別の内湯が一室ずつで露天風呂はありません。ゴツゴツした大きな岩が配置されている雄々しい岩風呂は、大きな窓に面しているため照明をつけなくても明るく開放的です。むき出しの配管が接続されている洗い場のカランは6基あり、お湯は源泉が出てきます。


 
石の樋の湯口には硫酸塩の白いトゲトゲ析出がびっしりと付着しており、そこから大量の源泉がドボドボと音を木霊させながら浴槽へと注がれ、湯船の奥の方にある踏み込みからふんだんにオーバーフローしてゆきます。



湯船のお湯はいくらか黄緑色っぽい黄土色に濁り、その濁り具合は底が霞んで見える程です。弱塩味+金気味+石膏&芒硝味、金気臭+石膏臭が感じられ、湯口やカランでは微かにタマゴっぽい味や匂いも確認できました。館内表示によれば、加温加水循環ろ過は行われておらず、衛生管理のため塩素系消毒剤は使用しているとのことですが、お湯から消毒剤らしい臭いは全く感じられなかったので、おそらく源泉に薬剤を投入しているのではなく、清掃時に塩素系薬剤を使っているという程度のことではないかと思われます。つまり完全掛け流しということですね。

先程庭先で見た小屋が源泉井であるならば、源泉井から浴室までは10~20メートル程度しか離れていないわけで、その上湧出量も豊富ですから、湯船のお湯の鮮度は極めて抜群です。にもかかわらず加水も加温もしないで丁度良い湯加減が保たれているのですから、実に貴重な源泉といえます。見た目から想像できるようにギッシギシとした浴感で、その他の知覚面でも硫酸塩泉らしい特徴が非常によく表れているトロトロのお湯で、この手のお湯が好きな方には堪らない一湯だろうと思われます。

この時はたまたま日帰り入浴開始時刻(午前11時)ぴったりに訪問したため、幸いなことに一番風呂を独占することができ、ただでさえ良質なお湯を更に良好なコンディションで堪能することができました。あぁ、幸せ…。


 
さてお風呂から上がって山形の市街へ戻る際、最寄りである「ビッグウィング前」バス停の真ん前に「パルシェ」というパン屋さんがあり、店先に大きく立てかけられていた「アイスクリームパン」という文字に惹かれて店内に入ってそのアイスクリームパンを買ってみました。



お店の説明によれば「世界一賞味期限が短いパン」らしいこのアイスクリームパンは、注文を受けるとその場でバンズにバニラ味のアイスクリームを挟んでくれるものでして、確かにアイスが溶けちゃう前までのわずかな時間が賞味期限となるわけですが、いざ食べてみるとフワフワのバンズに昔ながらの飾りっ気のないアイスクリームがマッチして、初めてなのに懐かしさを覚える素朴な美味しさが口の中に拡がりました。湯上りの火照った状態でいただくとより一層おいしいですよ。


ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉 47.6℃ pH7.7 動力揚湯 溶存物質2782mg/kg 成分総計2785mg/kg
Na+:530.6mg(57.75mval%), Ca++:312.9mg(39.06mval%),
Cl-:363.7mg(24.90mval%), SO4-:1419mg(71.69mval%),

JR奥羽本線or仙山線・羽前千歳駅より徒歩15~18分、山交バスで山形駅より県立中央病院行でビッグウィング前バス停下車徒歩2分、または山交ビル(山形駅至近)より天童・山寺方面行で大の目三丁目バス停下車徒歩10分
山形県山形市平久保34  地図
023-632-0605

日帰り入浴時間11:00~21:00
300円
貴重品用ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★

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4 コメント

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Unknown (zataro50)
2012-08-03 00:39:28
さすが全市町村に温泉がある山形ですね。市街地にこんなすばらしいお湯が沸いていることに感動しました。
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Unknown (K-I)
2012-08-03 23:45:12
山形市街に点在する温泉はどこもクオリティが高く、いろんな選択肢を有しながら気軽に掛け流しのお湯を楽しむことができるので、界隈にお住まいの方を心の底から羨望してしまいます。
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昔よくいってました。 (Unknown)
2012-12-19 21:43:07
昔山形の鈴川と高瀬にすんでいた頃によく母に連れられていっていました。
今もあのゴツゴツとした感じは変わっていないのですね。嬉しいです。
外に小さい川が流れているのですが、そこに捨てられた湯が流れていて、立ち込める匂いはまるで温泉街にいるような気分だったと記憶しています。現在は埼玉にすんでおり、天然温泉の銭湯はよくいっているのですが、ここの泉質にはとてもかなわないと思います。
小さい時から贅沢な思いをしていたんだな~。
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Unknown (K-I)
2012-12-20 01:03:55
ゴツゴツとした感じの岩風呂は以前からのものだったんですね。たしかに宿の傍には川が流れており、私が訪問した日は宿の前に架かる橋の架け替え工事をしていたため通行止でしたが、もしその橋の上から宿を眺めていたら、その日も温泉街にいるような雰囲気を味わえたのかもしれませんね。山形県の温泉のクオリティーはとても素晴らしく、こちらのような市内ですら良質なかけ流しの温泉に入れるのですから、そんな環境の元で育っただなんて、本当に羨ましい限りです。
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