温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

新安比温泉 静流閣 前編(客室・らくらくの湯)

2015年05月26日 | 岩手県
 
昨年(2014年)秋の某日に秋田方面から岩手方面へ移動していた際、岩手県屈指のしょっぱい温泉として有名な新安比温泉「静流閣」で一晩お世話になりました。強い食塩泉であることはもちろんのこと、東北道と八戸道が分岐する安比ジャンクション付近に立地しており、高速道路を走行しているとその大きな姿を目にするので、以前からどんな旅館なのか気になっていたんです。安比インターから至近であり、北東北3県のいずれにもアクセスしやすい場所にあるため、今回その利便性の高いロケーションに惹かれて宿泊予約致しました。まずはラグジュアリ感のあるロビーでチェックイン。


●客室
 
予め到着が夕食の時間帯に間に合わないことがわかっていたので、一人利用・朝食のみの割安プランを利用しました。今回通されたのは6畳の和室ですが、お部屋まで女性スタッフの方が丁寧に案内してくださり、いつも同等の価格帯でビジネスホテルに泊まっている私としては恐縮しきり。入室時には既に布団が敷かれており、いつでも横になれる状態になっていました。清掃が行き届いており、アメニティも一通り揃っています。壁がちょっと薄めなのか、夜中には隣の部屋からテレビの音がいくらか漏れてきたのですが、その点さえ目を瞑れば、綺麗で快適なお部屋でした。なおこの部屋の場合は、トイレや洗面台の備え付けが無いので、共用のものを利用します。
こちらの旅館は規模が大きく、私が利用した小さな部屋もあれば、ゆとりのある大きな部屋もあり、ニーズやグレードに応じて設備面などが異なってくるかと思いますので、お部屋に関して詳しく知りたい方は、是非お宿のホームページをご覧になってください。
料金的にはビジネスホテルと同等ですし(時期によって上下はあるかと思いますが)、美味しい朝食がいただけて、濃厚な温泉にも入れるんですから、同じ金額を支払うのでしたら、こちらのお宿の方がコストパフォーマンスに優れていますね。

こちらのお宿には2つの大浴場があり、両方共利用することができました。まずは私が利用した客室の近くに位置していた「らくらくの湯」から見てまいりましょう。


●「らくらくの湯」
 
この浴場名は瀬戸内寂聴師が命名したんだとか。浴場名も扁額も師の揮毫によるもの。どんなところが「らくらく」なのか、実際に利用して体感してみましょう。通路の突き当たりの左右に出入口があり、この日は右側に男湯の暖簾が掛かっていたのですが、男女は固定制なのでしょうか、はたまた入れ替え制?


 
和の趣きの脱衣室。奥に休憩スペースが用意されていました。


 
ゆとりのある脱衣室に反して、浴室はこぢんまり。室内には温泉由来の、石膏と金気を混ぜたような独特の匂いが漂っています。床はスノコ敷きで、出入口の前にはシュロ編みのマットが敷かれていました。スノコの隙間を覗いてみますと、その下の床表面にはトゲトゲで覆われているようですが、この正体については後ほど。なお洗い場は壁に沿ってL字形にシャワー付きカランが5基並んでいます。


 
 
浴槽はおおよそ4m×3mサイズ。青緑色した丸いタイル貼りなのですが、メンテナンスによってこびりつきを削ぎ落としているステップ部分を除き、槽内には赤茶色で鱗状の模様をなしている石灰華の温泉成分が分厚く付着しており、元々のタイルの様子がほとんどわからなくなっていました。先程、床下にもトゲトゲが…と述べましたが、もちろんその正体は石灰華なのでしょう。この石灰華のこびりつきにより、湯口にも小さな段々が発生していました。湯船のお湯はやや暗め緑色を帯びた灰色に弱く濁っていました。「銀の湯」とネーミングされているので、その名前を見たときには、兵庫県有馬温泉の「金の湯」に対する「銀の湯」を連想し、透明でサラッとしたお湯なのかと予測していたのですが、実際には上述のような濁り湯であり、若干グレーに見えることが「銀」の由来なのでしょうね。

次回記事で取り上げる「大浴場」のお湯は非常に塩辛いのですが、この「らくらくの湯」に引かれている源泉は、確かにしょっぱいものの、劇的に塩辛いわけではなく、どちらかと言えばホウ酸や石膏感、そして金気など、諸々の感覚が渾然一体となって伝わってくるような印象を受けます。湧出温度は38℃であり、一旦貯湯槽でストックされてから浴槽へと供給されているため、温度調整のためにお湯を加えているそうです。室内に篭っている独特の匂いは、この時間の経過によって塩化土類泉の鮮度が落ちかける際に発生するものかもしれませんし、あるいは臭素イオン17mgやヨウ素イオン8.8mgという数値も、そうした匂いの要因になっているのかもしれません。更にはメタホウ酸が非常に多く、6160mgも含まれているんですね。こんな数値は滅多にお目にかかれません。なにげに、炭酸ガス948mgというのもなかなかの数値。石灰華をもたらす要因なのでしょう。

湯中ではギッシギシに引っかかる浴感があり、湯上がりは強烈に火照って、浴衣が汗でビショビショになってしまいました。ものすごくパワフルなお湯です。とは言え、繰り返しになりますが、真湯が加わっているためか、大浴場の源泉よりはマイルドですし(相対的な感覚として)、事前に申し込めば貸切利用もできるそうですから、そういう意味でもたしかに「らくらく」に湯浴みできるのかもしれませんね。個人的にはこの「らくらくの湯」の方が、体への負担が少ない分、安らいで湯浴みでき、「らくらく」という表現を実感することができました。


新安比温泉(平成の湯)
ナトリウム-塩化物強塩泉 38.0℃ pH6.9 掘削自噴(間欠泉) 溶存物質32.101g/kg 成分総計33.049g/kg
Na+:8500mg(88.19mval%), Mg++:262mg(5.14mval%), Ca++:334mg(3.98mval%), Fe++&Fe+++:1.8mg,
Cl-:11700mg(80.79mval%), HS-:0.5mg未満, SO4--:215mg(1.10mval%), HCO3-:4490mg(18.02mval%), Br-:17mg, I-:8.8mg,
H2SiO3:109mg, HBO2:6160mg, CO2:948mg,
加湯あり(間欠泉で自噴しており、二酸化炭素を抜くため源泉をタンクに溜めてから浴槽に入れているので、温度調整のため10%くらい加湯をし、掛け流しにしている)
塩素系薬剤使用(衛生管理のため)


後編に続く…。


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