温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

霧積温泉 金湯館

2011年02月06日 | 群馬県
上州の霧積温泉・金湯館。学生時代に森村誠一の『人間の証明』を読んで以来、どんなところなのか関心があったのですが、現地へは狭隘な道をひたすら進み、更に登山道を歩かなくてはいけないと聞いて、実際の訪問は尻込みし続けていました。でも雪だるまのように膨らむ好奇心には勝てず、昨年夏に一念発起、天気の良い日を選んで行ってみることにしました。

横川から碓氷峠方面へ国道17号を走り、峠の手前で霧積への一本道へ右折。分岐してしばらくは走りやすい道が続きますが、残り5kmの地点から急に幅員が狭隘になり、離合不能な山道と変貌(ところどころに待避所はありますが)。たかが5kmですが、それでも山道だと長く感じてしまうものです。


道の終点手前には金湯館へ伸びる林道が分岐していますが、こちらは関係車以外進入禁止。

 
道のドン詰まりにある「きりつみ館」前の駐車場に車をとめ、そこから800mほど九十九折れの登山道を歩きます。

 
わずか800mですが登りの連続なので、運動不足の私は忽ち汗だくに。


山の上の方から黒いホースが登山道を横切って下へと伸びていますが、これは霧積温泉の源泉から「きりつみ館」へとお湯を導く引湯管でしょう。

 
坂を登りきると林道に合流。更に300m進みます。ここからは下り基調。鼻曲山への登山道もここから分岐。


途中で看板に従い、人専用の道に入って坂を下ります。


やがて谷に抱かれるように建つ一軒の家屋が見えてきました。金湯館ですね。

 
山奥に佇む昔ながらの一軒宿。ランプが吊るしてあって、とても風情があります。


玄関入って左側に進んだ廊下の突き当りが浴室。男女別の内湯のみ。露天はありません。浴室の手前には飲泉用の流し台も設置されています。


一見すると何ということのない普通の浴室には蛇口が4組設置されているだけ、至ってシンプルな構造です。でも目の前の浴槽に張られているお湯は尋常じゃなかった…。

 
湯口からふんだんに源泉が注がれ、贅沢に大量オーバーフローしていきます。人が入るとザバーっと豪快にあふれ出し、しばらくは落ち着きますが、やがてすぐに再びオーバーフローしはじめます。投入量が豊富なのでお湯は常に新鮮。

不感温度に近いぬる湯は、まるで優しく暖かい毛布に包まれているかのような、この上ない心地良さをもたらしてくれます。あまりの気持ちよさに、一度入ったらお湯の虜になって抜け出せなくなるかも。液体にはふさわしく無い表現ですが、ふわっと軽い感覚に包まれるのです。湯中では肌に気泡がびっしり付着。この気泡のおかげか、硫酸塩泉的な引っ掛かりのある浴感にツルツルスベスベ感が混在して、肌触りも良好です。ぬるいからといって湯冷めするようなことはなく、むしろみなさん長湯するでしょうから、十分に体の心まで温まるかと思います。

無色澄明、タマゴの匂いと明瞭な石膏の匂い、タマゴの味とほろ苦さに加えて石膏の味と甘味がしっかり感じられる典型的な石膏泉です。底のタイルの黒い目地が窓の外からの光を受け、まるでスワロフスキーのクリスタルの如く虹色に輝いて見えるのも、清らかな硫酸塩泉らしい光の屈折がなせる業。

余計なものが一切排除された山奥の静かな内湯、豊富な源泉投入と豪快なあふれ出し、そしてこの上ない極上の浴感をもたらしてくれる清らかなゆる湯、もう本当に夢心地でした。日本に数多ある石膏泉の中でも随一の質感ではないでしょうか。
あぁ、私が余計なことを書き綴れば綴るほど、却ってこのお湯の素晴らしさが伝わらなくなってしまいそうです…。

 
お湯だけで感動していた私に更なる嬉しい知らせが。
湯上りに、一介の日帰り入浴客である私に対し、宿の方がお菓子とお茶を出してくださり、そればかりでなく、帰る宿泊客を下へ送るついでに、私を下の駐車場まで車で送ってくださったのです。もう感謝感激雨霰。お湯ばかりでなく、宿の方のあたたかさにも触れ、心身ともにこの上なく夢心地を楽しむことが出来ました。



入之湯
カルシウム-硫酸塩泉 38.9℃ 

群馬県安中市松井田町坂本1928  地図
027-395-3851
ホームページ

日帰り入浴可能時間不明
500円
シャンプー類あり、貴重品は帳場預かり

私の好み:★★★

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2 コメント

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じわじわ (とんとん)
2014-12-16 00:03:58
ここのお湯は ぬるいのにじわじわと温まる 不思議なお湯ですね。

私は伊藤博文が泊まった(らしい)部屋、旧館に泊まりました。 明治時代築だからサイズもその頃のサイズで 面白かったです。

ずらっと並んだ著名人のサインにも驚きました。
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Unknown (K-I)
2014-12-16 14:29:31
>とんとんさん
微睡みを誘うあの柔らかく軽やかなお湯といい、静寂に包まれた佇まいといい、このお宿は本当に素晴らしいですね。明治の元勲をはじめ、昔から多くの人に愛されるのは納得できますし、そんな歴史ある空間に自分が居られると認識するだけでも感慨深いものがありますね。
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