温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

村山市 あらきそば

2014年06月02日 | 山形県
 
拙ブログでグルメ系を扱うのは久しぶりです。私はあまり食レポが得意ではないので、最近は遠慮していたのですが、偶には趣向を変えて苦手なものにもチャレンジしてみます。
先日(といっても数カ月前の冬ですが)のお昼時、どこかに美味しそうな店はないものかとお腹を空かせながら山形県村山市の「そば街道」を車で走っていたところ、たまたま趣きのある古民家風の店を通りかかったので、その店に入ってみることにしました。お店の名前は「あらきそば」。後日お店についてネットで調べてみると、検索結果がザックザクと出るわ出るわで、遠方からわざわざ足を運ぶ客がいるほど有名なお店なんだそうですが、訪問時はそんなことも露知らず、ただ「美味いそばが食えればいいや」程度の認識で駐車場に車を止めたのでした。


 
茅葺きの軒先を通って暖簾をくぐると、玄関の三和土の先には囲炉裏があり、その前で背中を丸めたお爺ちゃんがちょこんと座っているではありませんか。失礼ながら初めは蝋人形かと思ったのですが、まもなくして挨拶してくださたので、そこでようやく生体反応を確認。このお爺ちゃんは下足番をしており、後日調べたネット上の情報でも、みなさん特徴的なこのお爺ちゃんについて触れていらっしゃいました。


 
21世紀の現在でも、こんな立派な伝統的様式のお座敷が現役であるとは恐れいります。お店のHPによれば、江戸後期の建物なんだそうでして、お店は大正9年創業とのこと。室内に横溢する重厚感は、決して上っ面のものではなく、幾星霜を経てきた歴史の重みのなせる業なのですね。


 
鴨居に下がっている墨痕鮮やかな布書きの「定」は品書き(つまりメニュー)。といっても、こちらのメニューは「もり(「毛利」と表記する)」か毛利のセット、そして飲み物だけ。蕎麦本来の味を楽しんでもらうべく、品数を限定しているんだそうです。
床の間には掛け軸のほか、お客さんから寄せられたと思しき書や、ご店主の直筆らしき営業案内が掲示されていました。品の良さがそこはかと伝わってくるこの佇まいに早くもウットリ。


 
「うす毛利セット」を注文すると、オーダーを取ったお店のおばちゃんは、厨房へ戻ってすぐさま「ニシンの味噌煮」と「大根汁」を持ってきてくれました。セットを注文する客のために予め作り置きされているのでしょうけど、これが篦棒に美味いんです。ニシンは炭みたいに真っ黒なので、ビジュアル的に及び腰になってしまいますが、よく煮てあるので骨があることを忘れてしまうほど非常に柔らかく、力を入れずに箸の先で簡単にほぐすことができ、濃そうな見た目とは裏腹に程良い味付けで、日本酒が欲しくなる美味しさです。また大根の方も出汁がよく染みており、その美味さのため頬ばかりか眦まで勝手に垂れてしまい、力を入れて懸命に堪えようとしても無駄でした。



「うす毛利」の御成りです。横に長い秋田杉の板の上に、うどんを思わせるような太い蕎麦が、文字通り薄く広げられています。お蕎麦はお店で手打ちされており、殻ごと挽いているのか、黒っぽい色をしています。「蕎麦ってもんはツツーっと音を立てながら勢い良く手繰るもんだ」という哲学をお持ちの方にとって、この極太のお蕎麦は田舎臭くて野暮ったい代物に見えるかもしれませんが、ひとまずそんな固定概念は脇に措いておき、おつゆをつけずにそのままそばを口の中へ運んで、一度二度と奥歯で噛んでゆくと、口の中に蕎麦の香りがパッと広がり、忽ちその風味の虜になること請け合いです。味醂が効いたおつゆにつけても勿論美味しいのですが、私はお蕎麦の半分を、つゆをつけずダイレクトにいただいて、太い蕎麦だから出せる歯ごたえと風味を堪能させてもらいました。

お店の風情といい、箸休めやうす毛利といい、美味い蕎麦に巡り会えてついつい感動してしまい、その感情を吐露してすっきりすべく、こんな下手っぴな食レポを久しぶりに書いてしまったのでした。


あらきそばそば(蕎麦) / 村山市その他)
昼総合点★★★★ 4.5



コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 肘折温泉 優心の宿 観月 | トップ | 東根温泉 小関館 »

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Lunta)
2014-06-02 10:10:53
食レポが得意でないなんてとんでもない、このお蕎麦屋さんとてもおいしそうで、読んでいるだけでうっとり。
実はお蕎麦は更科系の細いものが好きですが、こちらの田舎そばなら食べてみたい。
7月に山形に行くので寄ってみようかしら。
Unknown (K-I)
2014-06-02 23:34:07
Luntaさん、こんばんは。
下手っぴなレポートですが、お読みくださりありがとうございます。私もお蕎麦は更科系が好みでして、田舎蕎麦はモノによりけりなんですが(田舎蕎麦よりそばがきの方が好きです)、こちらのお蕎麦は絶品でした。お店の風情や一緒に出される煮物の味も素晴らしく、非常に印象深いお店でした。こちらのみならず、山形県は人々の立ち居振る舞いやお店の趣きなど、東北の中でも品の良さが際立っているように感じられます(あくまで私の愚見ですが)。
私も食レポは苦手です(笑 (プンタ)
2014-06-03 14:17:14
山形のコシが強い蕎麦が食べたいです・・・。
↑初めて食べた時は、茹でるのが足りないと勘違いしてましたが(笑)ハマリますよね!

ここからが本題です(笑)
既にご存知かも知れませが、東北観光プランが復活されてました!
今週津軽に来ると聞いたので、報告した次第でございます。(^^)
ちなみに私。↑知っていたら秋田大仙じゃなく、もっと遠くに行ったのになー。(^^;
Unknown (K-I)
2014-06-03 23:45:59
プンタさん、こんばんは。
>私も食レポは苦手
何をおっしゃいますか(笑)。夜中にプンタさんのグルメ記事を拝見し、その都度お腹を鳴らせて空腹の辛さに悶絶しています

>コシが強い蕎麦
私もはじめは「何だこの野暮ったい蕎麦は」と受け入れがたかったのですが、一度口にするとあの食感が忘れられず、また粉の風味も強いので、病み付きになりますね。

>東北観光プランが復活
お知らせくださりありがとうございます。いつの間にか復活していましたね。今回は7月の、子供たちの夏休み前までのようですね。6月で休日割引の半額が終わっちゃうので、本音を言えば7月までではなく、観光需要が高い8月まで伸ばしてほしいものですが…。6月までなら、休日割引の半額の方が、利用の仕方によっては安かったりしますし…。予算の都合を理由に(実際には観光業界・族議員・地方の政治家と、財務省とのせめぎあいの末の妥協案なのでしょうけど)、ETC割引は廃止と復活を繰り返してますが、補正予算次第ではまた夏以降も…とちょっと期待しています。というか、そもそも論として基本の料金設定が高すぎるんですよね

ちなみに、今週末の津軽行きは、急遽中止になってしまいました。行きたい温泉をリストアップしていただけに、とても残念です。次回訪問時、もしお時間あれば、プンタさんおすすめの温泉をご案内くださいませませ

コメントを投稿