温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

バルケシル県 パムックチュ温泉の公衆浴場

2015年02月21日 | トルコ

バルケシル県の中心都市バルケシル(Balıkesir)周辺には、いくつかの温泉地が点在していますので、その中のひとつであるパムックチュ(Pamukçu)温泉へ立ち寄ってみることにしました。パムックチュ地区はバルケシル市街から幹線道路"D565"を16~7km南下したところにあり、ネットで当地の温泉施設を検索すると、まずはじめに表示されるのは、幹線道路の傍にある"Asya Termal Hotel"(上画像)という規模の大きなリゾートホテルです。どうやらここにも温泉が引かれているらしいのですが、「大きな施設はお湯があまり良くない」という温泉ファンならではの固定概念に支配されている私は、この手の施設にあまり関心が向きませんので、今回はパスしてその前を通り過ぎました。



幹線道路から路地に入って約1.5km東へ進んだ突き当たりが、今回の目的地であるパムックチュ温泉です。エントランスゲートの前には広い駐車場が設けられており、そのまわりにはアパートや戸建住宅が建ち並んでいたのですが、温泉地という土地柄から考えるに、もしかしたら民家ではなく別荘なのかもしれません。なおアーチの下に止まっているバンは、パムックチュ集落とこの温泉を結ぶ送迎ミニバスです。


 
以前の記事でもご紹介しましたように、今回のトルコ温泉めぐりでは、トルコの温泉に関する情報量で右に出るものがない「とるこのととと」というサイトの情報を参考にさせていただいたのですが、そのサイト内で取り上げられた時点でのパムックチュ温泉と現在の状況はかなり変化しているようであり、私が利用したいハマム自体は以前から変わりないのですが、「とるこのととと」の本文中で述べられている「かなりくたびれている」宿泊棟は姿を消し、その代わりに新しいホテルが2棟建てられており、ハマムを利用する際には、そのうちの1つである"Defne Otel"のフロントで湯銭を支払い、引き換えにレシート状の入浴券をもらうことになります。


 
入浴券をもらったら、ホテルのフロントを出て花々と緑が美しいガーデンを通り抜け、もうひとつの新しいホテルである"Sedef Otel"へと向かいます。このSedef Otel"の手前には、貫禄のある石積みのドーム屋根が構えているのですが、これこそお目当てであるパムックチュ温泉のハマムであります。ドーム建築の右側に専用の入口があるので、そちらから入館します。



上画像に写っているカウンターで入浴券を差し出すと、引き換えに貸タオルを手渡してくれました。どうやらこの浴場ではタオルの貸出をサービスで実施しているようです。カウンターの向かいにはロッカーが設置されているので、貴重品はそこへ預けました。カウンターの手前側が男湯、奥側が女湯です。


 

男湯入口へ足を踏み入れるとまず下足場があるので、そこで備え付けのサンダルに履き替え、細長い廊下を進んでゆきます。受付カウンターまでは建物から新しさが感じられましたが、この細長い通路から明らかに古臭くなり、以前の建物をそのまま流用していることが窺えます。通路の先の戸を開けると、更衣室へとつながりました。全体的に古臭くて薄暗く、ちょっと不安を覚えます。壁には扉付きの棚が並んでおり、鍵穴もあるのですが、肝心の鍵がないため施錠できません。水着に着替えるための個室は3つあり、柱の裏側にはドライヤーが備え付けられていました。


 
浴室は私がいままで訪れてきた他のハマムよりもこぢんまりしており、佇まいもかなり鄙びているのですが、それでも伝統的なハマムの建築様式を踏襲しており、腰部より上は白いペンキ塗りで、床や浴槽などには大理石がふんだんに用いられていました。また印象的な外観をもたらすドーム天井のてっぺんは、湯気抜きと明かり取りを兼ねて穴が開けられていました。


 

四角い浴槽の周りには幅1メートルにも満たないスペースがあり、手前側と右側にはL字形に洗い場が配置されています。お湯と水の水栓のペアが計9箇所設けられているのですが、なぜかその間隔は不均等。しかも浴槽とかなり近接しているため、洗い場でシャンプーするおじちゃんの泡が、湯船へ飛散していました。これじゃ、せっかくの透明なお湯が汚れやすくなっちゃいますね…。また、他のハマムでしたら水栓の下に置かれている水受けは大抵大理石で作られていますが、こちらのお風呂の場合はプラスチックのバケツであり、備え付けのスツールも安っぽくて、今にも脚が折れちゃいそうな頼りないものでした。桶もバケツが雑然と放置されていたり、備品類が安っぽかったりと、庶民的な銭湯としての趣きが強い浴場です。なお水栓から出てくるお湯は温泉であり、52.4℃という結構な高温でした。



私も入浴してみました。更衣室から見て左側の槽内には2段、右側には1段のステップが設けられており、そのステップ表面には小さな穴がいくつもあけられ、湯船のお湯の排出口となっていました。身長165cmの私で臍上まで浸かる深さがあり、その底部からお湯が供給されています。おそらく完全掛け流しの湯使いかと思われます。湯加減は体感で41℃前後と、ゆっくり浸かっていられそうなコンディションでした。

お湯は無色透明でほぼ無味無臭ですが、僅かに芒硝感が含まれていたように記憶しています。私の訪問時、湯船のお湯は若干靄がかかっているように白く微濁していたのですが、これは上述のようにお湯が汚れていたためかもしれません。「とるこのととと」ではパムックチュ温泉に関して「皮膚病に対する効能を謳っていて、なんとなく肌がつるつるになった気がした」と著者の実体験が述べられているのですが、その指摘の通り、私も湯船に浸かって自分の肌を擦ると、温泉由来のツルスベ感を得ることができました(と言っても、日本各地で見られる「美人の湯」ほど明瞭ではありませんが…)。一方、同じ源泉を配管しているはずの、洗い場の水栓から吐出されるお湯からは、なぜか金気が感じられました。もし源泉そのものに金気が含まれているならば、湯船のお湯や槽内などが金気の存在感を示す色で染まっていてもおかしくないので、この金気は蓋し配管内のサビか何かが影響しているものと想像されます。

平日の午後3時ころに訪問したのですが、常時4~5人の湯浴み客がおり、常連同士で背中を流したり、あるいは浴槽の縁でトドになったりと、思い思いのスタイルで温泉入浴を楽しんでいらっしゃいました。また更衣室で声をかけてくれたお爺さん曰く、温泉のおかげで体調が回復したんだと、お腹から何かを抉りだすようなジェスチャーをしながら教えてくれましたので、体を清めることはもちろん、湯治を目的として訪れる方もいらっしゃるのでしょう。地元の方々に愛されている、鄙びた庶民的な佇まいが興味深い温泉浴場でした。


GPS座標:N39.508726, E27.915012


10リラ(貸しタオル付)
ロッカー・ドライヤーあり、石鹸など販売あり

私の好み:★★



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