蔵王の中で私が最も好きな川原湯共同浴場。私のみならず、多くの温泉ファンもこの浴場を愛していることでしょう。拙ブログでは2014年に取り上げておりますが(その時の記事はこちら)、これまで私は何度となくこの川原湯のお世話になっており、今年(2017年)の冬に蔵王を訪れた時にも、気づけば夜の川原湯の前でひとり佇んでいました。それほどこのお風呂が大好きなのです。
私が訪れたのは夜7時頃。多くの旅館で夕餉が饗応されている時間帯ですが、この浴場には食事の束縛など気にしない信士たちが集っており、私を含めるとその数は10人に及ばんとしていました。狭い浴場に10人も入ると大混雑になって窮屈なのですが、そんな時こそ一期一会の客同士が譲り合い、不思議な秩序が保たれるもの。互いに声を掛け合い空気を読み合い、不快にならないよう配慮しあっていました。そうこうしているうちに、客同士で雑談に華が咲き、初めて会った者とは思えないほど次から次へと話題が弾んで、あっという間に一時間が経ち、やがて先客が一人二人と退館して、気づけば私独りだけが川原湯の湯船を独占していました。
そんなタイミングを見計らって、脱衣室側のみならず逆側からも浴室を記録しました。この浴場は2012年に改築されましたが、まだ5年しか経っていないためか、総木造の伝統的な湯屋建築の中に輝きを伴う目新しさが同居する不思議な感覚や、シンプルなのに居心地が良いという独特な空気感はまだ残っており、単にお湯が良いだけでなく、湯屋としての造りも人気に一役買っていることが、ここにいるとよくわかります。
すのこ状の浴槽も以前のまま。先客が多かったためか、お湯の動きが激しく、それゆえ槽内の湯の花(沈殿)は槽外へ流れ出ていたようです。またお湯の透明度も比較的高い状態が保たれていました。足元湧出のお湯は入浴には若干高い温度であるため、常時加水が行われており、そのおかげで適温が維持されていました。
さすがに改修から5年も経つと、以前と比べて湯船全体、特にオーバーフローと空気が接しやすい湯尻では硫黄をはじめとする温泉成分のこびりつきが厚くなっており、前回訪問時よりも明らかに浴槽の着色具合が強くなっていました。こうして歴史ある共同浴場としての貫禄を身に纏ってゆくのでしょう。今後いかに渋さを増してゆくか楽しみです。
お湯からは明礬臭と硫化水素臭が漂い、口に含んでみると強酸によって口腔がキュッと収斂します。程よい湯加減とはいえ、お湯が持つ力強さのために長湯することができず、短時間で湯船に出たり入ったりを繰り返しました。とはいえ、他のお客さんたちとのお喋りが楽しく、なんだかんだで1時間以上もこのお風呂で過ごしてしまったのは上述の通り。今回も力強くて濃厚な川原湯の魅力を、一期一会の会話とともに存分に味わうことができました。
酸性・含鉄・硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉(硫化水素型) 48.1℃ pH1.45 蒸発残留物3720mg/kg
H+:36.1mg, Na+:75.6mg, Mg++:77.6mg, Ca++:114.4mg, Al+++:298.4mg, Fe++:89.5mg,
F-:23.9mg, Cl-:783.5mg, Br-:4.1mg, I-:0.5mg, HSO4-:2661mg, SO4--:1975mg,
H2SiO3:146.7mg, CO2:387.0mg, H2S:18.4mg,
(昭和63年10月21日)
加水あり(源泉温度が高いため)
山形駅より山交バスの蔵王温泉行で終点(蔵王温泉バスターミナル)下車、徒歩4~5分(約350m)
山形県山形市蔵王温泉43-3 地図
6:00~22:00
200円
備品類なし
私の好み:★★★
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