温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

蔵王温泉 五感の湯 つるや

2017年09月02日 | 山形県
 
2017年冬の旅で蔵王温泉へ訪れることを決めたのは、訪問前日のこと。インバウンドのお客さんやスキー客で賑わう繁忙期の蔵王温泉で宿泊するには事前の予約が欠かせないため、私のように直前で宿泊先を決めようとすると、料金面や設備面などである程度妥協しなければなりません。そんな状況の中、某大手宿泊予約サイトでリーズナブルかつ私の要望に応える条件を提示していたのが、バスターミナルの目の前に位置する「つるや」でした。
表玄関には繁体字中文で記された歓迎看板が掛けられているように、訪問時の館内は台湾から訪れた観光客のみなさんで賑わっていました。国内消費がいまいち冴えない昨今、海外からのお客さんは日本経済の大いなる牽引役。特に地方を訪れてくれる外国人観光客は本当にありがたく、日本人の一人として私も心から感謝しています。なおこの日、玄関はお客さんのスキー用具で占められていたため、宿泊客は自分の靴をビニル袋に入れて客室まで持ち運んでくださいと案内されました。


●客室など
 
今回通された客室は7階の6畳和室。綺麗にお手入れされた室内にはテレビや冷蔵庫、洗面台、トイレなどひと通りの設備が整っているほか、Wifiも飛んでいるので、快適に一晩を過ごすことができました。また私が泊まった日はパワフルなファンコイルが暖房運転されており、まるで常夏のようなポッカポカの室温が維持されていました。



暖房がちょっと強かったので、窓を開けて換気しながら外の景色を眺めたところ、窓外には蔵王体育館へ上がってゆくS字カーブが見え、吹雪がおさまると上の台方面のゲレンデも臨むことができました。
なおこの時の宿泊は素泊まりでしたので、お食事に関するレポートはありません。


●浴場
 
さて、肝心のお風呂へと参りましょう。
館内には趣きが異なる貸切風呂が4室あり、利用に際しては別途料金が必要なのですが、今回は利用しておりませんので、ここでご紹介することはできません。あしからず。



エレベーターで大浴場がある4階へ移動します。案内表示に従ってクランク状に廊下を進んでゆくと・・・


 
やがて大浴場の入口へとたどり着くことができました。二つの浴室は手前側が「鶴の湯」、奥が「亀の湯」とそれぞれ縁起の良いネーミングなのですが、私の訪問時、「鶴の湯」は女湯、「亀の湯」は男湯として固定されており、暖簾替えはありませんでした。お宿の公式サイトによれば男女が逆になっているので、日によって設定が異なるのかもしれません。両浴場入口の間には冷水のサービスが用意されており、私も風呂上がりに水分補給させていただきました。


 
清潔感に満ち、アメニティーも充実している脱衣室を抜けて浴室へ。
ダークカラーの材木を多用した落ち着きのあるモダン和風の浴室には、湯気とともに硫黄の湯の香が立ち込めており、浴槽に張られた白濁の硫黄泉は、窓越しの陽光を受けてターコイズグリーンを帯びながら神秘的な美しさ放っています。それらが生み出す雰囲気に飲み込まれ、思わず瞑目して静かにお湯と対峙したくなりました。
なお洗い場にはシャワー付きカランが6基一列に並んでいます。


 
浴槽の縁は木材ですが浴槽内はタイル張り。手前側は直線(約6m)ですが、奥側は窓の形状に合わせて鉤状にカクカクと曲がっています。しかしその分ガラス窓の表面積が増えるため採光に優れ、落ち着きを保ちつつ、伸び伸びとするに相応しい十分な明るさも兼ね備えていました。


 
格子細工が施された湯口は賽銭箱を連想させるような形状をしており、お湯が触れる箇所は真っ白に染まっていました。お湯を口に含むと、口腔を収斂させるミョウバン的な収斂酸味がストレートに効いてくるほか、淡い塩味、そして柑橘系のフルーティーな味覚も明瞭に感じられます。蔵王の他源泉より柑橘的果実感がはっきり現れているように思います。
こちらで使われているお湯は「つるやホテル源泉」という貴重な自家源泉。上湯共同浴場の裏手で自然湧出している源泉を約300メートルほど引湯し、館内の各浴場に分けているんだそうです。なお他の源泉とのミックスは行われておらず、自家源泉の単独使用なんだそうです。なんとも贅沢なお風呂ではありませんか。館内表示によれば加水加温循環消毒のない完全掛け流しとのこと。湧出温度は50℃以上ありますから、投入量によって湯加減を調整しているのでしょう。内湯の湯船では体感で42℃前後という絶妙な湯加減が維持されており、肩までお湯に浸かるとあまりの気持ち良さに思わず「ふぅ」と息が漏れてしまいました。


 
日中のお風呂も良いのですが、夜のお風呂もまた実にいい雰囲気。照明を抑えめにしているので、大人の空気感が横溢しています。また湯口にスポットライトを当てることによって、温泉が一層神々しく見えます。普段寝つきが悪い方も、ここでゆっくり湯に浸かると、けだしスムーズに入眠することができるでしょう。


 
内湯のドアを開けてステップを4段下ると露天風呂です。猫の額ほどのこぢんまりとした空間に無理やり石風呂を設けたような佇まいであり、周囲を塀で囲まれているため圧迫感は否めませんが、塀の上からはスキー場などを眺めることができるので、そうした周囲の景色を借景として捉えれば、風情ある露天風呂として楽しめるかと思います。事実この日は雪見風呂を堪能することができました。


 
露天の石風呂はおおよそ5〜6人サイズ。内湯と同様に完全放流式で、露天専用の湯口から自家源泉が注がれているものの、外気の影響を受けるため、内湯よりも若干ぬるく長湯しやすい湯加減になっていました。温度が下がっているとはいえ、白濁の度合いが強くなっているわけでもなく、沈殿が多いわけでもなく、まずまずの鮮度感が保たれていました。内湯・露天風呂ともに入浴すると酸性のお湯らしいヌルヌル感を伴うツルスベ浴感が肌を滑りますが、湯上がりには少々のベタつきが残るので、気になる方はお風呂から出る際に軽くシャワーを浴びた方が良いかもしれません。
綺麗で居心地の良い客室はもちろん、雰囲気の良いお風呂で完全掛け流しの自家源泉に入ることができる、実に素敵なお宿でした。


つるやホテル源泉
酸性・含鉄・硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉 54.0℃ pH2.0 蒸発残留物2932mg/kg 成分総計3189mg/kg
H+:17.9mg, Na+:55.3mg, Mg++:61.7mg, Ca++:83.4mg, Al+++:126.mg, Fe++:12.3mg,
F-:16.0mg, Cl-:378.5mg, Br-:1.3mg, I-:1.9mg, HSO4-:783.0mg, SO4--:1307mg,
H2SiO3:271.1mg, H2SO4:36.2mg, CO2:295.1mg, H2S:20.5mg,
(平成22年12月8日)
加水加温循環消毒なし

山形駅より山交バスの蔵王温泉行で終点下車すぐ
山形県山形市蔵王温泉710  地図
023-694-9112
ホームページ

日帰り入浴については不明
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5


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