温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

山田温泉 ホテル福原別館 2014年夏

2015年06月11日 | 北海道
※今回の記事は2014年8月に私が訪問した時点での内容を取り上げています。

 
2014年夏の某日。然別湖の奥から糠平湖へと抜ける山道の途中にある、一軒宿の山田温泉「ホテル福原別館」で立ち寄り入浴しました。温泉ファンの間では既に知られていることですが、こちらの施設はここ数年宿泊営業を取りやめて、入浴のみの営業となっており、しかも営業日が年60日弱しかないという、私のような関東に住む人間にとっては利用のハードルが高い温泉であります。もちろん私は何気なく立ち寄ったわけではなく、きちんと営業日を確認して訪問したのでした。


 
玄関に「年56日だけ入れる」と張り出されていますね。2014年の営業期間は6月21日~9月28日の土日祝のみで、7月24日から8月24日の観光シーズン最盛期に限っては毎日営業されていました。然別湖畔の大きな温泉旅館「ホテル福原」によって運営されています。


 
玄関のドアを開けると、正面で鹿の剥製がお出迎え。その手前左側にある帳場で料金を直接支払います。剥製の隣にはお水のサービスが用意されていましたので、湯上がりに飲ませていただきました。


 

旅館営業をしていた頃に食堂として使われていたホールは、現在ラウンジのような空間となっており、一角には周辺エリアの観光や自然に関する解説、そして北海道の観光に関する書籍や資料が並べられていたのですが、中でも目を惹いたのは、ラミネート加工された北海道新聞の切り抜きです。日付は2006年7月19日で、見出しには「山田温泉あす営業再開」とあります。この記事には、同年3月に大雪の重みで浴室の一部が壊れたため、建物の修繕を行ったところ、毎年6月の営業開始に間に合わず、7月20日に営業再開へこぎつけたという内容が記されていました。営業再開後は宿泊営業を行っていたそうですが、2010年頃から入浴のみの営業へ縮小し、更には営業日も土日祝のみに限定してしまったようです。


 
かつて客室として使われていた部屋の一部は、休憩室として解放されていました。


 
宿の建物は大変年季が入っているのですが、上述のように大雪で潰れてしまった浴室部分はすっかりリニューアルされており、浴室棟へと渡る廊下から装いが急に変化して、ほとんど新築同然の様相です。浴室は男女別の内湯が一室ずつ。


 
とっても明るく綺麗な脱衣室には大変驚きました。3台並ぶ洗面台もピッカピカ。この部分だけ建て直されたことは予めわかっていましたが、それにしてもこの脱衣室は、いかにも山奥の古い宿らしい外観から受ける印象を、根底から覆してくれます。年56日のみの営業だなんて、本当にもったいない。


 
浴室に関しては、雪で潰された上屋は建て直されているのですが、床や浴槽などは以前からのものがそのまま使われ続けており、新しい建材の下で、昭和30~40年代の面影を漂わせるタイルや鉄平石が燻し銀の存在感を放っていました。室内には大小の浴槽が1つずつ据えられ、壁に沿って洗い場が並んでいます。窓サッシは新しいもので、網戸もしっかりしていましたから、室内では窓を開けて、清らかなそよ風を感じながら入浴させていただきました。


 
壁に沿ってL字型に並ぶ7基の単水栓からは、温泉のお湯が吐出されました。ボディーソープなども備え付けもあります。



小さな副浴槽は造りが浅く、お湯もチョロチョロとしか注がれていなかったので、かなりぬるめでした。


 
大きなU字型の主浴槽は目測で幅3m×奥行5m。槽内には古い化粧石タイルが貼られているのですが、ステップ部分は温泉に含まれる金気の影響なのか、薄っすらと赤茶色に染まっていました。床から立ち上がっているパイプより源泉のお湯がドバドバ大量投入され、切り欠けから惜しげも無く溢れ出ています。混じりっけの無い完全掛け流しのお湯に間違いありません。

お湯はほぼ無色透明なのですが、上述したステップ部分に見られるように、若干の金気が含まれており、吐出口のお湯を口に含んでみますと、明瞭な金気の風味が口腔内に広がりました。これと同時に重曹味、そしてほんの僅かですが、ミントのようなスーッとする清涼味も感じられました。また吐出口から出た瞬間だけ、タマゴの匂いに似て非なる風味も得られたのですが、これって硫化水素ではなく金気の一種だったのかなぁ。
湯船に肩まで浸かると、スルスルとした優しく滑らかな感覚の中に、金気っぽい弱い引っ掛かりが混在しながら肌へ伝わってきます。体への当たりがマイルドで、湯加減は41℃前後という、微睡みを誘う長湯仕様のお湯です。
鮮度が良く、滑らかな浴感で、体への当たりも優しいという、極上のお湯であります。

さて今年(2015年)も6月となりましたので、いよいよ山田温泉の営業シーズンを迎えるのかと期待しながら、運営母体である「ホテル福原」のホームページを確認したところ、2015年5月13日付で「『山田温泉ホテル福原』休館のお知らせ」というタイトルとともに、「本年におきましては母屋の老朽化も進み、直ぐに安全性を損なうものではありませんが、母屋の耐久性において万が一の事を配慮し、今シーズンの営業を中止し休館する運びとなりました。」と非常に残念なお知らせが表示されていました。つまり2015年度は入浴できないわけです。せっかく綺麗に作り直した浴場の上屋がもったいないのですが、母屋の方は確かに草臥れていますので、こればかりは致し方ありません。またあのクリアでやさしいお湯に浸かりたい…。来年以降の復帰することを期待しております。


単純温泉 44.5℃ pH7.0 118L/min(自噴) 溶存物質0.504g/kg 成分総計0.529g/kg
Na+:76.4mg(70.04mval%), Mg++:7.1mg(12.24mval%), Ca++:12.1mg(12.66mval%), Fe++:0.4mg,
Cl-:38.5mg(21.98mval%), HCO3-:234.0mg(77.22mval%),
H2SiO3:113.9g, CO2:24.6mg,

北海道河東郡鹿追町  地図
0156-67-2301(ホテル福原)
運営母体「ホテル福原」ホームページ

※2015年度は営業しません
10:00~18:00
550円
ボディーソープあり

私の好み:★★★








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4 コメント

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休館ですか・・・・ (いねぞ)
2015-06-11 15:32:32
K-Iさん
ご無沙汰しております。昨年の8月末であれば、私も帰省のついでに、菅野温泉~山田温泉~幌加温泉のはしごをしておりましたので、もしかしたらすれ違っていたかも知れませんネ。
今年は休館ですか。今年の夏も帰省したら寄るつもりでいたのでとても残念です…
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Unknown (K-I)
2015-06-12 23:15:12
いねぞさん、こんばんは。お久しぶりです。お元気ですか。
>8月末
そうだったんですか!? 私は幌加までは行きませんでしたが、ルート的にはほとんど同じですね。間違いなく、どこかですれ違っていたかと思います♪
山田温泉の今年度の休業は残念です。昨年入っておいて良かったです…。ファン好みの温泉が毎年どんどん休業に追い込まれているので、本当に残念です。
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奥美利河も・・・ (いねぞ)
2015-06-16 13:10:01
K-Iさん、こんにちは
すれ違ってますね。そうだといいな(笑)

岩間温泉も今年はまだゲートが開いていない様ですし、奥美利河も今年度は休業だそうです。いい温泉が休業になるのは辛いですね。

こうなると何としても入っておかないとと思ってしまうのが病気だと嫁には言われています。
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Unknown (K-I)
2015-06-18 01:11:19
>いねぞさん
>奥美利河も今年度は休業
ええっ、そうなんですか…。それは残念です。来年度以降の復活を祈るばかりです。あの池のような大きな露天風呂と清らかなお湯に、また入りたいものです。
>岩間温泉
実は平日に休みが取れたら今月下旬に行こうかと計画を練っていたのですが、結局希望叶わず、今月はどこにも行けず仕舞い。でもゲートが開いていないのなら、結果オーライだったのかもしれません(汗)。

>何としても入っておかないと
同感です。名湯が次々に閉鎖へ追い込まれていますから、多少無理をしてでも入っておかないと、後悔が募るばかりですよね。本当にツライです…。
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