脳研究の池谷裕二さんのネット記事を以下に掲載させていただきます
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このかつてない生活様式の変化を、私たちの脳はどう受け止めているのだろう?
揺らぐ状況を生きる時代だからこそ、自分自身の思考の在り方をちょっと見直してみたい。
ポジティブな心をキープする思考の整え方を、脳研究で知られる池谷裕二さんに聞いた。
「ニューノーマルというキーワードが生まれて、ライフスタイルや仕事の在り方は
新しくなっていくけれど、さて肝心の私たちはどうでしょう?
キャッチフレーズを付けたり、システムを変えたりするのは
すぐに遂行できることだけれど、本当の問題は人間自身が変わるかどうか。
実際のところは、人ってそう簡単には変化に適応できないものなんです。
なぜなら、人間の脳にとって変化というものは、
好ましいことでもそうでなくてもストレス。
そもそも変化するのが苦手なんです。まずは、この点を認識してみてはいかがでしょう」
「変化の中では定かでない情報がたくさん出回ります。
そうすると、何が正しいのかと情報収集しながら考えるわけですが、
収集する量が少ないと、その少ない中で多数を占める情報が
真実に見えてしまうという落とし穴が。これを認知バイアスといいます。
ではこの認知バイアスから逃れるためにはどうするか。
それは自分が興味を持った考えや賛成できる意見と同じだけ、
反対意見も見てみる。触れる情報の総量を増やし、
『こういうふうに考える人もいるんだ……』と捉えていくことで考えの裾野が広がります。
同時に、自分の信念も確固たるものになるでしょう。
ただ、そうはいっても正解に行き着くとは限らないのですが」
「偏見と聞くと、きっと皆さんはネガティブなイメージを持たれることでしょう。
日頃から『なるべく偏見を持たないように』と心がけている人も多いのでは?
でも、脳の働きから見てみると、自分の考えと偏見はイコールで結ばれるものなんです。
思考するとは、ある情報に重きを置くこと。選ぶということ。
そして、その偏見を重ねていく先に、自分の考え方や個性と呼ばれるものが
表れてくるんです」
「ここで、多様性という言葉に着目してみましょう。多様性を意味する言葉が、
英語には2つあります。それはVariety(バラエティ)とDiversity(ダイバーシティ)。
Variteryは『たくさんあるけれどバラバラに存在する』という状態。
対してDiversityは『たくさんの要素があり、かつそれぞれが相互に関連している』
という状態。
広い観点から考えることができるのは、Diversityの状態にある思考です。
ここで一本の木を思い描いてみてください。幹からいくつもの枝が伸び、
その先には情報というたくさんの葉がついている。
情報が枝というネットワークでつながっているから、ある情報に
別の情報を結び付けることもできるし、
また『自分はそもそもどういう考えを持っていたのか』と根まで戻ることもできる。
そうやって上下左右、自由自在に移動しながら考えていけることが理想的です」
・・・中間略・・・
「新型コロナウイルスという問題は、世界の全員が当事者という
珍しい事態を生み出しています。ウイルスには誰もが感染しますから、
『自分に関係ない』とは言えない。
誰もがこの問題につい考えていかなくてはいけないんですね。
これからニューノーマルの名のもとにシステムが変化していく中では、
新たな不平等や不公平も出てくるでしょう。
それは、社会にはいろいろな人が存在しているから。
生活スタイルはもちろん、適応力やストレスへの耐性だって、人それぞれ。
周りの人は大丈夫なことでも、自分はくじけそうになるかもしれない。
そういうときには、声を上げなければいけない。
困っている人がいることをわかってもらわなければならない。これが大事です。
社会というものは、こうしたことも含めて成り立っているということを、
こんなときだからこそ考えたいものです。当事者じゃなくてもみんなで一緒に。
社会の一員として考え、さまざまな形があること、
さまざまな形があっていいということへの理解が深まるようになるといいですね」
全体記事:BAZAAR 2020 9/20(日)20:23配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/40d08c54f44b480866e4bf3a63351339e854d636?