The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

グラナダ版 『赤髪連盟』 : (1)

2016-10-09 |  ∟グラナダ版SH
グラナダ版『赤髪連盟』 : The Adventure of Sherlock Holmes :  ”The Red Headed League”: (1)


(1985年) - S2E5

この作品は正典中人気上位に入って居ますし、グラナダ版としても秀逸な作品になって居ると
思います。
正典の内容は珍しく(汗)良く覚えていたのに 久し振りにグラナダ版を見返してみたら随分
忘れているシーンがありました。 強く印象に残っていて大好きな作品なのにダメですね。

翻訳本により、「赤毛連盟」、「赤髪組合」、「赤髪連盟」、「赤毛クラブ」等色々ありますが、
今回はTV放送時のタイトル『赤髪連盟』とさせて頂きます。
この作品も初期(S2)の作品であるので 相変わらずのフレーズですが ジェレミーが溌剌として
麗しいのです。
完成度の高さも素晴らしいと感じさせられる作品です。

正典の『赤髪連盟』にない設定として、今回のグラナダ版ではモリアーティー教授を登場させ、
次回作の『最後の事件』への関連、繋がりを追加していますが 無理な設定ではなくむしろ
『最後の事件』でのモリアーティとの確執の突端として描かれているのが自然に描かれている
様に思われました。


さて、あらすじですが、



冒頭は正典とは異なり後の事件を示唆するシーンが挿入されています。


馬車で銀行に搬入されるフランス銀行からの金貨、その後を追って見届ける怪しい男。
そしてその知らせがもたらされた男は手元だけが映し出されます。

そこにはさり気なくウィルソン氏の質屋と銀行の位置が暗示されるシーンが描かれています。

ここから正典は始まります。
質屋のウェイルソン氏が221Bのホームズの元に相談に訪れています。



その時ワトソンが部屋に入って来ますが、依頼人が居る事をみて慌てて部屋を出ようとします。
それを見たホームズは ”No, no” と言いながらソファーと飛び越えてワトソンを呼び戻します。
 

↑ ブレていますが、飛び越していると御想像下さい
(ソファーと飛び越えるんですよ! もう、冒頭から素晴らしいシーンを見せて頂き感動で
御座います。)

「取り込み中ではなかったのか?」と訊ねるワトソンに、「だからこそ同席を。 これが犯罪事件
かどうかは未だ不明だし、ウィルソン氏の事も良く知らないが。ただ分かっているのは彼が肉体
労働をしていた事、中国にいた事、最近書き物をした事だ」。と何時もの様にウィルソン氏を観察
した推理を述べます。
当然のことながらウィルソン氏は驚きますわ。
何故分かったのか尋ねると、右手の方が左より大きい。書き物に関しては、右の袖口が光っている。
中国に関しては、右手首の魚の入れ墨だ。 魚のウロコに薄紅を入れるのは中国独特だ。しかも時計
の鎖に中国の硬貨が付いている。 (刺青に関する論文も寄稿した事があると言っています)
チョットく得意気に説明しますと、「聞いてみれば何でもない事なんですな」と一言ウィルソン氏。
それを聞いたホームズはチラと嫌そうな顔(もっと感心しろよ!ってね)をして、、「率直に話し
すぎるとせっかくの名声が落ちる。 オムネ・イグノタム・プロ・マグニフィコ ”Omne ignotum
pro magnifico”
(←ラテン語です。 字幕もカタカナ表示のままになっています。)
すかさずワトソンが「何事も説明すれば陳腐になる」と訳します。 しかしホームズは「それは
不正確な翻訳だ」と一言。

そして、ウィルソン氏が持ってきた新聞広告をワトソンに読むように渡します。

↑ 両手をこすり合わせながら新聞を読むワトソンの反応を覗うホームズは無邪気な様子にもみえます。

広告には『アメリカの故ホプキンス氏の意志により結成された連盟に欠員が一名生じた。楽な仕事で
給料は週4ポンド。赤毛の男性で心身健全である事。21歳より上なら資格あり。 応募は月曜日11時
連盟事務所のロス氏迄』とあります。
(※ 当時の1ポンドは現在の貨幣価値だと約24,000円位、つまり週給4ポンド=約96,000円って こんな
上手過ぎる話はないでしょうに・・・)

「何だこれは?」と不審な顔のワトソンに、ホームズ思わず吹き出し「いささか変わっている」と
言いながら新聞の日付を確認する様に言いますと2か月前の4月27日の「イブニング・スタンダード」。
そこで、ホームズがウィルソン氏に「かいつまんで話して下さい」と経緯を尋ねました。


↑ この時のホームズは珍しい座り方をしているのですが、ちゃんと正典パジェット版挿絵を踏襲してるんです。


それによれば、自分はサックス・コバーグ街で質屋を営んでいる。以前は店員が2名いたが今はヴィンセント・
スポールディングという若者だけが働いている。この若者は優秀で商売を覚えたいとの事で給料は相場の
半分しか払っていないと言います。
ホームズは「貴方は運がいい。 今どき人を安く雇えるとは。 あの広告に負けぬ珍しい話だ」と少し
皮肉な調子で応じます。
ただ、彼にも欠点があるとウィルソン氏。 写真マニアで暇さえあれば写真を撮りまくり地下室に籠って
現像している。 しかし良く働くし悪癖も無いのだと言います。

そのスポールディングが新聞広告を見つけウィルソン氏が条件にぴったりだと応募を薦め月曜日に一緒に
事務所に向かったのだのでした。



当の事務所に着くと そこにはおびただしい数の赤毛の応募者で溢れかえっていたのですが、何故か
ウィルソン氏は優先的に面接を受け 選考者であるダンカン・ロス氏は一目見るなりウィルソン氏が
申し分ない赤毛の持ち主だと認め欠員補充に採用されることになりました。

ロス氏が言うには、ホプキンズ氏は赤毛で若くしてアメリカに渡り大富豪になったが死後故郷の赤毛
男性を援助する様にと遺言を残したのだとの事です。
ただ、ウィルソン氏が妻も子供もいないと言うと、この基金は赤毛男性の子孫繁栄が目的なので・・・と
一瞬躊躇する様子をみせますが、ガッカリするウィルソン氏の様子を見て、普通であれば断るのだが
見事な赤毛に免じて譲歩しましょうと 結局採用が決まるのです。
(なんか妙に芝居がかって勿体ぶっている様子なんですが・・・)





・・・・・to be continued です





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