写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

12月の異称

2017年12月01日 | 季節・自然・植物

 さあ、泣いても笑っても今日から12月。一年の最後の月となった。ついこの間、新しい年を迎え、「さて、今年はどんなことをして1年間を過ごそうか」と、毎朝起きがけのベッドの中で考えていた。これという案を思い浮かべることができないまま時は確実に過ぎていき、気がつけばもう12月となっているというのが実感である。

 12月のことを「師走」と呼ぶことはよく知られている。この月になると、家々で師(僧)を迎えて読経などの仏事を行うため、師が東西に忙しく走り回るため「師馳(しは)せ月」といったのを誤ったものだといわれている。この言葉のもつ語感が、年の暮れの人事往来の慌ただしさと一致するため、12月の異称として親しまれ、習慣的に用いられている。

 ところが、12月といわずどの月でも大変多くの異称があることを知った。12月でいえば、この師走が一番なじみが深いが、その他、春待月(はるまちつき)、限月(ぎりのつき)、暮来月(くれこづき)、極月(ごくげつ)、晩冬(ばんとう)、氷月(ひょうげつ)、暮歳(ぼさい)など、何となく感じとして12月を表しているようなもののほか、黄冬(おうとう)、弟月(おとづき)、親子月(おやこづき)、建丑月(けんちゅうげつ))、朧月(ろうげつ)など、意味がよく分からないものまで沢山ある。

 また12月の季語は、月の異称とは比べ物にならないくらい沢山ある。短日、顔見世、冬の空、初雪、初氷、冬木立、枯木、霜枯、冬ざれ、枯草、枯芭蕉、大根焚、風呂吹、雑炊、葱、冬菜、白菜、寄鍋、鍋焼、 おでん、粕汁、湯豆腐、蕎麦湯、葛湯、熱燗、玉子酒、生姜酒、神楽、山眠る、冬野、枯野、牡蠣、牡蠣船、牡蠣飯、障子、炭、消炭、囲炉裏、暖房、ストーヴ、炬燵、炭焼、炭俵、火鉢、湯ざめ、風邪、咳、ちゃんちゃんこ、重ね着、著ぶくれ、頭巾、綿帽子、霜柱、北風、空風、隙間風、柚湯、柚湯、大晦日などなど。

 いずれの季語を見ても、古き良き昭和の時代、隙間風の入って来る寒い家の中で、たった一つの火鉢を囲んで背を丸めて暖を取っていた頃を思い出させるような言葉が並んでいる。今となっては、ただ懐かしい響きを持つものが多い。

 「宝くじ」は季語にあるが、先日発売された「年末ジャンボ宝くじ」は、季語にはなっていない。「風邪」も季語にあるが「インフルエンザ」も字数が多すぎて入っていない。

 ともかくも、いろいろあった2017年も、いよいよ最終コーナーを曲がり、残すところ直線200mに入った。自らに最後の鞭を打って「春待月」を走り切り、ささやかな夢のある新春を迎えたいと思っている。