惑星ダルの日常(goo版)

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スタージョンの法則

2016-04-07 21:23:23 | SF

 前にも書きましたが、ダニエル・C・デネット『思考の技法 直観ポンプと77の思考術』(阿部文彦+木島泰三訳、青土社2015.3――原著2013)に、思考を効率化するための12の「道具」のひとつとして「スタージョンの法則」が取り上げられています。

 一般に、この法則は――

「SFの90パーセントはクズだ。しかし、何事も90パーセントはクズである」

 という言い回しで使われ、「SFはクズだ!」という罵倒に切り返したものとされています。

 出典は、日本語版ウィキペディアの同項目にあるように、〈 Venture Science Fiction 〉誌1958年3月号のスタージョンの原稿となっているようです。
 が、これは活字になった同法則ということで、それより5年前、1953年にフィラデルフィアで開催されたワールドコンでスタージョンが講演した際に、同じ内容のことを語っています。デネットの本には、この時の発言が詳しく載っています。
 引用してみます(一部数字表記を変えました)――

推理小説について語るとき、人々は『マルタの鷹』や『三つ数えろ』に触れます。西部劇について語るときには、『大西部への道』や『シェーン』のことを話します。しかし、SFについて語るときになると、彼らはそれを「あのバック・ロジャーズのたぐい」と呼び、「SFの90パーセントはカス( crud )だ」と言います。実際その通りで、SFの90パーセントはカスなのですし、カスでない10パーセントこそが重要なのです。SFにしてもカスでない10パーセントは、SF以外の分野で書かれたどんなものと比較しても劣っていないか、あるいは優れています。

 先にあげた短いバージョンの方が決まっていますが、とりあえず、これでスタージョンがどういう言い方をしたのかが正確になりました。

 デネットはこの法則を、「くだらないものを相手にせず、優れたもののみにかかずらわりなさい」といった意味合いで「思考の道具」としています。
 が、打ち捨てられた「クズ」を、好んで楽しむ習性はなかなかやめられないんですよねえ……。



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