仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

そろばんずく

2016年12月10日 | ムービー
『そろばんずく』(1986年/森田芳光監督)を見た。
物語は、「広告代理店"ト社"勤務の春日野八千男(石橋貴明)と時津風わたる(木梨憲武)の2人は、パブで梅づくしのり子(安田成美)と知り合うが、なんと翌日彼女がト社に入社し、3人でチームを組むことになった。俄然張り切る2人。しかし、ライバル会社"ラ社"の天敵雄(渡辺徹)の横やりで芸能プロダクションの社長が寝返り、進行中の案件"え食品"の広告に予定していた女優を奪われてしまう。その後も桜宮天神(小林薫)の企てにより、"M食品"の契約まで"ラ社"に奪われ、さらには、暴力による営業を仕立てあげられて自宅待機に追い込まれてしまい・・・」という内容。
演出はコメディータッチなのだけれども、内容はエグイ。
「梅づくしのり子は桜宮天神とつきあって妊娠したが、出世願望が強い桜宮天神は"ラ社"の社長令嬢と結婚し、梅づくしのり子は捨てられ、人工妊娠中絶。梅づくしのり子はライバル会社の"ト社"に勤め、復讐のチャンスを狙った」ということなのだが、その復讐劇に巻き込まれてしまうの春日野八千男と時津風わたるは、濡れ衣を着せられ自宅待機にされてしまうのだから、若手社員のこの2人にとっては何とも迷惑な話だ。
(^_^;)
冒頭の天敵雄の登場の仕方は意味不明だったものの、「営業は血だ!!男性社員は仕事の役に立たない相手と結婚するな!!」と言う桜宮天神は分かりやすく強烈なキャラクターだった。
自宅に『姓氏家系辞書』、『種牡馬年鑑』などという本が並んでいたりして、家柄、出身校、財産を第一に考える嫌みな男だが、筋金入り。
天敵雄が「どけよ、邪魔だよ。行け!!行け!!」とひたすら両手を振り回している場面、出席者全員が円の外側を向いて座る不思議な営業会議、社員全員が何故か学生服やセーラー服を着た姿で研修を受けているなど、よく分からない場面が続いたが、ヘンテコな固有名詞を使ったり突飛な演出をしなくても、そこそこ面白くできた物語なのにと、少しもったいない気がした。
演技は下手だが、(当時)人気が出てきた"とんねるず"のイメージを利用したということだったのだろうか。

武士の献立

2016年07月09日 | ムービー
『武士の献立』(2013年/朝原雄三監督)を見た。
物語は、「江戸時代。加賀藩江戸屋敷において、5代藩主・前田吉徳(猪野学)の側室・お貞の方(夏川結衣)に仕えている女中・春(上戸彩)は、幼い頃に火事で両親も家も失った天涯孤独の身の上だった。ある時、屋敷での能見物の際に大槻伝蔵(緒形直人)による"鴨もどきの正体当て"という余興が行われ、包丁侍と呼ばれる台所御用役・舟木伝内(西田敏行)にすっかり気に入られてしまった。息子・安信(高良健吾)の嫁にと縁談を持ちかけられたが、商家に嫁いだものの"生意気で可愛げがない"と1年で離縁された過去を持つ春は、この申し出を固辞。しかし、後日再び顔を合わせた伝内に、"出来損ないを一人前の包丁侍に仕立ててほしい。舟木家を救ってほしい"と懇願され、金沢へと嫁ぐことになったのだが・・・」という内容。
長男の突然死により舟木家の跡継ぎになってしまった次男・安信は縁談に気乗りせず、江戸から金沢に15日かけ歩いてやって来た春を「別に俺が頼んだわけではない」と出迎えにも出ないし、仕事にも身が入らず、"和えの会"で親戚連中に出す汁物を作り直した春を「どういうつもりで吸い物を作り直したのだ!!」と責める。
新婚の嫁を「この古だぬきめ!!」とののしる安信は酷い奴だが、春も「つまらないお役目だと思っているから、つまらない料理しか作れないのではありませんか」と黙ってはいない。
春を出迎えた姑の満(余貴美子)が「初鰹ではなく脂ののった戻り鰹を好む者もおります」と嫁を気遣っていただけに、"料理指南を受けるor離縁"を賭ける包丁の腕比べに至った2人には何とも前途多難な様子が見えたが、『武士の家計簿』(2010年/森田芳光監督)に登場した"そろばん侍"猪山直之(堺雅人)と駒(仲間由紀恵)の夫婦はとても良い関係に描かれていただけに、同じ加賀藩の侍を取り上げた似たような物語とあって、あえて違う感じにしたのだろうか。
この物語に登場するのは実在した人物達なのだそうで、舟木伝内(?~1759年)は『ちから草』(全5巻/成立年不明)など、安信(長左衛門/?~1779年)は父と共著の『料理無言抄』(享保14・1729年)など、加賀料理のレシピ本を著しているとのことであるし、加賀藩第5代藩主(加賀前田家6代)・前田吉徳(1690~1745年)、その側室・お貞の方(真如院/1707~1748年)、藩士・大槻伝蔵(1703~1748年)、鹿賀丈史が演じた前田土佐守直躬(1714~1774年)などは"加賀騒動"と呼ばれた加賀藩お家騒動の中心にいた人物なのだそうである。
安信の親友として登場する今井定之進(柄本佑)が実在した人物なのかは分からないのだが、妻・佐代(成海璃子)共々、"加賀騒動"という失敗した藩政改革の犠牲者として描かれており、おそらくは物語の展開上、この一連の事件にそれなりの時間を割いて取り上げざるを得なかったものだから、肝心の"武士の献立"という一番のテーマが突き詰められなかったのだろうと想像する。
終盤は何か物足りなさを感じてしまって、幾分残念に思えた作品だった。

鉄道員(ぽっぽや)

2014年04月11日 | ムービー
『鉄道員(ぽっぽや)』(1999年/降旗康男監督)を見た。
物語は、「美寄駅から分岐して敷設されているローカル線・幌舞線。その終着・幌舞駅で駅長として勤務している佐藤乙松(高倉健)は数ヵ月後に定年退職を控えており、これまで何よりも職務を優先させてきた彼は生後2ヶ月で死んでしまった一人娘や長年連れ添った妻(大竹しのぶ)の最期を看取ることができなかったことを悔いていた。また、すでに再就職先が内定している友人の杉浦仙次(小林稔侍)美寄駅長からこれからも一緒に働こうと誘われているものの、どうにもその気になれずにもいたのだった。そんな時、見慣れない女の子が乙松の前に現れ、"見たことがある人形だ"と不思議な思いをする。そして、JR北海道本社勤務の杉浦秀男(吉岡秀隆)からは幌舞線の廃線の予定が早まったことを告げられるのだが・・・」という内容。
"定年退職"、"ローカル線の廃線"といった身近にありがちな少し寂しい出来事が話の中心になってはいるのだが、"幌舞駅"という舞台も架空だし、物語全体としてもこれは紛れもなく"ファンタジー"である。
(^_^)
それならもっと楽しい物語にしてほしいところではあるのだが、寂れた町の廃止になる鉄道路線の定年退職する男達が、閉山する前の賑やかだった頃に死んでしまった人達のこと等を回想しているのだから、それは無理な話か。
(^_^;)
秀男からの廃線を予告する電話を切ったあと、投げ捨てるように帽子を机に置く乙松だったが、少しして帽子をきちんとかぶり直す。
何か『武士の家計簿』(2010年/森田芳光監督)と通じるような世界で、それは人生のすべてをその職業に捧げてきた男の性(さが)であり、それ故、退職後にリゾートホテルの仕事というまったくの別世界で生きていくことへの抵抗があったのだろう。
大竹しのぶの演技はやはり素晴らしい。
妙にうつむいて相手と目を合わせない、あの感じは見事だ。
たった2ヶ月で死んでしまった娘・雪子(広末涼子)の姿だと気がつき、彼女を何のためらいもなく"ゆっこ"と呼ぶ乙松。
彼のそういう思いがこの数日の不思議な体験を生んだのだろう。

武士の家計簿

2010年12月18日 | ムービー
ユナイテッド・シネマ札幌で、『武士の家計簿』(2010年/森田芳光監督)を見た。
物語は、「江戸時代末期。代々加賀藩の算用者(さんようもの)を勤めている猪山家の8代目・猪山直之(堺雅人)と駒(仲間由紀恵)の間に長男・直吉(大八木凱斗)が生まれた。同じく算用者として勤める父・信之(中村雅俊)、母・常(松坂慶子)、祖母(草笛光子)の6人で暮らしていた猪山家は決して華美な生活をしていたわけでは無かったが、家計は厳しく、借金の額は2人の年収の2倍にも達していたのだった。4歳になった直吉の武士としての最初の儀式を控え、収支のやり繰りが付かなくなった直之は・・・」という内容。
これは、実際に残されている猪山家の記録を元に書かれた同名ノンフィクションが原作となっているようで、著者の茨城大学准教授・磯田道史氏は、4日前のNHKテレビ『爆笑問題のニッポンの教養』に出演し、「猪山家の家族のやり取りはまるでツイッターのようだ」と述べていたが、猪山家の記録は相当克明に残されているのだろう。
劇中、家計簿をつけるきっかけとなる"にらみ鯛"は悲しいエピソードだが、やはり子供のいる家庭は子供の存在に助けられるようだ。
子供がいると、本当に家庭の中は明るくなる。
当時の加賀藩には"天使"だなんて言葉は無かっただろうが、まさしくそういった存在だろう。
それにしても、武士の世の中というのはお金がかかったようだ。
見栄を張るのも大概にした方が良いということだな。
(^o^)
"お家芸"とはこういうことかと再認識させられた面白い映画だった。
月曜はメンズデーということで、これを1,000円で見られたのはとてもラッキー。

間宮兄弟

2010年01月30日 | ムービー
『間宮兄弟』(2006年/森田芳光監督)を見た。
物語は、「仲の良い兄弟、35歳の間宮明信(佐々木蔵之介)と32歳の徹信(塚地武雅)は2人で暮らしている。一日の仕事を終えて帰宅した後は、テレビの野球中継を見ながらスコアブックをつけたり、レンタルショップで借りたDVDを一緒に見るのが日課だ。ある時、家でカレーパーティーをしようと思いつき、弟・徹信が公務補として働いている小学校の教員・葛原依子(常盤貴子)と、2人が行きつけのレンタルDVDショップのアルバイト店員・本間直美(沢尻エリカ)を誘ってみるのだが・・・」という内容。
兄に彼女が出来るようにと自宅でのパーティーを企画する弟。
バーでコーヒー牛乳を飲んでぼったくられ、悔しがる弟を「生きてるだけでも良かったじゃないか」と慰める兄。
実家に帰ると、すぐにおばあちゃん(加藤治子)がお小遣いをくれる場面が出てくるが、母親・順子(中島みゆき)の大らかさといい、この兄弟の仲の良さ、性格の良さは家庭環境に起因する所が大きいようだ。
(^_^)
明信の同僚・大垣賢太(高嶋政宏)と安西美代子(岩崎ひろみ)の、「何怒ってたんですか」「関係ないでしょう」「はい♪」という会話の場面があるが、只ひたすらに元気が良くて声が大きい体育会系営業マンの習性が現れていて面白かった。
(^o^)
茶系の秋らしい服を着ているのに周囲の景色が夏にしか見えなかったりと、少し手抜きな感じがしたのは残念だが、良くできた作品だ。