仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

臨場 劇場版

2018年07月14日 | ムービー
『臨場 劇場版』(2012年/橋本一監督)を見た。
物語は、「無差別通り魔事件の殺人犯・波多野進(柄本佑)は心神喪失が認められ、刑法第39条により無罪となった。事件から2年後、裁判を無罪判決へ導いた弁護士・高村則夫(菅原大吉)と精神鑑定を行った精神科医・加古川有三(デビット伊東)の2人が何者かに殺される。同一人物の犯行であると推測されたことから、警視庁と神奈川県警の合同捜査本部が立ち上がったが、高村を司法解剖した警視庁刑事部鑑識課・倉石義男検視官(内野聖陽)は、被害者の死亡推定時刻を断定できず、二通り考えられることを不思議に思い・・・」という内容。
まったく知らなかったのだが、これは2009年と2010年に計21話放送された同題名のテレビドラマを映画化したものらしい。
主要な登場人物の人間性や背景などについては特に詳しく描かれてはいなかったのだが、それほど複雑なものでは無いらしかった。
警察の捜査についての詳細を描いている少し狭い世界での物語なので、こじんまりとした展開になってしまうのは仕方がないところなのだろうが、主人公・倉石検視官の自由奔放な働きぶりは枠から外れ過ぎていて、違和感を覚えるほどだった。
時代劇に登場しがちな、気難しくて人当たりが悪いのだけれども、実は人間味が深く腕の良いお医者さん。
そのようなイメージを抱かせる主人公を現代の警察組織にはめ込んだ感じだ。
こういう人の部下・小坂留美検視官心得(松下由樹)は、無茶苦茶大変なことだろう。
(^_^;)
無差別通り魔事件の被害者・関本好美(前田希美)の母親・直子(若村麻由美)は、事件から2年が経っても依然ショックから立ち直れずにいたのだが、事件直後の遺体と対面する場面では、事実を受け止めることの難しさが描かれていて、この場面はどうにも切なすぎるエピソードだった。

武士の献立

2016年07月09日 | ムービー
『武士の献立』(2013年/朝原雄三監督)を見た。
物語は、「江戸時代。加賀藩江戸屋敷において、5代藩主・前田吉徳(猪野学)の側室・お貞の方(夏川結衣)に仕えている女中・春(上戸彩)は、幼い頃に火事で両親も家も失った天涯孤独の身の上だった。ある時、屋敷での能見物の際に大槻伝蔵(緒形直人)による"鴨もどきの正体当て"という余興が行われ、包丁侍と呼ばれる台所御用役・舟木伝内(西田敏行)にすっかり気に入られてしまった。息子・安信(高良健吾)の嫁にと縁談を持ちかけられたが、商家に嫁いだものの"生意気で可愛げがない"と1年で離縁された過去を持つ春は、この申し出を固辞。しかし、後日再び顔を合わせた伝内に、"出来損ないを一人前の包丁侍に仕立ててほしい。舟木家を救ってほしい"と懇願され、金沢へと嫁ぐことになったのだが・・・」という内容。
長男の突然死により舟木家の跡継ぎになってしまった次男・安信は縁談に気乗りせず、江戸から金沢に15日かけ歩いてやって来た春を「別に俺が頼んだわけではない」と出迎えにも出ないし、仕事にも身が入らず、"和えの会"で親戚連中に出す汁物を作り直した春を「どういうつもりで吸い物を作り直したのだ!!」と責める。
新婚の嫁を「この古だぬきめ!!」とののしる安信は酷い奴だが、春も「つまらないお役目だと思っているから、つまらない料理しか作れないのではありませんか」と黙ってはいない。
春を出迎えた姑の満(余貴美子)が「初鰹ではなく脂ののった戻り鰹を好む者もおります」と嫁を気遣っていただけに、"料理指南を受けるor離縁"を賭ける包丁の腕比べに至った2人には何とも前途多難な様子が見えたが、『武士の家計簿』(2010年/森田芳光監督)に登場した"そろばん侍"猪山直之(堺雅人)と駒(仲間由紀恵)の夫婦はとても良い関係に描かれていただけに、同じ加賀藩の侍を取り上げた似たような物語とあって、あえて違う感じにしたのだろうか。
この物語に登場するのは実在した人物達なのだそうで、舟木伝内(?~1759年)は『ちから草』(全5巻/成立年不明)など、安信(長左衛門/?~1779年)は父と共著の『料理無言抄』(享保14・1729年)など、加賀料理のレシピ本を著しているとのことであるし、加賀藩第5代藩主(加賀前田家6代)・前田吉徳(1690~1745年)、その側室・お貞の方(真如院/1707~1748年)、藩士・大槻伝蔵(1703~1748年)、鹿賀丈史が演じた前田土佐守直躬(1714~1774年)などは"加賀騒動"と呼ばれた加賀藩お家騒動の中心にいた人物なのだそうである。
安信の親友として登場する今井定之進(柄本佑)が実在した人物なのかは分からないのだが、妻・佐代(成海璃子)共々、"加賀騒動"という失敗した藩政改革の犠牲者として描かれており、おそらくは物語の展開上、この一連の事件にそれなりの時間を割いて取り上げざるを得なかったものだから、肝心の"武士の献立"という一番のテーマが突き詰められなかったのだろうと想像する。
終盤は何か物足りなさを感じてしまって、幾分残念に思えた作品だった。