栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

血統クリニック~皐月賞

2012-04-16 10:26:10 | 血統予想

競馬総合チャンネルでは「血統クリニック」と題して、毎週のメインレース(2歳3歳戦中心) の出走予定馬の血統解説をしています(木曜更新)
皐月賞はこんな感じです

◆持続力は父を凌ぐ
 ワールドエースの母は欧G1を3勝したManduroの半妹で独オークス3着。母系にはドイツとハイインロー的なスタミナ血脈が代々凝縮されていて、その配合通りにディープをHyperion的持続型にしたような体質脚質に出だ。父ほど華麗なアクションではないが、安定感抜群のフォームで長く走り続けることができるのが素晴らしく、こと持続力に関していえば父より上だろう。若葉Sや若駒Sをみても内回りの4角でそんなにモタつくタイプではないし、多少早仕掛けでも持続力でねじ伏せてしまうぐらいの頭で乗れば、ここもやっぱりモノが違ったという結果になるはず。

◆タキオン×G1マイラー
 グランデッツァはマルセリーナの3/4弟で母は仏マイルG1勝ち馬。母からナスキロ的な柔らかさを受け、自身はアグネスレディー≒Welsh Flameのニアリークロス3×4にTom Foolの継続クロスだから、斬れと粘りと機動力とを兼ね備えていて何でもできる優等生という感じ。ベストは1800mだろうが、完調でなかったラジオNIKKEI賞でもあの僅差だし、タキオン×マイラー牝馬の配合はキャプテントゥーレやダイワスカーレットと同じ。

◆Halo3×4の機動力で
 アダムスピークの母はデルマーオークス(米G1・芝9F)勝ち馬で、ディープ×SingspielでHalo3×4だから同じラジオNIKKEI杯勝ちのヴィクトワールピサやダノンバラードのような内回り向きの機動力がある。サドラーの重厚さも出た伸びのある体型で距離はもっと延びてもいいが、脚質的には東京より中山で大きく狙いたい馬だ。

 ゴールドシップはステイゴールド×メジロマックイーンだからドリームジャーニー=オルフェーヴルやフェイトフルウォーと同じ配合だが、こちらはPrincely Gift5×5も持つのでコスモバルクのようなしなやかさがあり、ストライドを伸ばして持続力ある斬れ方をする。長い直線で追えば追うほど伸びるが、内回りのコーナーで加速できるほうではないのでバルクのイメージからしても中山より東京で大きく狙いたい。

 ディープブリランテはおなじみのバブルカンパニー牝系だから先行粘りの脚質に出たのは順当だが、前傾姿勢で近親のザッツザプレンティのように掻き込んで走るので、加速力は凄いが良馬場の斬れ味は平凡だ。スプリングSでも4角で加速しながら抜け出すときには勝ち馬を置き去りにしたほどで、折り合ってあの脚が使えれば望みはある。道悪はプラス。

 コスモオオゾラは強力な相似配合の母の影響が強く、ロージズインメイ産駒というよりはコマンダー産駒の中距離馬というイメージ。2000mは3戦3勝だが、パンパンの良だと鋭さで少し見劣る感は否めない。

 ベールドインパクトはコイウタの3/4弟。母系のTom Rolfe的なパワー小脚も出た走りなので中山内回りは合っているが、相手は一気に強化された。道悪は歓迎。

 トリップはトゥザヴィクトリーの近親で、Hyperion色濃い母系にクロフネという成功パターンだが、似た配合のホエールキャプチャと比較すると爆発的な脚に欠ける面はある。

 シルバーウエイブはジャングルポケット×フレンチデピュティでパワーと粘りの血統だから、良の時計勝負はやはり課題。

コメント (23)
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第72回皐月賞回顧~躊躇なきロングスパート

2012-04-16 10:16:02 | 血統予想

中山11R 皐月賞
◎9.ワールドエース
○18.グランデッツァ
▲6.ディープブリランテ
△2.アダムスピーク
×7.ベールドインパクト
◎は父よりもハイペリオン的な体質走法で、父ほどダイナミックな動きはできないがズレやブレがなく安定感抜群のフォームで走る。ゲートさえ出れば馬群を縫って抜け出すような芸当もできそうだし、道悪残りでタフな馬場になるのも歓迎で、ここを勝ちきればオルフェーヴルに続く三冠もみえてくる。○は斬れも粘りも機動力も兼備した優等生配合で何でもできる馬だが、母のマイラーっぽさも出ていてベストは1800mか。2000mなら良のスローがベターではないか。雨上がりの中山芝はインから乾く。大跳びでこの枠だと外々を回すしかないゴールドシップの評価を落とし、荒れ馬場や道悪を苦にせず内々を俊敏器用に立ち回れるパワーと機動力、これを兼ね備えた▲△×を相手にとりたい。

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土曜が雨で不良→日曜は快晴で稍重まで乾くというのは、3月の中山開催に照らし合わすとインベタ馬場になるパターンだったのですが、毎週道悪競馬が続いて乾いてもインは荒れて走りにくい馬場なっていたようで、それは8Rルリニガナや9Rポールアックスが馬場の真ん中あたりを選んで逃げていたのをみても明らかでした

「ここまで馬場バイアスがハッキリすると先行勢も真ん中より外を回るから、差し馬はその更に外を回らされる可能性もあり一概に外差し有利とは言い切れず、むしろ馬場のいいギリギリのところをすくってくる馬が一発あるのではないか」「1,2番人気は安全策で外を回すだろうから、その内から叩き出す機動力のある馬は…となるとやっぱり岩田かピンナか…」というようなやりとりをメタボ博士としてました

コース取りを考慮すれば◎ワールドエースは今日も実質上がり1位で、この馬はスローのきさらぎ賞を楽勝できるぐらいの斬れ味はあるのですが、一糸乱れぬ同じフォーム同じストライドで同じピッチで機械のようにずっと走りつづけることができるのが最大の長所であり、それがHyperionの最大の長所なのだということはこれからも言い続けたいです

二言目には父と比べて云々…とか、オルフェーヴルと比べて云々…というコメントが陣営から出てくるのは高い期待の表れなのでしょうが、ワールドエースはディープインパクトともオルフェーヴルとも違うオリジナルな強さ、Hyperion的な強さを受け継いだ馬だと私は思ってるし、今日もいろんな負荷がかかったレースだったにもかかわらず4角からゴールまで同じフォームで同じ脚で黙々と走り続けていて、それこそがこの馬の最大の魅力じゃないかということをこれからも言い続けたいです

「今年のクラシックロードは牡牝とも、オールラウンドな強さや幅広い対応力や不屈の闘志を兼ね備えた馬、ようするにオルフェーヴルやアパパネやブエナビスタのような馬がトップクラスにほとんど見当たらず、好走パターンにハマったときとハマらなかったときの落差がわりと大きい馬ばかりで、だからあまり目先の結果にはとらわれすぎずに、アンライバルド・ロジユニヴァース・スリーロールスの年とかレジネッタ・トールポピー・ブラックエンブレムの年とか、あんなふうになる可能性も十分あるんだろうなあ…ぐらいで構えておいたほうがいいと思うし、前にも書きましたがこういう年は『良い負け方』をすることも一つポイントかもしれない」

弥生賞が終わったあとにこう書いたのですが、新馬-特別を好位差しで連勝、札幌2歳を後方一気で2着、ラジオNIKKEIでは向正面で一気に押し上げて4角では一旦置かれ気味になりながらも直線はいつものごとくグイグイ伸びて2着、共同通信杯では好位付けでディープブリランテを射程圏に置きながら4角から追って追って差し切り、そして皐月賞では3角手前からのイン捲りロングスパート

どうみても東京や外回り向きのストライドでありスピードの乗りなのに、共同通信杯以外は小回り内回りばかりを使われてきてしかもいろんな競馬を試されてきて、「良い負け方」だけでなく「良い勝ち方」もしてきたのは、より多くの経験値を積んできたのは、一番しんどい思いをしてきたのはゴールドシップだったのかと

皐月賞は中山でやりますから東京より中山向きの機動力型先行捲り脚質の馬が勝ちやすいレースなのは当然で、東京向きのストライドで走る馬、スペシャルウィークやタニノギムレットやジャングルポケットやナリタトップロードやコスモバルクなどは、中山より東京向きだからこそ届かなかったといえます

しかし同じようにストライドで走るタイプにもかかわらず、長く脚を使える長所を活かしたロングスパートで皐月を勝ちきったのが、メイショウサムソンでありテイエムオペラオーでありサニーブライアンでした(ちなみにサムソンもサニーブライアンもPrincely Gift的な前駆が伸びるストライド)

良い勝ち方と負け方を重ねてきた経験値と、荒れ馬場のインに突っ込めるパワー、そしてゼロスの逃げにより長く脚を使える長所が活きる持続戦になったこと、この三つがまず勝因としてあげられるでしょう

そして共同通信杯の追い切り後に「長く脚を使える馬だから、その持ち味を活かせば…」とコメントしていたように、そのときからすでにこの馬の長所を理解していた内田博は、3角手前からロングスパートを仕掛けることに何の躊躇いもありませんでした

福永祐一は「出し抜けを食らった、力負けではない」的なコメントをしていたようですが、瞬時には加速できないけれど持続力抜群のストライドで走るゴールドシップが中山2000mのG1を勝つためには、出し抜けでも奇襲でもなくあそこから動くのが正攻法なのだ…ということを内田博は敢然と主張し、迷わず実行したのです

岩田が「地方出身の騎手にしかできない乗り方」と言っていたのも何だか深く、馬にも人にも脱帽の皐月賞でした

前傾姿勢で掻き込んで走る▲ディープブリランテは荒れ馬場の中山はベスト条件で、馬の後ろに入れることができて前半もう少し折り合っていればバキューンと弾けたかもしれないですが、血統通り“俊敏前向き短めザッツザプレンティ”という馬です

グランデッツァは1800mベストで距離適性的にはキャプテントゥーレと同じぐらいというか、キャプテンが勝ったときのような良のスローならマイラー寄りのスピードと加速力がモノを言ったかもですが、今日の馬場とペースでは最後苦しかったですね~

「サラブレ」4月号では「皐月賞で少し伸びあぐみ、NHKマイルCで巻き返すパターンとみた」と書いたんですが、この後はどういうローテになるんでしょうか

コメント (5)
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