まず最初に狙うのは、ふもと近くに生えている大きな栗の木だ。昔からみんなこの木のことは知っている。毎年、それはたくさんの栗の実をつけるのだ。栗は十分に熟れていた。男が独り栗の木の幹をつかみ、威勢よく揺らした。すると栗の実がどんどん落ちてきて、下にいた子供たちが大はしゃぎにはしゃいだ。
栗のいがは痛い。だが村人はそれを、鹿皮で作った足袋(あしぶくろ)に覆われた足を使い、器用にむくことができた。むいた栗は急いで鹿皮の袋に入れた。袋はどんどん重くなる。うれしくてたまらないというような笑い声が、あちこちで起こった。
アシメックはその様子をほほ笑みながら見つつ、自分は少し奥に行った。そこには目当ての野生の林檎の木があるのだ。林檎は赤く熟れていた。栗の実よりも一回り大きいほどの大きさで、噛むと苦いが、これはいい酒の材料になるのだ。干して砕けば風邪の薬にもなる。とてもいいものなのだ。
村には酒つくりの上手な女がいた。そいつに渡せば、ことしもうまい酒を造ってくれるだろう。アシメックは精を出して、林檎を摘み始めた。
キノコを探しているものもいた。山ブドウを探しているものもいた。榾を集めるものもいた。秋の山は宝の山だ。人間は神に感謝しなければならない。こんなうれしいものを、毎年のようにもらっていいのか。アシメックは時々そう思った。特にいい仕事もしていないのに、法外な報酬をもらっているような気がするのだ。