しかしその鳥を見せられたミコルは難しい顔をしてしばし沈黙した。そんな鳥など見たことはなかったのだ。風紋占いをしても、相変わらず何もわからないという。
「昔の知恵に、似たようなことはなかったか」
アシメックは聞いた。
「そうだな。若い頃聞いた話に、白い蛙がとれたことがあるというのがある」
「ほう、それで」
「特になにもなかった。誰もそれを食えなかったから、すぐに沼に逃がしてやったそうだ」
「そうだろうな。変わったものは食ってはならないと、前の族長も言っていた」
「その鳥は山に埋めてやったほうがいい。なんにもしないほうがいいだろう」
「ああ、そうするよ」
アシメックは鳥を茅布で包み、一晩は自分の家においた。だがその翌日の朝早々、アルカ山にそれを埋めに行った。境界の岩が見えるあたりに穴を掘り、その鳥を茅布に包んだまま埋めた。作業が終わると彼はまた境界の岩のところに行き、その向こうを見た。
山はだんだんと冬枯れに近くなってゆく。紅葉していた木もどんどん葉を落とし、裸に近くなっていく。風も冷たかった。岩の向こうの闇は深いが、その奥で何かがうごめいているような気がする。
不安が再び胸の奥で凝結するのを感じた。オラブの影は、彼の中で一つの魔の形に変わりつつあった。幻影だ、そんなことは。と彼は打ち消そうとした。あいつは弱くて馬鹿なやつなのだ。なんとかしてやらねばならない。だがなぜ、そのオラブの姿が今、得体のしれない魔物のようなものになって、自分の中に現れるのだろう?