叫ぶだけ叫べ泣くだけ泣け月夜 石母田星人 「滝」10月号＜瀬音集＞

　月のあの輝きは人間も動物をも、ひきつける不思議な力が
あり、よく月に吠える犬がいる。秋から冬の月はなおのこと
趣が深く、おのづから大きな声を上げたくなる。複雑な現代
社会の中で、叫びたくても叫べない。泣きたくても泣けない
人が大勢いる。
　「叫べ」「泣け」の命令形は作者の心根のやさしさの表れ
である。全身をふるわせ、思い切り叫びなさい、思い切り泣
きなさい・・月光の中で・・。
人間の深い孤独感を言い取った句。（庄子紀子）