「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

秋の蚊の硯の海に溺れをり 菅原鬨也 「滝」10月号 <飛沫抄>

2015-10-08 04:24:43 | 日記
 硯の海に落ちてしまった。かわいそうな秋の蚊?である。
蚊の雌は人畜を刺し、その血を吸う。マラリアや日本脳炎な
どの伝染病を媒介するものである。人々に忌み嫌われている。
その中の一匹が硯池のドロドロとした墨汁に落ち、もがき苦
しんでいる弱々しい秋の蚊。命あるものの一瞬の動と静を捉
えた。「溺れをり」の中に作者の仏ごころが表れている。あ
の小さな硯池が「海」という一字の表記により、机上の事柄
でなく海原を思わせる大きな景となっている。(庄司紀子)