『鑑定士と顔のない依頼人』(原題:La Migliore Offerta)
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:ジェフリー・ラッシュ,シルヴィア・フークス,ジム・スタージェス,
ドナルド・サザーランド,フィリップ・ジャクソン他
前述の『バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち』の次、
この日の3本ハシゴのトリはこれ。
TOHOシネマズ梅田にて、ポイント鑑賞しました。
ジュゼッペ・トルナトーレ監督といえば
『ニュー・シネマ・パラダイス』(1989)や『海の上のピアニスト』(1999)が挙げられますが、
竹中直人が『ニュー・シネマ・パラダイス』を嫌いだと言っているのを聞き、
「そうなのか~」と笑ってしまったことがあります。
私は『ニュー・シネマ・パラダイス』ももちろん好きですが、
この監督の作品で度肝を抜かれたのは『題名のない子守唄』(2006)でした。
以来、トルナトーレ監督に関しては、純粋で心が洗われるような作品よりも、
ミステリアスな作品のほうが好みかもしれないと密かに思っています。
主演は『シャイン』(1995)のジェフリー・ラッシュ、
共演にはジム・スタージェスやドナルド・サザーランドと、新旧芸達者を揃えた顔ぶれで心が躍る。
音楽はもちろんエンニオ・モリコーネ。
初老のヴァージルは、一流の美術鑑定士にしてカリスマ的オークショニア。
彼に鑑定を依頼し、彼が仕切るオークションに参加したい人が引きも切らない。
潔癖症でどんなときも手袋を着用、人づきあいを嫌って生涯独身を貫いている。
そんな彼が心血を注いで収集しているのが女性の肖像画。
しかし、自分が鑑定を施した肖像画を適正価格で買うのではなく、
旧友ビリーの手を借り、不正な手段を用いて競り落としていた。
こうして集めた名画を自宅の隠し部屋に飾り、
この部屋にいるときこそがヴァージルがもっともくつろげる時間。
ある日、両親を亡くしたという女性クレアから電話があり、
どうしてもヴァージルに遺品の鑑定をしてほしいと言う。
涙ながらに頼まれて、ヴァージルは彼女が暮らす屋敷へと赴くが、
なぜか彼女は決してヴァージルの前に姿を現そうとしない。
管理人によれば、彼女は難しい病に冒されており、
10年以上かよっている管理人すら彼女の姿は一度も見たことがないらしい。
姿を見せない依頼人とは契約を交わせないとヴァージルは憤慨し、
この取引をなかったことにしようと考えるが、
屋敷の中に歴史的名品の一片をとおぼしきものを見つけてしまう。
また、いったいクレアがどんな容貌をしているのかにも好奇心が増すばかり。
ヒステリーを起こしては壁越しに謝るクレアを置いてはおけず、
次第にその気持ちが恋心へと変わってゆくのだが……。
謎めいた雰囲気に出だしはワクワクしますが、
ドンデン返しはまったく予測できないものではないので、
ストーリーとしてはまぁまぁという感じ。
ただ、役者がみんなイイ。
彼の旧友でありながら、彼に認めてもらえなかったがために
一流の画家にはなれなかったビリーにドナルド・サザーランド。
修理できないものはない凄腕の若手職人ロバートにジム・スタージェス。
屋敷の向かいの店にいつもいる小人症の女性と、
意味ありげな登場人物に目を引かれます。
さて、この一言がネタバレになってしまいますが、
またしてもオッサンの妄想かと思いきや、ホンマもんの妄想。
ジェフリー・ラッシュ演じる、打ちひしがれたヴァージルが
プラハの“ナイト&デイ”にひとりたたずむラストシーンは
目にも心にも非常に残りました。これぞ映画。
愛情さえも完璧に偽れる。
こんな年齢になって初めて恋をしたのに騙されたと知ったら、そら放心。
それでも恋をしたほうがよかったか。
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:ジェフリー・ラッシュ,シルヴィア・フークス,ジム・スタージェス,
ドナルド・サザーランド,フィリップ・ジャクソン他
前述の『バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち』の次、
この日の3本ハシゴのトリはこれ。
TOHOシネマズ梅田にて、ポイント鑑賞しました。
ジュゼッペ・トルナトーレ監督といえば
『ニュー・シネマ・パラダイス』(1989)や『海の上のピアニスト』(1999)が挙げられますが、
竹中直人が『ニュー・シネマ・パラダイス』を嫌いだと言っているのを聞き、
「そうなのか~」と笑ってしまったことがあります。
私は『ニュー・シネマ・パラダイス』ももちろん好きですが、
この監督の作品で度肝を抜かれたのは『題名のない子守唄』(2006)でした。
以来、トルナトーレ監督に関しては、純粋で心が洗われるような作品よりも、
ミステリアスな作品のほうが好みかもしれないと密かに思っています。
主演は『シャイン』(1995)のジェフリー・ラッシュ、
共演にはジム・スタージェスやドナルド・サザーランドと、新旧芸達者を揃えた顔ぶれで心が躍る。
音楽はもちろんエンニオ・モリコーネ。
初老のヴァージルは、一流の美術鑑定士にしてカリスマ的オークショニア。
彼に鑑定を依頼し、彼が仕切るオークションに参加したい人が引きも切らない。
潔癖症でどんなときも手袋を着用、人づきあいを嫌って生涯独身を貫いている。
そんな彼が心血を注いで収集しているのが女性の肖像画。
しかし、自分が鑑定を施した肖像画を適正価格で買うのではなく、
旧友ビリーの手を借り、不正な手段を用いて競り落としていた。
こうして集めた名画を自宅の隠し部屋に飾り、
この部屋にいるときこそがヴァージルがもっともくつろげる時間。
ある日、両親を亡くしたという女性クレアから電話があり、
どうしてもヴァージルに遺品の鑑定をしてほしいと言う。
涙ながらに頼まれて、ヴァージルは彼女が暮らす屋敷へと赴くが、
なぜか彼女は決してヴァージルの前に姿を現そうとしない。
管理人によれば、彼女は難しい病に冒されており、
10年以上かよっている管理人すら彼女の姿は一度も見たことがないらしい。
姿を見せない依頼人とは契約を交わせないとヴァージルは憤慨し、
この取引をなかったことにしようと考えるが、
屋敷の中に歴史的名品の一片をとおぼしきものを見つけてしまう。
また、いったいクレアがどんな容貌をしているのかにも好奇心が増すばかり。
ヒステリーを起こしては壁越しに謝るクレアを置いてはおけず、
次第にその気持ちが恋心へと変わってゆくのだが……。
謎めいた雰囲気に出だしはワクワクしますが、
ドンデン返しはまったく予測できないものではないので、
ストーリーとしてはまぁまぁという感じ。
ただ、役者がみんなイイ。
彼の旧友でありながら、彼に認めてもらえなかったがために
一流の画家にはなれなかったビリーにドナルド・サザーランド。
修理できないものはない凄腕の若手職人ロバートにジム・スタージェス。
屋敷の向かいの店にいつもいる小人症の女性と、
意味ありげな登場人物に目を引かれます。
さて、この一言がネタバレになってしまいますが、
またしてもオッサンの妄想かと思いきや、ホンマもんの妄想。
ジェフリー・ラッシュ演じる、打ちひしがれたヴァージルが
プラハの“ナイト&デイ”にひとりたたずむラストシーンは
目にも心にも非常に残りました。これぞ映画。
愛情さえも完璧に偽れる。
こんな年齢になって初めて恋をしたのに騙されたと知ったら、そら放心。
それでも恋をしたほうがよかったか。