夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『50年後のボクたちは』

2017年10月04日 | 映画(か行)
『50年後のボクたちは』(原題:Tschick)
監督:ファティ・アキン
出演:トリスタン・ゲーベル,アナンド・バトビレグ,メルセデス・ミュラー,
   ウーヴェ・ボーム,アニャ・シュナイダー,ウド・ザメル他

ダンナが飲み会で晩ごはんをつくらなくてよい日、
仕事帰りに寄りやすい吹田か箕面か伊丹で映画を観たかったけれど、
シネコンで上映中の作品はすでに観たやつばっか。
塚口サンサン劇場で『ベイビー・ドライバー』のウーハー上映を観るか、
シネ・リーブル梅田で本作を観るかかなり悩み、こちらを選択。

ちなみにウーハー上映とは、重低音に特化した高性能スピーカーを使った上映。
めっさ面白かった『ベイビー・ドライバー』だから、
ウーハーで観たらどんだけ面白いだろうと気になっています。
やっぱりそっちにしておけばよかったと後悔する可能性もあったけれど、
いや、今回は、一度観たベイビーよりもこっちのボクたちにしておいてよかった。

原作はヴォルフガング・ヘルンドルフのヤングアダルト小説で、
『14歳、ぼくらの疾走』というタイトルで翻訳出版されています。
トルコ系ドイツ人のファティ・アキン監督が映画化。
『そして、私たちは愛に帰る』(2007)、『ソウル・キッチン』(2009)、
『トラブゾン狂騒曲 小さな村の大きなゴミ騒動』(2012)、
『消えた声が、その名を呼ぶ』(2014)と、どれもよかった監督。大好きです。

14歳の少年マイク。
プール付きの豪邸に住みながら、母親はアル中、父親は浮気中。
学校では変人扱いされ、いじめられこそしないものの、誰も近寄ってこない。
一番人気の美少女タチアナに憧れているが、話すらできないまま。

ある日、ロシアからの転校生チックがやってくる。
へんてこな髪型をして、中学生だというのに酒の臭いを漂わせている不良。
ロシアンマフィアの息子だという噂があり、みんなが敬遠。
一目見てマイクもチックを苦手だと思うが、運悪く隣の席になる。
時折ニヤけながら話しかけてくるチックのことが鬱陶しい。

明日から夏休みだという日。タチアナの家で誕生パーティーが開かれるらしい。
クラスメートの全員が招待状を受け取っている。マイクとチックを除いて。
招待されたらプレゼントしようと、タチアナの似顔絵を描いたのに。
悲しくなるからもう考えないようにして、自宅でゲームに没頭していたら、
ひょっこりとチックが現れる。どこかで盗んだオンボロ車、
水色のラーダ・ニーヴァ(ロシアのSUV)を運転して。

マイクの母親は断酒するために施設に入ったばかり。
その隙に父親は浮気相手と旅行。
2週間ひとりで過ごすはずだったマイクは、チックと共に旅に出るのだが……。

派手な出来事も演出もないけれど、とても愛おしい作品です。
はみ出し者の少年ふたりが無謀な旅に出て、
旅先ではプラハを目指すというホームレスの若い女性イザと出会う。
タチアナなんてイザと比べたら子どもだという台詞に
自分たちだって子どものくせにと可笑しくなります。
短い夏がまぶしく優しく、終始笑顔で観た作品。切なさもあって○。

しかしドライブのBGMがリチャード・クレイダーマンだというのがワラけてしゃあない。
カセットテープが伸びたら、「リチャードさん死んじゃった?」
ふと気になって調べたら、リチャードさん、まだ還暦を過ぎたところ。
アルバムはお出しになっていないようですが、
そらもう『渚のアデリーヌ』だけでじゅうぶん生きていけますよね。(^^;

欲をいえば、邦題は片仮名の「ボクたち」よりも平仮名の「ぼくたち」のほうが
本作には合っているように思います。
50年後、彼らが再会できますように。

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