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『ミス・シェパードをお手本に』

2017年01月17日 | 映画(ま行)
『ミス・シェパードをお手本に』(原題:The Lady in the Van)
監督:ニコラス・ハイトナー
出演:マギー・スミス,アレックス・ジェニングス,ジム・ブロードベント,
   フランシス・デ・ラ・トゥーア,ロジャー・アラム他

タダで観るものがついに底を突き、お金を払って観ることに。
年末30日、金曜日は1,000円で鑑賞できるシネ・リーブル梅田へ。

英国の劇作家アラン・ベネットが自身の体験談を脚本として執筆。
ニコラス・ハイトナー監督とは舞台でもタッグを組む盟友だそうです。
とってもいい作品でした。
こんなことが「ほぼ」本当にあったんだと思うとさらに楽しい。

ロンドン中心部にある町カムデン。
グロスター・クレセント通り23番地といえば、文化人が多く暮らす地区。
劇作家のアラン・ベネットは、この町にリーズナブルな価格で家を買う。
それなりに癖のある住民はいるだろうが、穏やかに過ごせそう。
そう思っていると、目の前をおんぼろのバンがのろのろと動いてゆく。
近隣の住民は一様に不安げな表情で、やがてバンが停まると安心したり溜息をついたり。

そのバンの持ち主はホームレスの老婦人、自称ミス・シェパードで、
居心地の良い場所を求めてたびたび移動するらしい。
住民の誰しも、自分の家の前には停まられたくはないのだが、
白羽の矢を立てられてしまった場合はそれなりに受け入れる。
ミス・シェパードが次に動く気を起こすまで、食べ物を差し入れたり、衣服を提供したり。
彼女は絶対に感謝の意など表さないのだけれども。

ある日、法の改正により、退去命令が下される。
路上駐車禁止となり、途方に暮れるミス・シェパード。
偏屈ばあさんとはいえ、放っておくのは気の毒だ。
アランは住む場所が決まるまでならということで、
自宅の敷地内にあるスペースを提供する。

ほんの1週間のつもりだったのに15年。
プライドが高く、頑固で自分勝手、わがままなミス・シェパードに振り回されつつも、
彼女の謎めいた人生に好奇心を抱かずにはいられない。
彼女と奇妙な共同生活を送りつづけて話のネタにしたいと思う自分と、
とっとと彼女を追い出してしまうべきだという自分がいて……。

イギリス英語が耳に心地よく響きます。
ミス・シェパード役のマギー・スミスが素晴らしいのはもちろんのこと、
お人好しのアランを演じるアレックス・ジェニングスが最高。
ミス・シェパードのもとに定期的に現れる怪しげな男にはジム・ブロードベント

いったいミス・シェパードの過去に何があったのか。
ちょっとしたミステリー仕立てにもなっていて最後まで飽きません。
また、アランの老いた母親が認知症を患うシーンもあり、
老いてゆくことについてしみじみと考える時間ももたらされます。

介護施設の職員にはいとも簡単に触らせるのに、
アランが手を貸そうとすると癇癪を起こすミス・シェパード。
その理由がわかるとき、涙が出ます。

世にも奇妙な、だけど後から考えれば幸せな体験。
これで1冊書いてしまうのですから、作家ってさすがです。
いや、これならもっと書けそうか。

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