実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

真正な登記名義の回復を原因とする登記

2010-12-20 13:46:10 | 最新判例
 最高裁のホームページに,平成22年12月16日付判決として,いわゆる真正な登記名義の回復を原因とする登記請求を認めない判例が掲載された。

 事案を単純化すると,甲から乙への贈与,乙から丙への相続があったが,登記がまだ甲に残っている場合に,丙から甲への直接の所有権移転登記を求める訴訟で,判例は,真正な登記名義の回復を原因とする登記請求を否定したものであり,実態を反映した甲から乙への贈与の登記請求を認めて,その後相続の登記をすればよいというのである。
 この判例は,抽象論としては,甲から乙への所有権移転の原因,乙から丙への所有権移転の原因を特定することなく,順次所有権が移転した場合一般事例をもってこのような判断をしているので,売買が続いた場合でも同様であろう。

 当たり前と言えば当たり前の判決に見える。ただ,実務では真正な登記名義の回復を原因とする登記請求訴訟は,かなり便宜的に使われていたような気がしていたので,本件最高裁判例は,実態を忠実に反映させることが技術的に不可能な登記請求の場合に限って,真正な登記名義の回復を原因とする登記請求権を認めるという立場をとろうとしているだろうか。

 最新判例の簡単な紹介でした。

コメントを投稿