実務家弁護士の法解釈のギモン

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仮差押えと法定地上権(3)

2017-02-09 11:26:59 | 最新判例
 この問題を理解するには、そもそも、仮差押えの効力はどういう効力か。私は、これが大問題だと思っている。

 通常は、仮差押えが先行し、その後に本差押えをする場合、仮差押えから本差押えの「移行」という言葉を使い、いかにも仮差押えの効力が本差押えに引き継がれるイメージの言葉を使う。
 ところが、本差押えに引き継がれるべき仮差押えの効力については、実は民事保全法には何も規定していないのである。仮処分の効力については、一定の類型化された仮処分について、民事保全法の58条以下でその効力を個別に規定している。仮処分の効力については一定の範囲で規定があるのに、仮差押えの効力については、この種の規定が民事保全法には存在しないのである。実は、私は、このことが昔から不思議でならなかった。

 ただし、仮差押えの効力について、どこにも何も規定がないのかというと、必ずしもそうではなく、民事執行法の方に規定されている。不動産に対する仮差押えで、仮差押えに遅れる処分との関係で効力を規定しているのが、民事執行法59条2項、3項であり、要は、仮差押えに対抗できない不動産の権利の取得や仮処分はその効力を失う。また、仮差押えに遅れて登記された担保権者の配当権について規定したのが、同法87条2項であり、仮登記に遅れる担保権者は、仮差押債権者が本訴で敗訴し、または仮差押えの効力が失ったときに初めて配当が受けられる。
 87条2項の規定は、59条2項、3項を前提としていると考えられるので、59条2項、3項が重要となってくるが、この効力は、差押えと並列的に規定されていることからも分かるように、差押えの対抗力と同一である。おそらく、仮差押えの処分禁止効的な効力は、この規定ですべて賄われていると考えているのであろう。
 だからこそ、民事保全法には仮差押えの効力は規定されていないのだと思う。

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