実務家弁護士の法解釈のギモン

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改正相続法-特別受益者の相続分と生前贈与に対する遺留分侵害額請求(7)

2019-07-03 13:10:52 | 家族法
 あくまでも個人的な感想に過ぎないが、具体的相続分を算定するに当たっては、特別受益の持ち戻し計算としていくらでも過去に遡って生計の資本たる生前贈与を問題とされる。そして、具体的な遺留分侵害額を算定する際には、遺言の内容が100%の包括遺贈でない限り、どうせ具体的相続分を考慮せざるを得ないのである。そうである以上、遺留分算定の基礎財産たる相続人に対する生前贈与も期限を区切る必要はなかったのではないかという気がしてならない。むしろ、期限を区切るのであれば、具体的相続分を算定する際の特別受益も期限を合わせるように区切った方がよかったのではないか。ただし、その場合に、過去10年では短すぎる。

 私のイメージからすると、死亡時からの逆算で区切るのではなく、生前贈与が問題となるのは、たいがい第一順位の子供であるから、子供の年齢で区切る方がいいような気がする。例えば、子供が20歳以後にされた生前贈与は特別受益に算定し、遺留分の算定の基礎財産と考えるという形の方が良さそうな気がしている。なぜなら、当然であるが、年長の子は年少の子よりもはやく大きくなるので、生計の資本たる贈与が早くされやすいのではないかと推測するが、そうすると、逆算方式だと年長の子に有利に働いてしまうからである。

 相続人に対する贈与がなされたときの遺留分は、今後だいぶ様子が変わってくるような気がする。
 その改正相続法も、この7月からついに本体は施行となった。どのような運用になるのだろう。