常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

岩木山

2023年09月30日 | 登山
岩木山神社の鳥居の真後ろに聳えるのは、岩木山である。津軽の人々は、旧暦の8月1日、お山参詣を行った。3日間をかけて、麓の神社から山頂の奥宮で朔日の日の出を拝んだ。太宰治は、『津軽』でこの日の様子を書いている。
「毎年陰暦7月28日から8月1日に到る三日間、津軽の霊峰岩木山の山頂奥宮におけるお祭りに参詣する人、数万、参詣の行き帰り踊りながらこの町を通過し、まちは殷賑を極める」

白装束に身を包んだ参拝者たちが、登山囃しの響くなか、「サイギ、サイギ、ドッコイサイギ、オヤマニハッダイ、コンゴウドウサ」と大合唱しながら、山道の参道を登った。この合唱の意味は、深田久弥によると「懺悔、懺悔、六根清浄、金剛童子」が訛ったものと解説している。ここで日の出を仰ぎ、山を降りてから麓の街では大酒盛りとなり、町をあげての五穀豊穣を祈る祭りとなった。

烏賀陽夫妻の『ゆっくり山旅』の「なつかしいやま」の第一項は岩木山である。夫妻はバスで8合目まで登り、そこからリフトで9合目鳥海噴火口から、岩場を頂上に登っている。途中行き会った神社からの表参道の百沢登拝路の様子が語られている。「七曲り急坂、焼止り、枯れた広い沢は霧が出ると道を間違え安い、雪渓が残る難路」で、このバス道ができてからは、8合目から登る人が多いようだ。

我々の一行は、やはり8合目まで、車でスカイラインを登り8合目からの登山となった。朝方まで雨が降ったらしく、濡れた道であったが晴れている。だが、高度を上げると、山には雲が残り、深い霧であった。(続く)



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月山の秋

2023年09月26日 | 登山
本当の秋に会いたいなら、月山に登るという手がある。昨日、涼しい朝であったが、月山の姥ケ岳に登った。リフトまでの林道は、風景はまだ秋は感じられない。長袖のシャツに、薄いジャケット。リフトに乗るとこれでも吹く風が冷たい。あの、猛暑の下界の記憶は高度を上げるとともにうすらいでいく。去年の秋の月山が記憶によみがえる。あの鮮やかな紅葉はまだだが、すでに姥ケ岳では草紅葉が始まっていた。

山中では、先取りして季節は進む。夏山リフトは10月15日に営業を終える。この三週間で、紅葉は全山を染め、初雪から初冠雪へ季節が一気に進む。それだけに、少し目を放すと、あの見事な紅葉は散り果てて、山は眠るような冬景色へと変貌する。

姥ケ岳の山頂までおよそ40分。木道や階段状に石を敷き詰めた山道である。秋を探しに、多くの人々が登っている。老若男女、幅広い年齢層だ。最近、低山を楽しむ人たちが急増している。我々のように足が老化して低山を余儀なくされる人のほか、初心者であっっても気軽に取りつけるのが低山である。山の楽しみ方も、これからさまざまな変貌を遂げていくに違いない。天気は晴れているが、頂上では風が強い。牛首から月山への美しい稜線を見ながらのんびりしたいのだが、休風を避けるように下山。


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秋の日

2023年09月24日 | 日記
昨日からやっと秋が来た感じだ。タオルケットだけでは、朝方寒い気がする。眠りが深くなった。エアコンはつける必要もない。栗の収穫がニュースになっている。もう20年も前だが、山の栗畑を買った知人がいた。普通車がやっと通れるような山道の先に、栗林があった。その知人は親切で、栗の毬が風に吹かれて落ちるようになると、その栗林に誘ってくれた。林の中にたたずんでいると、あっちでポタン、こっちでポタンと、栗の実が見えている毬が落ちる。それを拾うだけで、すぐに籠いっぱいの栗が拾えた。

鳴く虫をあらわに見つつ栗拾う 水原秋桜子

先日、ブックオフで木田元の『詩歌遍歴』を買ってきた。そのなかに珍しい詩が紹介されている。リルケの「秋の日」だ。やっと大陸からの移動性高気圧に日本全体が秋日和になった日に、この珍しい詩を読むことになるとは。何か不思議な因果を感じる。

 秋の日 リルケ

主よ 秋です 夏は偉大でした
あなたの印影を日時計のうえにお置き下さい
そして平野に風をお放ち下さい

最後の果実にみちることを命じ
彼らになお二日ばかり 南国の日ざしお与え下さい
彼らうながして円熟させ 最後の
甘い汁を重たい葡萄の房にお入れ下さい

いま 家のない者は もはや家を建てることはありません
いま 独りでいる者は 永く孤独にとどまるでしょう
夜も眠られず 書を読み 長い手紙を書くでしょう
そして並木道を あちらこちら
落着きもなくさまよっているでしょう 落葉が舞い散るときに

この夏の名残りに、モモをたくさん食べた。ブドウも知人からいただいて、じっくりと味わった。異常な暑さであったが、秋の日は、おいしい果実に恵まれる。リンゴ、ナシ。果物ではないが、サツマイモやクリなど、味覚の秋は始まったばかりだ。
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コスモス

2023年09月21日 | 日記
今年、秋の花が淋しい。いつもは、どこもかしこもと言っていいほど、シュウメイギクが咲いていたが、今年はどこの花木も縮こまって、花木も花も秋草のなかに隠れるように咲いている。コスモスの花も、親水公園などでは、競って咲いたいあたが、今年はさっぱり目立たない。外来種が、日本の空き地を独り占めするかのようであったが、今年は散歩で目にすることすら珍しいものになってしまった。せめて、富士正晴の詩を読みながら、秋の日が身近になることを祈りたい。

虫の音が聞かれなくなった
コスモスの花がくたびれはじめた
水が澄んで 風が梢を鳴らして
何にこころはせきたてられるのか
烏の枕の実が朱になってゆれ
この世のものではない灯のようだ
山椒の実の赤は小さくて硬く
クコの実は和らいで可愛いい
そのような赤いものを
まだ残る緑のなかに眺めて歩く
華やかな季節はもう終わり
何やら沈潜と悔恨に責められるごとき
十一月 赤が厳しい (富士正晴)

この詩に詠まれているような秋を探すのはもはや難しくなった。しかし、まだまだ秋の気配は健在だ。足を動かして、山中に咲くリンドウにも会うことができる。無くなったものを嘆くより、足を動かして、日本の秋を積極てきに探そう。
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シオンの咲くころ

2023年09月19日 | 読書
本棚から整理すべき本を、一冊、また一冊と取り出している。もう読むことはないな思う本にも、過去の記憶が体内の深いところで眠っていることがある。ちょっと、ページを繰ってみると、そこのは思いもよらない宝石のような記憶がよみがえってくることがある。シオンが咲いて、いよいよ秋が来たな、と思う日の午後であった。この日、手に取ったのは岩波文庫、ラム『エリア随筆』。本の帯に岩波文庫創刊60周年記念リクエスト復刊と大書されている。

ラムがイギリスの随筆家であることはつとに知られている。ラムについて、その人となりをチャットjtpに聞いてみた。ラムはロンドで1782年に生まれ、1834年に52年の生涯を閉じている。クライスト・ホスピタル校に学び在学中に、著名な詩人と親交を結んでいる。卒業後は南海会社から東インド会社に転職、30年もの長い期間勤めている。恩給をもらって退職したというが、ほぼ生涯をこの貿易会社に勤めていたことになる。エリア随筆は、仕事をしながら書いたエッセイ男である。ラストエッセイとして1833年の執筆されたものがあるから、書き始めて10年、死の前年まで書き継いだものだ。

何故、自分の本棚に、この一冊があるのか。思い返せば、40年も前に参加していた読書会がこの本を買うことになった動機と思われる。ビブリアの会と名付けられていた。会員は主に、高校の先生方であった。一時期のテーマがシェイクスピアであった。ラムはシェイクスピアを敬愛し、『シェイクスピア物語』という本も書いている。ページを繰ると、「私の初めての芝居見物」という一項がある。ラムが6歳から7歳ころ、親に連れられて芝居見物に行った回想が書かれている。ラムが行った小屋は、舞台と土間、そして土間に被さるようにのびる桟敷。そこには高貴な、ご婦人方が大勢いた。芝居の始まるのを、期待をこめて待つ少年の姿が描かれている。

「ついにオーケストラの光明があがると、あの「美しい曙の女神よ」との声がきこえる。鐘が一度響き渡った。もう一度それは鳴らなければならない。待ち遠しくてたまらなくて、私はもう思い切ったというようにして、目を閉じ母の膝の上に身を伏せてしまった。すると二度目のが鳴った。幕が上げられた。(中略)するとそこに古代のペルシャの宮廷があらわれたのである。かくして過去の光景の中に入るを許されたのであった。」

ラムは芝居でシェイクスピア劇も見たに違いない。その頃、私はテレビで流れるシェイクスピアの映画を何度見たことか。劇中に出てくる役者の息づかい、荒々しい言葉。役者の演じる悩みは、自分の悩みにつながってきた。ラムの子どものころの芝居体験が、当時テレビのなかで共有できた。いま、「寅さん」シリーズもこんな体験と重なって見えてくる。
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