常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

七月

2022年07月01日 | #獅子文六#どぶろく#残暑
今日から7月。すでに、6月に炎暑がやってきたので、夏は中ばを過ぎたような気がする。朝、飛び込んできたビッグニュース。孫の出産、区切りの日に曾孫の誕生である。7月1日と言えば、海開きに山開き。大自然に触れる日だ。この日は山形新幹線の開通記念日である。開通してから30年が経っている。その他、安全の日や童謡の日など、多彩な記念日がたくさんある。スモークツリーのモフモフの花が青空のもとで眩しい。最近、この木を庭に植える家が増えているような気がする。

七月のこゑ白雲が蜂起せり 千代田葛彦

大分以前になるが、このブログで獅子文六の短編、『赤井鼻雄』を取り上げたことがある。農地改革で、土地を失った地主の息子が、辛ナンバンを肴にどぶろくを飲み、鼻が赤くなる話だ。獅子のユーモア小説の真髄を見せらた気がした。先日買った戸板康二の『あの人この人』を読んでいると、獅子文六は岩田豊雄であり、小説の書く時は獅子文六をペンネームとし、本業の演劇の演出の方は本名を通していた。獅子文六は、四四、十六をもじったという説があるが、文豪の一つ上の十六だ、ということが書いてある。

戸板が岩田に聞かれた。最近、面白い演劇はないかという質問だが、あれこれ考えて、戸板が推薦したのは、井上ひさしが脚本を書いた「日本人のヘソ」であった。女優が田舎から出てきて、ソープランドの女になるという話であった。二人は恵比寿の出来立ての舞台でこの演劇を見た。演出は早野寿郎で、なかなか良い出来であった。岩田は舞台が気に入ったらしく、終了後に挨拶に来た井上ひさしに「ヤア」と微笑して握手の手を差し伸べた。井上ひさしにあるユーモアのセンスが、岩田豊雄という演出家に通じるものがあったのかも知れない。
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運命

2019年09月08日 | #獅子文六#どぶろく#残暑

ベランダから見る空は、真っ青な夏空。今日の気温は35℃を超えるらしい。つい2日前まで、30℃を切る日が続いて、いよいよ秋と思っていたらこの暑さ。二つ続いて北上する台風が、この暑さをもたらしたらしい。今日はここの住人達による、火災消火訓練、市長選挙の投票日である。朝の畑いじりと、暑さのなかでも忙しい日程ではある。

朝方まで、獅子文六の『とうがらし』を読んだ。赤井鼻吉がこの小説の主人公だ。この名は本名でないのだが、彼が終戦という運命で、郡内一の大地主から農地改革によって一町二反の農家へと転落した。しかし、習慣になっていた朝から酒を飲むということはその後も改められず、どぶろくを飲むようになった。しかし、どうにも我慢ならないのは、どぶろくの悪臭と酔い心地の悪さだ。そこで思いついたのは、辛いとうがらしを肴にすることであった。

「最初、口へ入れた時には、舌に火がついたかと思った。それを消すために、タヌキ(注:どぶろく)を大きく一飲みした。いつもと違った味がしたが、一向、うまいことはなかった。五分もたたぬうちに、常ならぬ変化が起きた。ポーッと、酔い心地が始まってきたのである。」

それ以来鼻吉は毎朝、とうがらしを肴にどぶろくを飲む生活を続けた。始めた商売にもことごとく失敗した。それを見た妻は、11代目の赤井家の当主の姿を見て涙にくれた。鼻吉の本名は藤吉なのだが、この習慣が藤吉の鼻に変化をもたらした。鼻先だけがルージュを塗ったように赤くなったのである。かっての小作人がつけたあだ名が、赤井鼻吉であった。

先日、山小屋の談話室で、ビールの時間に昔話で盛り上がった。やはり、戦後まもなく、農家ではどこの家でもどぶろくを作って飲んでいた。小学校くらいの子どものころから、家のどぶろくに親しみ、酒のみになったという自分の経験も話したので、偶然に読んだ獅子文六の小説が面白かった。

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