常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

アマビエ

2020年05月07日 | 日記
山形の老舗の菓子舗に佐藤松兵衛商店がある。ここで売る「のし梅」は、梅をすり潰して寒天に練り込んだものを竹皮に挟んだ伝統の菓子である。コロナ禍で売り上げが減少するなかアマビエをかたどった和菓子を作りあげた。この菓子がSNSで話題となり、菓子屋さんでは収入減の助け舟になっているという。

コロナで日本中が自粛生活をおくるなかアマビエをよく耳にするようになった。閉館中の水族館ではオタリアが口に筆を咥えてアマビエを描いてるシーンがツイッターで発信されている。そもそもアマビエとは何か。江戸の瓦版が伝えた海の妖怪である。海中から光り輝く姿を現した。半人、半魚の妖怪で、これからこの国には6年間豊作が続くが、疫病が流行る。自分の姿を絵に写し、人々に見せると疫病が退散する、という託宣をして海に姿を消した、という。水木しげるのゲゲゲの鬼太郎鬼太郎にも登場する妖怪で、コロナという疫病の流行で見直されたために注目を集めているのであろうか。

人々が困難に直面して、妖怪の力にもすがろうとするのが人間の本質なのであろうか。日本には不思議な奇談や怪異の話が長く語り伝えられてきた。ラフカジオ・ハーンの『怪談』に「十六桜」という怪異譚がある。

伊予の国に樹齢数百年という桜の老樹があった。その家の主人は、その桜の世話しながら子にも先立たれ、春にその桜を見るのが生き甲斐であった。ある年の春、老樹は花を咲かせることもなく枯れ死してしまった。主人の嘆きはひと方ではない。もう生き甲斐すらなくなったのだ。主人はあくる年の正月16日、枯れた桜の前に、切腹の準備をして、桜に話しかけた。「お願いでございます。いま一度花を咲かせてください。あなたの身代わりになって私が死にまする。」主人は、侍の礼に則り、腹を切って果てた。するとどうであろう、主人の霊は桜に乗りうつり、寒中のさなかに花をさかせた。それからというもの、毎年正月の十六日になると、桜は花を咲かせた。
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