母の耳が少しずつ聞こえにくくなってきて
日々、小さなさざ波が立ち始めている。
90歳になった頃から
「音は聞こえるのに何を言っているのかよく分からない。」と言いだした。
何度か耳鼻科にも行き、補聴器を勧められ、
シーメンスのかなり高額な補聴器を買ったが、
頭が痛くて、耳に入れるのがどうしても嫌だと言い、
数回、調整に通ったものの、
結局使わないまましばらくしてから 捨てた、と言った。
私は驚いて、もったいない、もしかしたら、
もっと耳が悪くなったら使えるようになるかもしれない
とそっと隠して取って置いた。
もっとも、私は隠していたことも最近まで忘れていたが・・・
孫達も心配して、それぞれ良いと思われる補聴器を
取り寄せてくれ、さらに、大阪に住む甥からも
送られてきたが、母の気に入る物はなかった。
そして、先日、テレビで広告されていた補聴器が
何となく気になって、
1週間以内なら返品も出来るとのことだったので
早速取り寄せたが、結局2~3日付けただけで、
何か仕事をしようとすると前に落ちてしまいそうになるし、
頭が痛くて長く付けるのはいやなので、
すぐに返品してほしいと言った。
以前より話も聞こえているようだし、
もう少し続けて欲しいと思うのだが
一度嫌だと思ったら、
我慢して慣れるまで使うことはむずかしいらしい。
どこかに母に合う物はないのだろうか。
・・・仕方がない。
目を見て、ゆっくり、しっかり声を張って・・・
最後には紙と鉛筆がある。
やがて自分も行く道・・・辛いだろうな