まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

木村純子先生講演会 Q&A

2014-01-09 22:06:22 | 教育のエチカ
昨日は木村純子先生による講演会 「教育にコーチングを取り入れる」 が開催されました。
私の授業を現在受講中の人ばかりでなく、白石豊先生から聞きつけてきた体育の学生さんたちや、
大学の先生方、私のブログを見て来てくださった福大以外の皆さまなど、
新年始まったばかりのこの時期にわざわざご参加いただき本当にありがとうございました
木村先生の講演は私の期待したとおりの内容で、
コーチングの基本的考え方を学べると同時に、
実際にコーチングのスキルをワークショップ形式で試してみて、
その効果を体感することのできる、とても充実した2時間でした。
木村先生は講演開始前に参加者ひとりひとりに話しかけ、
どんな動機でこの講演会にやってきたのかを確かめるなど、
プロのコーチ、プロのセミナー講師はどう振る舞うのかを実際に見せてくださってもいました。
みんな、いろいろな学びがあったことと思います。
講演時間が長引いてしまったにもかかわらず、皆さんいつまでも会場に留まって、
感想用紙にびっしり今日の学びについて書いてくださっていました。
本当にありがとうございます。
感想用紙の内容はまた後日ご紹介することにします。
感想用紙のなかで木村先生に質問してくださった方が何人かいらっしゃいました。
その質問に対し個別に返すのではなく、会に参加してくださった皆さまとシェアしたいとのことで、
私のブログ上に回答をアップしてほしいとのご依頼をいただきましたので、
ここに掲載することにいたします。
素晴らしい講演をしていただいたばかりでなく、
たいへん丁重かつ詳細な回答文を用意してくださったことに対して、
木村先生には心から感謝申し上げます。
以下が木村先生から届けられた回答文です。


Q-1.コーチングの技術は、相手ではなく自分を律するためにも応用できるのでしょうか?

仰るとおりです。
自分で自分のことをコーチすることを、”セルフコーチング” といいます。

自分の発想を転換したり、視野を広げたりして、
効果的に課題解決したり、夢の実現にむかって目標達成したりと
自分で自分の人生のリーダーシップをとっていくために、とても効果的な技術として活用できます。

初歩的なキーワードと手法のいくつかを簡単に記します。

キーワード:その1
事実 (客観的な出来事) と解釈 (事実をどのように受け止めたのかという意味付け) を区別する

誰かと行き違いが生じた時、自分が感情的になっているとき、
・客観的で評価を加えていない「事実」は何か?
・その事実を自分はどう解釈したのか?  そのように解釈したのはなぜか?
・相手はどう解釈したのか? そのように相手が解釈したのはなぜか?

といった質問を自分に投げかけてみると、新しい展開がうまれるのではないでしょうか?

キーワード:その2
他責 (うまくいかないことの原因を、他者や環境に原因があると受け止める姿勢) から
自責 (うまくいかないことを解決したり、生産性をあげたりするために、
自分から能動的に働きかけるように責任を引き寄せる姿勢) への転換

何かネガティブな事態にみまわれたときに、私たちはつい
・誰が悪いのか?
・どうしてこんなことが起きてしまったのか?
という質問を自分に投げかけて、犯人探しをしたり、協力的でない相手を攻めたり、
もう済んでしまったことを後悔したりすることにエネルギーを費やしがちです。

「過去と他人は変えられない」 と言いますね。

変えることができるのは、「今の自分の選択と行動」 です。
今ここで新しい選択をして行動に移せば、その先には違った未来が展開する可能性がうまれます。

うまくいかないことを、他者や環境のせいにすることで、
表面的には自分を慰め、守ることができますが、
その不愉快な状態は変化せずにずっとそこにあり続けることでしょう。

質問の焦点を変えてみてください。

・事態を打開するために、私には何ができるのか? 

少し違った展開がうまれる可能性が開けるかもしれません。

キーワード:その3
コントロールできるものと、できないものを区別して、コントロールできることに集中する

相手がこちらの思い通りに動いてくれないときに、イライラしたり、怒りを感じたり、
悲しくなったりすることがありませんか?
相手は、あなたのロボットではありません。
人はコントロール出来ないものの最たるものですね(^^)

環境要因にも、コントロールできるものと、社会制度や集団のルール、組織の予算枠などのように、
自分一人の働きかけではどうしようもないものもあります。

まず、「この状況下で、自分が影響をおよぼせる (コントロールできる) ことはなにか?」
と問いかけてみるとそこから何を考えれば打開策が広がるかが見えてくるかもしれません。

以上の他にも
・目的を明確にする  「何のために?」 と自分に問いかけてみるとか
・目標(理想状態)をできるだけ具体化する
  「数値で表現すると?」 「いつまでに?」 などの問いかけがありますね。
あとは、
・現実と理想状態のギャップを明確にする
・そのギャップを埋めるために、どんなアクションが必要かを明確にする
・行動を促進する
・すでにできていることと、まだ手がついていないことを定期的に検証する
といった、PDCAのサイクルを自分の人生の目標達成に活用するために
自分自身に色々な質問を投げかけるていくと、素晴らしいセルフコーチングになります。

セルフ・コーチングと、他者を支援するコーチングはパラレルに上達します。

自分のためにも、相手のためにも、ぜひコーチングを学んでみてください。


Q-2.限られた時間の中で、効果的にコーチングをするためのコツのようなものはありますか?

はい、ありますよ〜(^^)
例えば、一般的なのはGROWモデル、コーチングフローとよばれるようなものです。

でもこの通りにやろうとしても
なかなかうまくいかないのが現実です。

そこで、もっとシンプルで実践的な手法をご紹介します。
といっても、これを活用できるように習得するには
すこし練習が必要ですが。。。

コーチングの会話を通常の会話から区別する最も大きな違いは、
コーチングの会話には目的と目標、そして時間制限があるということです。

会話を始める前に、まず”入り口” をしっかり管理してください。
・どのくらいの時間をこの会話に費やすのか?
・今、何のためにこの会話をするのか?
・会話が終わった時には何が明確になっている必要があるのか?
といったことを、会話をスタートする前に、コーチのリードで相手と合意してから始めます。

話し手と聞き手の両者が共通の理解をもって時間を共有することになるので
会話が目的からそれた時にはすぐに修正が可能ですし、
だらだらと終わり無く会話が続くことはありません。

ここまでが会話の入り口。
そして、会話がはじまったら、コーチは、徹底的に傾聴します。

傾聴しながら、自分の直感にしたがって、フィードバックしたり、
相手の考えを促進するために質問したりするのですが
トータルの時間のなかで、コーチが口を開くのは全体の20%くらいまでに留めましょう。

そして、終わりの時間が近づいてきたら、しっかり出口を管理します。
「ここまでお話しして、どんなことが明確になりましたか?」 と尋ねてみてください。
相手が会話の全体を俯瞰的に振り返って、自分で気づきを整理する環境を提供します。

すると、あら、びっくり。

これまでの会話には現れていなかったことが、言語化され、
相手が自然と行動したい気持ちになっていたりすることが多いです。

上級になると、この自然な傾聴と質問で
相手の現状、理想としていること、現状と理想状態のギャップ、
ギャップをうめるためのリソースや行動計画、全体の振り返りなどを
自由に扱うことができるようになります。

コーチングは3分や5分といったとても短い時間でもできますが、
通常は30分〜60分くらいの枠で時間を決めて会話をもちます。
短くても長くても、コーチが会話の流れをコントロールし、
きちんと目的をもった傾聴ができる技術をもっていることが必須です。


Q-3.入門にふさわしい参考図書を教えて下さい。

以下、最初の 2冊がビジネス系、あとの2冊が教育系です。

「この1冊ですべてわかる コーチングの基本」 (日本実業出版社 コー チ・エィ著 鈴木義幸監修)
「コーチングマネジメント」 (ディスカバー 伊藤守著)
「やってみよう!コーチング」 (本の森出版 石川尚子著)
「教師のための子どもが動く!コーチング50」 (金子書房 神谷和宏著)


以上です。
木村先生、本当にありがとうございました。


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2 コメント

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Unknown (一受講生)
2014-01-12 09:33:21
自分のいろいろな感情がからみついていることは言葉にすることが出来ず、受け売り言葉は身にそぐわず、すっかり消化されて客観的な事象と捉え直され多少改変されたものが、かろうじて自分からも離れず相手にも通じるものとして表現できることなのかもしれないなぁ、ということを課題を考えながら思いました。

また言っている内容は同じでも、言い方ひとつ、例えばティーチングかコーチングかで、反発・拒否になるか創造・発展になるか、というほど違ってしまうこともあるかもしれない、と思いました。

日常に具体的にすぐに応用することは難しいですが、教えていただいたことは、忘れずに頭においておきたいと思います。

ありがとうございました。
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コミュニケーションの勉強 (まさおさま)
2014-01-15 19:18:11
一受講生さん、コメントありがとうございました。
いろいろと気づきをシェアしていただき光栄です。
同じことをどう言うかという、ものの言い方ってけっこう大事ですよね。
つい口を衝いて話してしまっているので、あらかじめ言葉を選ぶのって難しいですが…。
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