まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

Q.倫理学者にはどうやったらなれますか?

2008-10-14 22:41:01 | 哲学・倫理学ファック
この質問もけっこうよくされます。
すごーく細かいこんな質問もありました。
「Q.倫理学の先生になるにはどんな学校で何科で学ぶのか。
 そこでは倫理学の先生になる以外にはどんな職業に就いて社会に出ていくのか。」
倫理学者になるのと倫理学の先生になるのでは、
これまた本当なら答え方がちょっと変わってくるんですが、
まあこれらは一括して答えてしまいましょう。

たぶんこういう質問をしてくれた人は、
自分が倫理学者や倫理学の先生になりたいというわけではないと思うので、
これを聞いたからといって、自分がその道に進んでみたいわけではないのでしょう。
それでもこういうことを聞きたくなるというのは、
やはりそれぐらい倫理学の先生というのは特殊な存在というか、
「こいつら何者?」という奇異の念がぬぐいがたいのでしょうね。

まずは細かい質問のほうから。
だいたい皆さん、文学部の哲学科出身の方が多いようです。
私は外語大のロシヤ語学科というまったく関係ないところの出身で、私のように、
学部時代はあんまり哲学や倫理学と関係ないことを学んでいたという人もいますが、
そういう人でも、大学院は人文科学研究科等の哲学専攻に進む人がほとんどです。
大学院は必ず出なきゃならないというわけではないかもしれませんが、
やはり大学院で専門的に原書を使って哲学・倫理学を読むという訓練を積み、
さらにゼミの先生や先輩から論文を書くための指導を受けてこないと、
なかなかこの道に進むのは難しいだろうと思います。
(なお、哲学と倫理学の違いについては別の機会に書きます)
というわけでさしあたりの答えは、

A-1.まずは大学院の哲学専攻で学んでください。

です。
では、こういうところ出身の人でこの道に進まなかった人はどういう職に就くのか?

A-2.ありとあらゆる職業に就いています。

よく聞くのは出版関係とか教育関係 (高校や塾の先生) とかですが、
IT関係に進む人もけっこういますし、とにかくいろいろです。
日本では大学 (や大学院) で哲学を学んだというと変人を見るような目で見られがちですが、
欧米では哲学を学んだ人は思考の訓練を積んだ人とみなされ、
実業界においても一目置かれたいへん重宝されています。
「哲学博士号」をもっているというのはとても栄誉のあることとされています。
(これは実は別の問題も絡んでいます。それもまた別の機会に。)
日本ではそういう特別扱いは受けられませんが、
それでも哲学科の卒業生や大学院修了生はいろいろな分野で活躍されているようです。

さて、倫理学者になりたい場合、大学院で学んだ後どうするのか?

A-3.倫理学の論文を書いて発表してください。

たぶんこれで倫理学者になれるはずです。
倫理学者あるいは倫理学の研究者になるだけでいいのならこれで十分でしょう。
できれば学会などに入って、学会誌に自分の論文が載っかるとパーフェクトですが、
これには若干の競争などもあって少しハードルが高いですし、
学会誌に載らないとダメかというとそんなこともないので、
自分たちで作った同人誌に論文を載せてもいいし、
自費出版で本を出してもいいし、
とにかく論文を発表すれば、もう立派な倫理学研究者です。

そういう意味ではここまではわりと簡単にクリアできるでしょう。
しかし、ここから先は厳しいです。茨の道です。
どうやったら倫理学の先生になれるのでしょうか?

A-4.ただひたすら運です。

とにかく日本では哲学や倫理学の先生がどんどん減らされています。
そのわりに研究している大学院生やオーバードクターと呼ばれる人たちは、
相当たくさんいます。
ですので、大学の先生になるのはとてつもなく大変です。
とにかく公募に応募し続け、宝くじに当たるのを待つしかありません。
もちろん優れた論文を書いたり、できるだけたくさん論文を書くことによって
ほんの数%確率が高まるかもしれませんが、
ほとんど誤差のレベルというか、有意な差は生じないでしょう。
ひたすら運です。
したがって私はあまり人にこの道をお奨めすることはできません。

とにかく何でもいいから大学の先生になりたいんだという人には、
哲学や倫理学などよりも別の研究分野に進むことをお奨めします。
どの分野でも大学教員になるのは狭き門のようですが、
哲学・倫理学はとにかく最難関です。
可能なことなら避けて、日本政府ウケのするような、
最近流行りのオシャレでかつ金儲けに直結するような学問分野を選んだ方がいいでしょう。

いや、他の学問では絶対にイヤだ、
何が何でも哲学・倫理学を研究したいんだという人は、
一生宝くじが当たらないことも覚悟して、
哲学・倫理学研究とは別に手に職をつけて、
そこそこ食べていけるぐらいの収入をどこからか得るよう算段をしておくべきだと思います。
私は1999年第7の月に世界が滅びると信じていたので、
10年ちょっとくらいは何とか食っていけるだろうと思って、
この道に進む決心をしました。
それに塾でのアルバイトでそこそこの収入を得ていましたし、
最悪の場合は銀座か歌舞伎町でバーテンでもして稼いでいく覚悟もできていました。
だから、ドクターコース (博士課程) を受験する相談をしにいったとき、
恩師の先生からは 「就職はないよ」 と断言されましたが、
「あ、いいんです、ぼくは」 と即答したところ、
「そうかね。だったら受けたまえ」 と言っていただけました。
これぐらいの気持ちでないと、
コツコツ頑張っていればいつかは報われるだろう、なんていう甘い見通しでは、
とうてい頑張りきれないでしょう。

というわけで、倫理学者 (倫理学研究者) になる方法については、
かろうじて何とかお答えすることができるのですが、
倫理学の先生になる方法については 「答えはありません」 というのが答えです。
ちょっと最後は熱くなりすぎたかもしれませんが、
これだけは声を大にして言っておきたかったので、
またまた長いお答えになってしまいました。
もちろん皆さんはそんな道に進もうなんて思っていませんよね。
自分の人生設計をよく考えて、幸せなキャリアを築いていってください。

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