まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

Q.金縛りについてどう思いますか?

2011-06-01 18:06:56 | 哲学・倫理学ファック
もうとっくの昔に相馬の看護学校の授業は終わってしまったというのに、
哲学ファックにまだ全然答えきれていません。
たぶん看護学校のみんなは今頃実習に行っていて (多くの人は終末期実習かな?)、
私のブログなんて読んでるヒマはないでしょうが、
自己満足のためにも少しずつお答えできるときにお答えしておきましょう。

今回取り上げるのも哲学とは縁もゆかりもない質問です。
金縛りのことを私に聞いちゃいますか。
やはり心理学と混同してる人が多いんだろうなあ。
しかも、この代では初めてではないでしょうか、ダウンタウン・タイプの漠然とした質問です。
漠然とお答えしておくことにいたしましょう。

A.恐かったです。

うーん、こういう答え方でいいのかなあ?
どういう答えを期待されていたのでしょうか?
とにかく、私の経験談から始めると、私は子どもの頃ほぼ毎晩のように金縛りにあっていました。
下手するとちょこっとお昼寝したぐらいでも金縛りになっちゃいました。
他の人の金縛りがどんなものか知らないのですが、
私の場合は、寝ている部屋のまわりからなにかザワザワしたものがじわじわと近づいてきて、
自分は逃げたくてもまったく逃げられないし、何ひとつ身動きすら取れないという感じでした。
それはそれは恐かった覚えがあります。
一時期は寝るのが恐くて眠らないようにがんばったこともあったほどです。

いつ頃まで見ていたのでしょうか。
よく覚えていないけど、小学校高学年くらいまでだったかなあ。
その金縛りを卒業する間近の頃は、もういい加減金縛りに慣れてきていて、
金縛りが来ても、あ、またアレね、ハイハイ、どうせ身体動かないんでしょ、
さっと来てさっと終わっちゃってちょうだい、みたいな耐性ができていて、
そう思えるようになってしばらくしたら金縛りから卒業できました。

その後大人になってからごくたまーに金縛りになることがありましたが、
そのときは子どもの頃のとは違うタイプの金縛りでした。
昔見ていたような何かわけのわからないザワザワしたものではなく、
くっきりはっきりと悪霊やら妖怪みたいなものが布団の上に乗っかってきて、
私は重くてまったく身動きが取れず、そしてそいつらが、
直接私の脳に向かって呪いだか怨念みたいなもので攻撃をしかけてくるようになりました。
これに対抗するためには、脳にグッと力を入れ (そんなことができるのか?)、
敵の呪いに負けてしまわないよう、自分の脳波をガーッと出し続けていると、
なんとか敵の思念を押し返すことができて、そうやって勝利すると金縛りが解けて目が覚めるのです。
これが最近の私の金縛り撃退法ですね。
これは毎回必ずやり、必ず勝利しています。
もしも負けたら死んじゃうのでしょうか?
いや、けっしてそんなことはありません。
子どもの頃は負けっぱなしでしたけれども、それでどうということもなくこの歳まで生き延びています。
ただまあそうやって戦ったほうが早く金縛りが解けますので、
(といっても金縛りにあっているときはそんなことを考えているわけではありませんが)
最近では毎回この勝負を繰り返しているのです。

さて、「金縛りをどう思いますか?」 という問いは、
そういう金縛りの体験がはたして現実体験なのか脳内現象なのか、
ということを聞きたかったのかもしれませんね。
私は個人的にはそれは脳内現象、すなわち、たんなる夢だろうと思っていましたが、
17年前、福島大学に赴任してきたときビックリしてしまいました。
福島大学には金縛りの専門家がいたのですねぇ。
心理学の福田一彦先生です。
心理学者が金縛りを研究するということがもう驚きでした。
心理学者ですから、前に説明したように、科学的、実証的、理系的に実験によって、
金縛りのことを解明しようとされているのです。
で、その結論はどうか?
これは素人の私がテキトーな説明をしてしまうよりも、
福田先生ご本人のホームページをご覧になってみてください。
(ちなみに現在は、福田先生は東京の江戸川大学に移られています)
そこに簡潔にまとめられています。
どうやら夢とはちょっと違うけど、夢とよく似た睡眠時の現象のようです。

やっぱりそうでしたか。
だったらそんなにムリして毎回戦わなくてもいいんだなあ。
でも金縛りになるのは睡眠中だから、なかなか合理的思考を働かせるのは難しくて、
ついついヤツらと本気で戦っちゃうんだよなあ。
寝てる頭でも楽ちんに金縛りをやりすごせるような大人になりたいなあ。


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6 コメント

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ひさしぶり! (福田です。)
2011-08-19 18:20:16
「まさおさま」久し振りです。福田です。なんか福島が大変なことになってしまって、1年前に移籍したのだけど、なんか心理的に逃げてきた卑怯者的な感じで後ろめたさを感じています。福島には4月と5月に1回ずつ行ったのですが、土曜日や休日だったので、そんなにみんなに会うことはできませんでした。また行ったら遊んでください。
ホームページ引用ありがとう、ちょっと今江戸川大学のサーバーがダウン中なんですけどすぐ再開します。
返信する
ご無沙汰してます (まさおさま)
2011-08-19 20:07:25
福田先生、お久しぶりです。コメントありがとうございました。
今回の震災では多くの人が負い目を感じているらしいというのが私の仮説ですが、
福田先生のように震災とは何の関係もなく、ただたまたま大学を移っていただけなのに、
あたかも震災で逃げ出したかのような後ろめたさを感じてしまうのはなぜなのでしょうか?
心理学者の方々にぜひ研究していただきたいテーマだと思います。

看護学校の学生さんから、金縛りに関して質問されてしまったので、
福田先生のホームページに頼らざるをえませんでした。
看護学校とは別に、最近、夢について何本か記事を書きました。
http://blog.goo.ne.jp/masaoonohara/e/b7831829202a94d14c4c9650a3c2f1d3
http://blog.goo.ne.jp/masaoonohara/e/3a96f2f30d07f8cbf92ead2c483da117
夢とわかる夢については福田先生も研究していらっしゃるんではなかったでしたっけ?
ある方から 「明晰夢」 に関するコメントもいただいたんですが、
明晰夢についてもお詳しかったりしますか?
触覚 (=○○感) のある夢なんかについても研究されていたりするのですか?
夢関係でいろいろおうかがいしたいことがありますので、
福島にいらっしゃる際はぜひ事前にご連絡いただければと思います。
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さっそくお返事ありがとうございます。 (福田です。)
2011-08-20 08:17:35
小野原先生
いま、滋賀医大のほうに出張中(ホテルから・・・What a convenient world)なので、しかもすぐにホテル出て講義に行かなくてはならないので、明晰夢などについては、また書きます。
震災の後ろめたさですが、第三者的に(自分自身を)突き放してみると、これは、「うつ」でしょうね。震災のあとしばらくはテレビを見て、悲惨な状況に涙し、けなげな被災者の姿に涙し、ヒロイックな消防隊員の姿に涙し、泣いてばかりでした。自然と涙が頬をつたうような状況が続いていましたが、おそらくそれがうつ症状の始まりでしょう。抑うつには「罪責感」(世の中のすべての問題は自分の責任)という症状も含まれているので、たぶん震災の悲惨さを目撃しただけでも抑うつ症状のようなものがでて、それに伴って罪責感を感じているのではないでしょうか?小野原さんに聞かれて今回初めて自分自身のことを考えてみましたが、そういうことなのかなあと考えています。もちろん、僕の場合知り合いが多く福島の地に住んでいますので、やはり、そういう人たちに対するなんというか、申し訳なさ、自分の力のなさみたいなものを感じているのも事実ですが・・・。また、コメントします。これ以上やってると仕事に遅刻するから・・・。
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ありがとうございます (まさおさま)
2011-08-20 17:11:29
出張中のホテルで、もう出かけなければならないというときに、
詳しいレスをどうもありがとうございました。
明晰夢の話も期待してお待ち申し上げております。
「うつ」 だというのは、なるほどとっても納得です。
「罪責感」 というのも抑鬱症状のなかに含まれるのですね。
ただ、これはまだ実証的なデータがあるわけではないのですが (倫理学者に実証は無縁です)、
阪神大震災の時にはこれほど広範囲に 「うつ」 の症状が出たりはしなかったように思うのです。
大阪に住んでいた人も特に 「負い目」 や 「罪責感」 を感じたりすることはなかったそうですし。
このへんは今後ちょっと考えてみたいなあと思っているテーマです。
滋賀医大では学会なのでしょうか、集中講義or講演会なのでしょうか。
お帰りを首を長くしてお待ち申し上げております。
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I'M BACK! (福田です。)
2011-09-06 11:13:55
明晰夢のことでコメントすると言いながら、忙しさにかまけてそのままになってました。楽屋落ちで申し訳ないのだけど、平林秀美先生から仕事関係のメールをもらって、その中で、平林さんが小野原さんのブログをときどき読んでると書いてあって、「あっ!」と思いだしました。
「悪夢」と「性夢」の話、楽しく読ませてもらいました。それでは、そろそろ、学術的コメントを・・・。
まず、夢を見ているREM睡眠という状態では、脳の中の「扁桃体」という場所が強く興奮しています。扁桃体という場所は、情動(特に、恐怖や怒りなどの負の情動)と密接に関連する場所です。つまり、(多少の議論はありますが)夢には、悪夢がもともと多いのです。ですから、「夢を見る」ということは、「悪夢を見る」という事と同義とは言わないまでも、その確率がかなり高いということです。我々は毎晩夢を見ていますが、覚えていません。それはREM睡眠では、記憶の素材を使って夢を作る(つまり記憶のDecodeする)ことは、活発に行われますが、それを記憶する(つまり記憶をEncodeする)機能はうまく働いていないのだと考えられています。夢を覚えているのは、夢の最中や夢を見た直後に起きた場合です。実際、中途覚醒の多い人には夢をたくさん見るという人が多いのです。夢など見ないというのが、健康な眠りです。小野原さんの場合は、眠り自体が不健康なんでしょうね。そのころ、そしてたぶん今も、不規則な生活してるでしょう?それから、鬱の時に、入眠時レムという金縛り特有のREM睡眠も出やすくなりますので、ドイツ語が読めなくて落ち込んでいたなんてのも効いていたのかもしれません。金縛りもREM睡眠中に起きる現象ですが、睡眠が乱れているほど起きやすくなります。昼間に眠ったり、夜更かしして、明け方眠ったりなんてのは、典型です。小野原さんの昼寝してたら畳からモグラが出てきたなんてのは(明け方から午前中はREM睡眠自体が出やすいので)、昼寝の悪夢の典型でしょうね。
夢の中で夢だと気がつく、明晰夢(Lucid Dream)は、練習していると良く見られるようになるという事が知られています。これも小野原さんの場合にも良く当てはまりますね。金縛りも明晰夢もREM睡眠中の現象ですが、両者とも、普通の夢見の時のREM睡眠とは異なり、大量のアルファ波という脳波が出ていて、起きているのか寝ているのか分からないほどの脳の活性状態であることを表しています。つまり、普通の夢では、おかしなことが起きても変だとは思わないレベルの脳の活性レベルですが、明晰夢や金縛りでは、夢の内容がおかしいとか、実際に体が動かない(REMの神経機構で体の運動が抑制されます。普通の夢の場合、夢の中では走っていても実際の体が動いていないことは自覚できません。)という事を自覚できてしまう程の脳の活性状態にあるということです。
「触覚まである」という夢ですが、夢では全ての感覚が再現可能、というよりも、覚醒中には体験できないような「飛行感覚」なんてのも含めてリアルに体験できます。だって、起きているときだって、全て「感覚器」や「脳」というフィルターを通して、我々は外界を認識してるんですもの、脳が働いてりゃ、似たような体験は可能です。夢の中でオシッコをして、実際におねしょはしません。こどもの夜尿も夢とは全く関係ない現象です。
夢か現実か分からない。我々は現実を認識出来ているのか、みたいな認識論的な議論は、面白くはありますが、だいたい、それは極論でして、我々は、我々の感覚器や脳の機能が許す範囲で外界を認識できます。ただし、脳に都合の良いような解釈をしてしまったり、脳には、意味のないものにも一生懸命意味を探す習性がありますので、心霊写真のような実際には無いものも「見てしまう」ことが起きてきます。
極端な話、最近話題の放射線や紫外線も含めていわゆる電磁波の一種ですが、我々に「見える」のは、約380から780ナノメータの波長のものを「光」として感じ取ることが可能ですが、それより短波長のものも長波長のものも「見る」事はできません。
うちの学科にも認識論というか哲学担当の先生もいて議論としては面白いのですが、夢を現実と区別できないから、現実も認識できないのではないかというのは、極論です。夢から覚めて「なんだやっぱり夢か」と思う事はあっても、「(本当の)現実から覚める」事はないでしょう。そして、どんなに現実感のある「夢」でも、現実に戻って冴えた頭で考えなおすと、やっぱり非現実的なところはあるものです。夢と現実は行ったり来たり出来ると言う意味では双方向ですが、現実から夢に戻った時に、現実を「なんだ現実だったのか」とは思いませんので、意識レベルの問題で言えば、同等ではないのです。
さてさて、そろそろ、締め切りのある仕事が山積してるので真面目に仕事に戻ります。それではまた、バイバイ
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素晴らしいっ! (まさおさま)
2011-09-08 02:10:30
福田先生、お帰りなさい。お待ちしておりました。
詳しいレクチャーをありがとうございました。
夢なんて科学からかけ離れた現象かと思っていましたが、
もう相当程度、科学的に解明されているんですね。
やはり専門家にリファーしてよかったです。
自分の見た夢に関してもいろいろと専門的に分析していただけてラッキーでした。
夢とは基本的に悪夢なんだと聞いてちょっと安心しましたが、
夢と闘ったりしていないで、とっとと不規則な生活を改めて、
夢を見ない健康な眠りを手に入れたいものだと思いました。
どうもありがとうございました
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