新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

4月14日 その2 為替相場は変動するもの

2024-04-14 07:41:22 | コラム
アメリカドルを気安く円換算して比較して考えない方が:

ここでは敢えて「為替相場の悪戯」と呼んで置くことにする。

今回取り上げるのは「水原一平元通訳が大谷翔平の銀行口座から盗んだ金額の1,600万ドル($1=¥150で換算して)約24億円だとマスコミが騒ぎ立てていること」である。余りにも大きすぎて実感がない。では、為替レートが$1=¥100だったとしたら幾らだったかが、16億円なのだ。これとても途方もなく大きな金額ではないのか。

ネットの情報などでは、大谷夫妻が住むだろうと予測されているLAの最高級住宅地、例えばベバリーヒルズ(Beverly Hills)辺りの価格を取り上げていた。その辺では6~7ベッドルームの住宅で1,500万ドル(=22.5億円)はするそうだから、大谷は高級住宅一軒分を失っていたことになってしまう。それがどれ程の家だったかは、エディマーフィーが主演した「ベバリーヒルズ・コップ」という映画を思い出して頂ければ想像できるだろう。

ここでは、そういう話も然る事ながら、アメリカの我が紙パルプ・林産物業界のCEOの年収を取り上げて、比較にならないかも知れない比較を試みてみる次第。

ウエアーハウザー第8代目CEOのジョージ・ウエアーハウザーの年俸は10Kで見た所では、1980年代初期で180万ドルだった。これを当時の$1=¥200~220で換算すると4億円近くになって「流石だ、凄―なー」と思わせられた。だが、2000年頃にウエアーハウザー家ではない10代目のCEOの年俸は200万ドルだった。¥100で換算すれば2億円に過ぎなかったが、現在の為替レートなら3億円だ。因みに、彼のストックオプションは円換算で12億円。

今から20年以上も前に、我が国の社長さんで2億円超えの年俸の方はどれくらいおられるのだろうか等と、ふと考えてしまった。尤も、給与が年功序列制ではなく、個人の能力次第であるアメリカの企業社会における年俸と、我が国の給与を単純に比較するのは「適切な比較」ではないとは思うが、アメリカの経営者は高給なのだと解る。

強調したかったことは、為替相場の変動を考慮しないで、我が国とアメリカとの給与所得や物価などを安易に比較しない方が良いだろうという事。アメリカの企業社会の中で給与水準が低いと言われている紙パルプ・林産物業界では、CEOの年俸が20年経ってもさほど上がっていなかったのだが、それでも我が国よりも上だったのかもとなるようだ。

物価という点で考えてみれば、買い物などでは私の在職中の1993年一杯までは、為替レートがどうなっていてもアメリカで買う方が遙かに経済的だったのだ。尤も、この話には「私はアメリカに行くのは出張であり交通費は会社の経費だったこと」というメリット(「利点」という意味)があったのだ。現在では我が国の円安が止まらず、インフレ収まり切れていないようだから、アメリカの物価の方が高くなってしまったが。

改めて強調したいことは「現時点での為替レートを使って換算するのではなく、10年、20年、30年、40年前の為替レートを使ってと日本とアメリカの物価や給与所得の水準を比較しないと、実態を的確に把握できなくなりはしないか」なのである。1985年にシアトルで交通事故の被害者になった私が得た保険金は2,200ドル。当時の為替レートは¥200で44万円では不当に低いと大憤慨。だが、\150の今日では33万円にしかならない。

為替レートの変動とはこういうものなのだ。「物価でも何でも、現時点での相場だけを見て、安易に高いとか安いとかと比較しない方が無難ではないのか」となるのだ。



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