暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

アンティークの香合

2009年07月01日 | 茶事
「横浜開港150周年を祝う茶事」まで1週間に
迫った6月のある日、産貿センター(中区)で行われた
横浜骨董市へ寄ってみました。

骨董市は大好きですが、なかなか機会がありません。
陶器、茶道具、書画、家具、アメリカングッズなど
どのお店も覘いてみたくなり、困りました。
海外からのお客さんも多く、横浜らしい賑わいです。

目指すのは西洋アンティークで、今度の茶事に使う
香合を探しています。
三軒目の出店で古びた小箱に出合いました。

1820年頃にイギリスで作られたもので、
細工しやすい錫製です。
蓋の表に絵が鋳込まれています。
ルーペで覘くと、豚が男の人のズボンをひっぱっていて、
赤ん坊を抱いた婦人や鋤を持った農夫が
その様子を眺めています。
ユーモラスでのどかな農場の風景が気に入りました。

店主の若い女性に尋ねてみました。
「これは何に使ったのかしら?」
「・・・それがわからないんですよ。
 ほらっ!蓋に英語が書かれていますが、
 英字がつぶれていて読めないのです。
 読めると手掛かりになりそうですが・・・。」

その小箱を入手し、香合に見立てました。

「何に使われたものか、わからないのですが・・・」
「これは嗅ぎ煙草入れだと思いますよ。
 以前イギリスへ行った時、ダンヒルの博物館で
 これと似た錫製の嗅ぎ煙草入れを見たことがあります」
とお正客さま。

「嗅ぎ煙草は短い時期にしか使われなかったので
 とても貴重なものですし、海を越えて此処にある
 ご縁といい、今日の開港の茶事にぴったりの香合ですね」

有難いお言葉とともに、思いがけなく小箱の素性がわかり、
嬉しいです。


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                        のち 



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