暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

富士庵流茶会 (1)  

2011年05月21日 | 茶会・香席
5月15日(日)に浅草寺伝法院で行われた
富士庵流同門茶会へ出かけました。昨年に続き、二回目です

浅草雷門で待ち合わせ、総勢四名です。
五月晴れの清々しい気候でしたので、軽くてしゃっきりした大島紬を着ました。
他の方々は無地、小紋、洋服と、思い思いの装いです。

伝法院通りの黒門から入ると、
小堀遠州が作庭したという回遊式庭園があり、この庭も見所の一つです。
緑樹が美しい庭に面して今日の茶席の書院、大書院二席、天佑庵があります。

              

第一書院席に入り、いきなり正客のご指名がありました。
どなたも正客が出来る方ばかりなのですが
「それでは順番にいたしましょう」と、素直に引き受けました。
「本日は誠におめでとうございます。
 他流でございますので、どうぞご指導を宜しくお願いいたします」
席主は、昨年天佑庵席を持たれた、柔らかく気さくな先生で、ほっとしました。

「一葉観音(いちようかんのん)」が床に掛けられていました。
「東関東大震災のあとで、茶会をするにあたり
 一葉観音の画像をお掛けしたいと思いました・・」と席主。

「一葉観音」は一葉の蓮華に乗った観音菩薩です。
その由来は、道元禅師が中国から帰国途中嵐に逢い、難破しそうになりました。
一心に念じたところ一葉観音が顕れ、荒海が凪いだという故事があるそうです。
旅の安全や水難守護を願う人々により今も深く信仰されています。

お話を伺いながら、今日のお席のテーマがよくわかりました。
花は、花筏、白紫蘭、紫鉄線が信楽の丸筒に生けられています。
香合は細かい細工のある白檀の蓋物で、中国製のお土産だとか。

お点前が始まりました。
お点前さんが茶道口に座り、敷居の上に扇子を置き、両膝の前に
手の指先をつき一礼しました。
二回目ですが、お辞儀、足の運び、帛紗捌き、茶筅通しなど、
富士庵流の所作が新鮮で見入りました。

お道具も素敵でした。
富士庵流お家元好みの無双棚に雲鶴青磁の水指です。
無双棚は黒と朱塗の無双(上下でリバーシブル?)になっていて、
弔事と慶事で使い分けられ、黒が表になっていました。
形も好いのですが、創意工夫に感心しました。
風炉先屏風も当代(五世)お家元好みで、桐地に富士山、松竹梅の透かしが
初風炉の清心の席を盛り立てています。

              

「磯あそび」(うさぎ屋製)という菓子を頂戴し、
芳香園の薄茶「妙寿」を初めて喫みました。
香り佳し、程よい苦味よし、少々熱かったのでゆっくり頂きました。
席主とお点前さんが心配そうに見ていらっしゃったので
「香りも、苦味も程よくアクセントになっていて美味しゅうございます」
最初の客、最初のお点前でさぞやほっとしたことでしょう。

あとで、富士庵流では裏千家流の濃茶点前のように
「たいへん美味しく頂戴しています」
正客が服加減を述べることを知りました・・(身体が反応できて好かった!)。

主茶碗は貫入の美しい黒薩摩、替は鉄線絵の京焼でした。
七宝の蒔絵が細かく繊細な棗は、
「こんな時だからこそ、みんなで手を取り合う気持ちが
 大切だと思い、七宝つなぎの棗にしました」 と席主。
そして茶杓は、富士庵流四世家元作の「和」でした。

初風炉の第一席で、和を大切にして前に進む勇気をいただきました。

        (富士庵流茶会(2)へ)       


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。