後座の床
烏瓜の花が次々に咲くことを期待して・・・
(つづき)
早や夕闇が迫るなか、中立をして頂きました。
暗闇の中、灯籠や足元行燈の灯りが美しく浮かび上がっています。
後座の迎え付けは手燭の交換・・・・夢のような瞬間で、夕去りの一番好きな場面でしょうか。
後座の床は、
「去々来々来々去々」
2012年12月1日、今日庵の朔日稽古の折に出会った禅語が心に残り、足立泰道老師に書いて頂いたお軸です。
ハワイへ帰る友との一会に様々な思いを込めて掛けました。
短罫の灯りの元、心地よい緊張を感じながら茶碗を持って点前座へ進み、
次いで建水と手燭を持って入り、襖を閉め、大好きな濃茶の時間になりました。
帛紗の四方捌きで前後が逆なのに気が付き、未熟なことでございます・・・(汗)。
お客さまの優しいまなざしを感じながら心穏やかに点前が出来たのですが、
暗い中、濃茶がよく練れたかどうか、今一つ自信がありません。
「お服加減いかがでしょうか?」
「大変美味しゅうございます」の言葉にホッとして、二碗目にかかりました。
西湖(和久傳製)を織部喰籠(鈴木五郎作)に入れて
濃茶は「寿の昔」、奥西緑芳園詰です。
前席のお菓子は冷々の「西湖(せいこ)」(京都・和久傳製)をお出ししました。
主茶碗は大樋焼の飴釉、六代朔太郎作(五代勘兵衛の長男、二十八歳で早世)です。
小ぶりの素直な形が好ましく、胴や見込のヘラ目、飴釉の複雑な色合いが魅力的な茶碗です。
替茶碗は京都で一目ぼれした高麗御本三島、「伊備津比女(いびつひめ)」と名付けて愛用しています。
どちらも灯火の下で濃茶の色が映えることを期待して選びました。
続いて薄茶を差し上げました。
ここで半東N氏に点前を代わって頂き、暁庵はお客さまとゆっくりお話を・・・。
主茶碗は鵬雲斎大宗匠のご自作の伊羅保で銘「清芳」です。
正客Sさまは確か、大宗匠の推薦で1年間今日庵で勉強する機会を頂いたと伺っていました。
「あらっ!大宗匠の御作ですか・・・嬉しいです。偶然ですが伊羅保が大好きです」
「ヨカッタ・・・」(きっと大宗匠も喜んでくださっていることでしょう)
大宗匠ご自作の伊羅保茶碗 銘「清芳」
半東N氏が心を込めて点ててくださった薄茶は「千代の昔」(奥西緑芳園詰)です。
替茶碗は絵唐津で銘「水面」、川喜多半泥子作です。
最近、半泥子の作品や生き方へ傾倒しているというN氏のお持ち出しで、味わい深い茶碗です。
お客さまも二つの個性の違う茶碗で薄茶とお話を楽しんで頂けたかしら・・・。
その夜、烏瓜の花は蕾のままでしたが、夕顔大棗(認得斎好)が薄茶席で花開いてくれました。
最後に茶杓のことを書いておきます。
茶杓は銘「ひと夜」、紫野雪山和尚作、群雲の中に月明りが差している風情があります。
ひととせにひと夜と思えど七夕の
逢いみむ秋の限りなきかな 紀貫之
一夜一会の愉しかったその時をアツク思い出しています。
七夕の歌のようにまた皆様と再会できますように祈りながら・・・。
末筆になりましたが、獅子奮迅の活躍の半東N氏と懐石・佐藤愛真さんに心から感謝申し上げます。
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夕去りの茶事支度