たにしのアブク 風綴り

86歳・たにしの爺。独り徘徊と追慕の日々は永い。

「シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々」を読み終えた

2010-09-11 13:55:11 | 本・読書

河出書房新社刊
「シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々」
ジェレミー・マーサー著 市川恵里訳 312頁
定価2,730円 初版発行 2010年5月30日

なぜこの本を読む気になったのでしょうか。
たにしの爺が買う本としては、かなり高価である。
幾つもの書店を回ったが店頭にはなかった。
書店に注文したのが7月26日。手に取れたのが8月6日。
奥付の発行日は8月20日 2刷発行となっていた。
読み終えたのが8月31日(1日25分の車中読書)だった。


ジェレミー・マーサーは、カナダで地元新聞の犯罪記者(殺人や麻薬などの事件を追う、日本でいう察廻り記者)をしていたが、自分の書いた本が元で脅されていた。なけなしの金を引き出して、世紀末の1999年の暮れパリに逃げ出した。
2000年ミレニアムを迎えた冬のパリは寒かった。
安いホテルに泊まりながら、食費も削る日々を過ごしていた。所持金も尽きた土砂降りの冬の日、雨宿りした店先から運命が変わりはじめた。

「もうすぐお茶会が始まるの」
カウンターの女性はイヴと名のった。(本書23ページ冒頭)

ドア枠の上には次のように書かれていた。
「見知らぬ人に冷たくするな
変装した天使かもしれないから」(同23ページ末尾)

ノートルダム大聖堂を望む、セーヌ左岸にその書店、「シェークスピア・アンド・カンパニー」があった。書店主は80歳を超すジョージ・ホイットマン。世界を放浪しここで書店を開いた彼は共産主義を信じ、共産主義を実践していた。

そこには金もなく、行き先もない男女が寝泊まりしていた。ただ彼ら彼女たちは、自称作家であり、詩人であり、ゲージツ家であり、いつかものを書く人間になって、店お出ていくことを夢見ていた。恋も友情も、葛藤も妬みも、嫉妬も、失意も……金がないなりの、暮らしの知恵で助け合う互助社会の縮図になっていた。

以下は本の表紙オビからの内容紹介です。
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セーヌのほとりに佇む 奇跡の書店の物語

パリ、セーヌ左岸で、ただで泊まれる本屋。
ジョイスの「ユリシーズ」を生み出した伝説の書店の精神を受け継ぐ
二代目「シェイクスピア・アンド・カンパニー」は、貧しい作家や詩人たちに食事とベットを提供する避難所だった。ヘンリー・ミラー、アナイス・ニン、ギンズバーグらも集ったこの店に、偶然住み着くことになった元新聞記者がつづる、本好きにはこたえられない世にもまれな書店の物語。

冷たい雨の夜に
パリの街にやってきて
シェクスピア書店を見つけたら
ほっとするかもしれません

そこにはたいそう親切で賢明な
モットーがあるのです
見知らぬ人に冷たくするな
変装した天使かもしれないから

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表紙から楽しくなる。読み応えのあるいい本でした。
紙に印刷した本はいいですね。
丸ごと触れられて、本がそこにある風景。
電子ブックなどでは味わえない「紙福」ですな。

Webで検索するとこの実在の書店について、
膨大な情報が出てきます。
パリでは有名な書店で、今では観光名所にもなっているという。

そんな訳で写真でも見られます。
画像で見る世界の本屋さん

パリのここ

本屋さんの中は、まさに「ワンダーランド」ですね。
電子ブックには、絶対にまねのできない世界です。