森羅万象、政治・経済・思想を一寸観察 by これお・ぷてら
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「2200億円をめぐる」攻防。
以下は、coleoの日記に昨日書いたことだ。社会保障費の削減をめぐっての攻防について。
首相も、この間の社会保障費の自然増抑制に限界があることをあらためて認めた。これまで、舛添厚労相が繰り返し社会保障削減に限界があることをのべていたが、これを追認する格好になった。 日経が以下のとおり報じている。 ==== 社会保障費の自然増、首相「抑制、限界ある」 福田康夫首相は26日の衆院予算委員会で、高齢化に伴い自然増が続く社会保障費について「今まで歳出改革の対象にせざるを得なかったが、ずっと続けるのは実際難しい。社会保障の質を下げることになるのでおのずと限界はある」との認識を示した。民主党の前原誠司副代表が社会保障費について「無理に削るのが医療崩壊を加速させている。見直すべき時期だ」と指摘したことへの答弁。 政府は「骨太方針2006」で、社会保障費の自然増について、5年間で1兆1000億円圧縮すると明記。08年度予算案でも薬価引き下げなどにより2200億円抑制していた。首相発言は直ちに目標を修正する意向を示したものではないとみられるが、今後の財政運営に影響を及ぼす可能性がある。 |
社会保障削減によって、諸々の場面で矛盾が噴出している。これが、現状だろう。 医師不足とそれを要因の一つとする救急医療の機能低下、産科医療の地域からの撤退と縮小、患者の「たらい回し」。そして後期高齢者制度にみられる制度設計の現状…。 いずれも今日、医療崩壊というくくり方を支持しているように思える。 |
社会保障費の自然増2200億円の削減をめぐり、これに与するのか否か、その争いが政府与党内でもあるということだ。
すでに尾辻秀久氏は代表質問でこの点に言及した。
尾辻秀久氏の代表質問-「乾いたタオルを絞っても水は出ない」
今日、友人がメールを送ってくれた。そのジャパンメディシン社のメルマガから引用する。
「乾いたタオルを絞っても水は出ない。総理、2009年度予算の概算要求基準(シーリング)では社会保障費2200億円の削減を行わないと約束していただきたい」―。
1月22日の代表質問で、自民党の尾辻秀久参院議員会長は福田康夫首相にこう詰め寄り、与党のみならず野党からも拍手喝采(かっさい)を浴びた。また舛添要一厚生労働相は今月20日、東京都内で開いた記者会見で、「(09年度予算では)2200億円のマイナスシーリングをやめたいと思っている」と発言した。 |
同社の記事にそってふりかえると、「骨太の方針06」では、社会保障分野において「過去5年間の改革(国の一般会計予算ベースでマイナス1.11兆円の伸びの抑制)を踏まえ、今後5年間においても改革努力を継続する」ことが打ち出された。
これを踏まえた07年度予算概算要求基準では、政府が掲げる削減目標1.1兆円のうち、5分の1に当たる2200億円を削減することが閣議了解された。
この時は生活保護の見直しで400億円、雇用保険の見直しで1800億円を削減し「2200億円のノルマ」を何とか乗り切ったのである。
「骨太の方針07」でも、「歳出改革の内容は、機械的に5年間均等に歳出削減を行うことを想定したものではない」と明記したものの、結局、前年度と同様に2200億円を削減することが決まっている。
08年度予算編成では、診療報酬プラス改定という命題を一方で迫られる格好のなかで、2200億円の捻出に苦労をしているというのが今現在なのだろう。
現場に起こる問題は、確実に負の連鎖をたどり、深刻さを増している。
こんな状況のなかでの尾辻氏の代表質問であったし、自民党の厚労関係議員は、単年度22000億円の社会保障費削減を撤回をかかげてまでいるのだ。
しかし、削減を堅持しようとする勢力ももちろんいる。
大田弘子経済財政担当相は、年末の経済財政諮問会議終了後、会見で「今回の予算編成では、2200億円(の削減)を堅持し、緩めていはいけない旨の発言をし、社会保障費の歳出削減をかかげている。
冒頭にあげたエントリーでつぎのようにのべた。
政府はすでに12日、「医師は総数としても充足している状況にない」とする閣議決定をおこない、医師不足について認めている。 小泉構造改革に象徴される新自由主義的施策は社会保障切り捨てを一つの特徴としたが、その破たんともいえる。 ただし、こうも考えることができる。 昨年10月、経済財政諮問会議で御手洗富士夫氏ら民間委員は、あえて高負担・低福祉の試算を示してみせた。 社会保障推進会議での議論のゆくえが気になるが、削減の方向をいったん打ち消しながら、持続可能なものにするために消費税増税は不可避という宣伝が強まるか。 削減か消費税増税かという二者択一を迫ることも大いにある。 |
見立てがはずれることを願いたいものだが。もちろん攻防のゆくえが左右するのは単に2200億円にとどまるものではないのはいうまでもない。
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軍艦島にみる高度成長の光と影。
博多から高速を車でとばせば2時間半というところでしょうか。
今回は、職場の同僚たちとのミニ旅行にすぎません。
けれど、結論を先にいえば、なかなかのものでした。
いろいろと考えさせる旅行でした。少々オーバーにいえば、戦後と戦前の歴史を同時に垣間見ることができたわけです。
軍艦島。 (写真上、クリックすると拡大します)
ごぞんじでしょうか。長崎の方なら、10人中10人までがご存知のはずです。
正式名は端島。長崎湾に浮かぶ島。ここも長崎市です。
長崎は、鎖国時代も唯一、西欧にむけて開かれたまちでした。今でももちろん、街のあちこちにそのなごりがみられます。(写真左は出島)
軍艦島の歴史は、直接的には戦後、とくに高度成長期にもっとも輝いたといえるでしょう。長崎湾に浮かぶこの島では、かつて石炭が採れました。
19世紀には石炭の存在が認められたといいます。
佐賀藩を治める鍋島家のものになり、明治に入っては三菱財閥の所有になっています。以後、島には炭鉱労働者のためのコンクリート建ての住居とその周辺施設がつぎつぎに建設されました。
遠くからながめる島の姿は、通称のとおりまさに艦船そのもの。旅行当日、撮った島の姿をごらんください(写真上)。最盛期には東京の9倍の人口密度だったといわれます。だから世界一の稠密な島だったのです。
1974年に炭鉱が閉山。最盛期には5500人を上回る人口だった島は閉山後、当然のことながら次つぎに人がはなれ、閉山の年なかばにはすでに無人島になっています。
ようするに、この島をめぐって私が思うのは、戦前、戦後をとおして、いわば国策に振り回されたということです。
人びとの生活は、エネルギー政策にあおられ、そこに住むことによって存在し、そして今度はまた国策によって生活そのものを奪われていく。その運命にあった労働者とその家族、そして彼らの生活を強く思ったのでした。
この島の戦後は高度成長にはじまり、高度成長の終焉とともに彼らもその地を追われ、この島の戦後も終わったのです。
むろん最盛期をふくめて、彼らの生活はおよそ快適なものとはいえなかったでしょう。
いまでこそ、ストレスフルな仕事や生活、そのありようについて問題も派生し、関心も同時に高まって議論されています。
が、当時はそんな環境ではなかったのではないでしょうか。
もちろんストレス自体がなかったわけではなく、大いにあったと推測されるのですが。だって、私なんかはたとえば東京の9倍もの密度、と考えただけで目が回りそうです。人と人の関係はどうだったのでしょうか。
働く労働者はしかし、採掘という仕事におそらく誇りをもっていたのでしょう。
一方で、島という海に浮かび、外界と隔てられた自己完結の地とそこでの生活のなかでまた、彼らは日々苦悩したともいえるのではないでしょうか。
企業の論理が貫徹し、そこから一歩も抜け出せない、彼らの日常を軍艦島そのものの異形が象徴しているようでなりません。
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PS;軍艦島は現在、立ち入ることはできません。しかし、長崎港から出発する「軍艦島クルーズ」などの周遊コースがあり、海の上から外観をながめることは可能です。今回はそれを利用しました。
患者の側からみる医療崩壊の経済。
【風】医療費抑制策が崩壊招く?
今回のタイトルがいわば結論だろう。
疑問符がついている。が、現状をみるかぎり疑問符なしでよさそうだ。
今回の記事は、ある開業医の意見を進行役として進められている。
この医師の意見を列記すると以下のようになる。
この間の、メディアもふくめた議論の深まりによって、おおかたコンセンサスを得ている意見だといってよい。
- 国が進める医療費の抑制策が、医療崩壊を推し進めているのではないでしょうか
- 病院の収入は減少し、全国で自治体病院が赤字で閉院に追い込まれています。この10年、給料は上がらないのに仕事は高度化されて専門性は増し、責任は増えるばかりです
- 先進医療は当然高度な設備を必要とします。しかし医療費の抑制で収入が減り、特に救急医療はやればやるだけ赤字が増えるのが現実です
- 24時間最高の医療を求めるならば、医療費が増大するのは当然です。当直医に複数の専門医をそろえ、看護師やレントゲン技師も充実させなければならないからです
- 国が補助を減額したばかりに国民の負担は増加し、病院窓口で支払う金額は増えるばかり。国は負担を減らす一方で国民には増やし、病院には収入減の政策です。これでは、現在の医療水準を今後維持することは不可能です
- 夜中に緊急手術で呼び出されても、わずかに上乗せされる程度です。ここから医師2人と看護師2人の人件費と、手術材料費を出さなければなりません。その上、翌日は通常の勤務が待っています
- 専門性が高く、消化器外科でもできる人が少ない膵臓(すいぞう)がん手術でも、部位によっては30万円ちょっと。車の車検に20万円くらいかかるご時世に、命の値段はこの程度です。お金かコネがないと、手術待ちが半年なんて時代は、すぐそこまで来ています
このうちのいくつかの点について、以下、大げさにいえば、開業医の意見をもとに、医療を経済学風にながめてみたい。
『クローズアップ現代』がみた自治体病院の今。で、自治体病院の窮状を扱った。
そこで、つぎのようにのべた。
経営的手法を迫るだけではない。総務省はまた、医師確保や効率化推進の方策として、自治体病院の再編・ネットワーク化に着手している。これは、地域の医療圏の中核病院に医師を集約化し医療機能を充実させる一方で、その周辺の病院は医療機能を縮小し、後方支援病院・診療所にするというものだ。だから、再編・ネットワーク化は、中核病院のある地域の住民には恩恵を与えるものの、縮小される地域の住民は医療水準が後退する。地域間で医療格差はむしろ拡大する。 住民に近いところで、かゆいところに手のとどく医療を提供することに従来の自治体病院の役割があったとすれば、総務省が考えているネットワーク化は、ちょうど対極のものだといえる。従来の姿が一つひとつの糸はたしかに細いが、網の目のように住民にちかいところまで広がっていたのに対して、太くはあるが、しかし目の粗い連携網をつくろうとしているわけだ。こうたとえることができるだろう。 |
民間ではやれない、不採算部門も担ってきた自治体病院。
地域住民からすれば、それだけに欠くことのできない医療機関であったはずだ。
けれど今、上のように再編・縮小の危機にさらされている。
救急医療は、多くの医療従事者と、多額の医療機器、検査機器を要する。だから、医療費は必然的に高くなる。
24時間対応となるとなおさらだ。
記事に登場する開業医が語るように、医療費削減のなかで不採算の度合いはいっそう進んだ。
しかも、経営的にも厚い人的な体制などのぞめない上に、患者の側の高い要求にこたえるために医師をはじめ医療従事者は疲弊していく。
公表されるのは地域から救急対応の医療機関が減少するデータばかりだ。
わずかな呼び出し手当てで、四六時中、よびだしの連絡に追いかけられる精神的緊張は、医師でないと分からない。
結局、臨調「行革」以来の社会保障費抑制政策のなかでも一つの柱に位置づけられた医療費。
社会的入院などという言葉は、長期に入院する高齢者の医療費を抑えるために使われた。故渡辺美智雄がいった「老人に金をかけるのは枯れ木に水をやるようなもの」はあまりにも有名になった。
医療費の構成という別の角度から日本の医療費をみてみると、諸外国とくらべて、特に日本が際立っているのは、薬剤費と医療機器である。別のいいかたをすると、薬品メーカーと医療機器メーカーは大もうけをしていることになる。
外科系学会社会保険委員会連合(*1)のホームページでは、つぎのようにのべられている。
31兆円余りの医療費のうち、約8兆円が薬剤の費用、約2兆円が医療材料に使われています。保険で使われている薬剤の価格は世界一高く、また医療材料の価格も外国と比べて大変に高く設定されています。 |
トータルにみると、医療費抑制策が崩壊招くという考えに首肯せざるをえない。
抑制とは、医療機関と患者にとってのそれであって、しかも患者は負担増を迫られてきた。
低く抑え込まれた医療費によって、人はふえず、医師も、看護師も疲れきっている。
しまいに医療の現場から立ち去っていく。
医療がついに成り立たなくなる。
今、日本の各地で起きているのは、簡単にのべると以上のようになる。
犠牲になるのは、患者国民であって、医師であり、看護師だ。一人、高笑いなのは、一部の大製薬メーカー、医療機器メーカーであって、彼らの利益確保は温存されてきたといえる。
医療費の総額はこうして抑制されたきたのだが、彼らのもうけ口はちゃんと確保されている。
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*1;同連合は「日本の医療費」について、つぎのようにのべています。至言です。
人口の高齢化が進む中で医療費の増加が問題とされ、これ以上の増加を抑制するために次々と医療制度改革が実施されています。このような改革がこのまま進められることが本当に良いのか、医療の現場にいるといろいろな疑問が湧いてきます。国民の皆さん方も政府の発表するデータやそれをそのまま伝えるマスコミの情報を鵜呑みにするのではなく、自ら考え、発言し、行動していただきたいと思います。そのためには先ずわが国の医療の現状をきちんと知った上で判断していただくことが大切ではないかと思います。
coleoの日記;浮游空間にも同文を公開しています。
「時代の大うそ」からはじまった自衛隊。そして米軍。
それが人間の人間たる証しなのかもしれない。
今回の沖縄の米兵による暴行事件、そして東京湾でのイージス艦衝突事件。
2つの事件とも、弱い立場のものが現実に「犠牲」になったか、あるいはなろうとしている。
私は、この2つとも日本のなかにある米国への従属という関係がクリアに表現されていると思う。
説明するまでもなく沖縄は、米国の基地の島である。そして「あたご」の衝突事件も、あえていえば日米関係を反映しているといってよい。
議論は、たとえば「あたご」の事件は自衛隊の「気のゆるみ」などと表現されかねないし、現にされているのだが、防衛省のゆるんだ組織管理、あるいは自衛隊の組織的「欠陥」にのみ原因をもとめられるのだろうか。私にはそうは思えない。
たしかに防衛省あるいは自衛隊の組織的欠陥がある。
あるのだろう。
しかし、ことこの種の事件の再発を防止し、そのおおもとを絶つには、日本と米国の現在の関係に踏みこまざるをえない。
そう考える。
そもそも船員法をも無視するような、事故発生時のとるべき対応を一切とることのないような横暴ぶりは、日常の自衛隊艦船のふるまいを反映しているといってよい。
常日ごろがそうだから今回もそう現れた。それが如実に現れただけのことである。
つまり「軍」が優先するのである。通常の航行ではこれが貫かれていたということだ。
ブロガーのなかには「あたご」関係者を厳罰に処するべきだと要求する者がいる。
それが再発防止の手段だという。
しばしばこの厳罰論が頭をもたげる。
だが、そんな厳罰で再発は防止できるはずはなかった。歴史がそれを証明している。
残虐な、悲劇的な事件であればこそ、容疑者に責任能力を認め、厳罰を科す以外に、遺族はもとより、そして私たちもまた、蒙った精神的苦痛は癒すことはできないだろう。しかし、厳罰に処したとして、遺族や私たちの精神的苦痛が晴れて解消されるだろうか。 繰り返していえば、厳罰を科すことができるのは、容疑者に責任能力を認める場合である。そうすると、分別をわきまえた者のとる行為がなぜあれほどの残虐非道をきわめたものになるのか、という疑念と不安がつきまとってくるのではないだろうか。 本来、解消すべきこの疑念と不安はどこまでも私たちのあとをついてくるにちがいない。 |
以前に私はこう述べた(参照)が、この立場は今もかわっていない。
疑念と不安を経つためには、米兵の日本での蛮行の機会を断つことである。そして、「あたご」の横須賀への入港の機会を断つことである。
フランク・コワルスキー米占領軍初代幕僚長は、「日本再軍備」という著書のなかで、
アメリカおよび私も個人として参加する「時代の大うそ」が始まろうとしている。これは、日本の憲法は文面どおりの意味を持っていないと、世界中に宣言する大うそ、兵器も小火器・戦車・火砲・ロケットや航空機も戦力でないという大うそである。人類の政治史上おそらく最大の成果ともいえる憲法が、日米両政府によって冒涜(ぼうとく)され、蹂躙(じゅうりん)されようとしている |
と書いている。
同氏は、自衛隊の前身・警察予備隊の創設にかかわった人物だ。
警察という名こそついていたが、最初から軍隊だった。
こうして出発した自衛隊は、アメリカの補完部隊として急成長してきた。
その急成長ぶりだが、右下図にあるように、急勾配の右肩あがりのカーブがそれを示している。(クリックすると拡大します)
日本の軍事費は、自衛隊の予算ばかりではない。日米安保条約にもとづいて米軍基地の維持経費がこれにふくまれている。
在日米軍駐留経費負担である。
日本は首都東京をはじめ全国各地に広大な基地を米軍にタダで提供している。
それが私有地であれば、日本が地代を肩代わりする。
また、米軍が訓練をするために提供される海域の漁業補償も日本が肩代わりしている。
これが、不平等そのものの日米地位協定の実態である。
しかも、その上に思いやり予算まで負担する日本。
日米地位協定にすら取り決めのない代物だ。思いやり予算は1978年にはじまって以来、総額5兆円を上回った。
こんな日米の不平等が前提にある。不平等な関係が横暴をうむ。
ここに着手するならば、はじめて米兵の横暴の再発を防げることになる。
横須賀市では「原子力空母母港化の是非を問う住民投票を成功させる会」が結成され、米原子力空母の母港化の是非問う住民投票を求める運動が取り組まれている。
住民投票という手続きにはもとより限界がある。
しかし、住民が自分の意思をきちんと表明し、住民投票によって総意を明確にしていこうという取り組みは大いに評価されてよい。
米兵の暴行事件とイージス艦衝突事件と発生している今、その意義はいよいよ大きいと私は思っている。(「世相を拾う」08039)
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それでも日米の共同作戦は進む。
懸念していたとおり、このありさまです。米軍の暴行事件追及の手は完全にどこかに消失したかの感が否めません。
とりあえず、「朝日」、「読売」、「毎日」の23、24日の電子版の政治記事一覧を列記すると、以下のとおりです(24日・21時時点)。
◆「朝日」 租税特措法改正案、修正に柔軟姿勢 福田首相(02/24) 福田首相の主な発言内容 韓国・ソウルで(02/24) 福田首相 防衛相は辞任の必要なし、大連立は相手次第(02/24) 民主・藤井氏「月内に道路対案要綱」 修正協議に前向き(02/24) 4月に消費増税論議着手 自民政調会長が言及(02/24) 予算関連法案「28日通過めざす」 自民国対委員長(02/24) 橋下知事「費用対効果は?」 松本零士氏と意見交換(02/24) 年金前借り厳格化 「返済で困窮」歯止め 福祉機構検討(02/24) 公文書管理担当相設置へ 上川少子化相兼務に(02/23) ガス田問題 日中対話、決着せず終了(02/23) 「首相ごり押ししない」 日銀総裁人事で自民・中川氏(02/23) 自民党員10年連続減 ピーク時の2割、110万人に(02/23) 参院選落選組の比例単独擁立「ない」 自民選対が引導(02/23) 背広組・制服組の統合に警戒感 防衛省改革チーム発足で(02/23) 日銀総裁人事 民主、党内調整に苦慮(02/23) 橋下知事、全職員に「どんどんメールを!」と呼びかけ(02/23) ◆「読売」 |
昨日のエントリーで、イージス艦と漁船の衝突事故が起き、関心がそこに集中すると、一方で、冒頭の米兵の事件が人びとの心から遠のき、かすんでいくような気がしてならない と私はのべましたが、事態は残念ながらこの推測どおりにすすんでいるようです。見事に米兵暴行事件を扱った記事は消えました。米国の、あるいは米軍のほくそえむ姿が眼に浮かびます。
他方で、こんなニュースが伝えられています。
米軍横田基地(福生市など5市1町)で23日、米軍の大型輸送機C17に陸上自衛隊のヘリコプターCH47を積み込む訓練があった。日米のこうした訓練は初めてといい、米軍や自衛隊の関係者ら約100人が参加した。
訓練名は「太平洋長距離航空輸送セミナー」。C17の後方に大きく開いた搬入口から、プロペラを外したCH47がワイヤで引き上げられ、自衛隊員や米兵が手順を確認。約30分で積み込みが終了した。 同基地は「国連を中心に多くの国が共同で災害支援などをする機会が増えている」と説明。「輸送機で近くの空港までヘリを運び、迅速に災害現場での活動ができるようになる」としている。 |
この記事が伝えるのは、日本列島はいまや日米共同の作戦の舞台として完全に機能しているということでしょう。当ブログでは、すでに米軍横田基地に日米共同の戦争作戦指令部、「共同統合作戦調整センター」(BJOCC)が設置されたことを示しました。
NHKスペシャルの「リアリズム」と日米同盟の今日
先にあげた「朝日」の記事は、在日米軍再編の日米合意(2005年10月)で打ち出された日米の共同作戦センター設置にもとづいて、着々と作戦が実践に移されていることを示すものでしょう。
だとすると、沖縄の米兵の暴行事件、そしてイージス艦「あたご」の衝突事件は、われわれ日本国民の安心・安全とはまったく無関係に、日米両軍の共同作戦の具体化が、おそらくそれは米国の戦力にいかに日本が協力できるかという一点でのみ進められているということを教えているのではないでしょうか。(「世相を拾う」08038)
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軍の「論理」。
19日の衝突以来、海上自衛隊の説明は二転三転し、いまだに聞く者を少しも納得させることができないでいる。技術の粋を極めたはずのイージス艦が、なぜ事故を回避できなかったのか。腑に落ちない。
そして、衝突の1分前まで自動操舵だったことが明らかになり、漁船の左舷に「あたご」が衝突したことが判明、いよいよイージス艦の過失は明白となっている。どこまでも隠蔽しようとするように受け取れる海上自衛隊。
なぜ衝突を回避できなかったのか。結局は、衝突を回避することをあらかじめ予測していないか、その可能性は日本の海域においてはきわめて少ないという認識がおそらく海自側にあるのだろう。
つぎのような指摘がある。
大型船との衝突、小型船の回避が常態化…あたご側に予断か 海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で、なぜあたごは直前まで回避行動をとらなかったのか。 海上衝突予防法は2隻の船が互いの航路を横切る際、相手を右に見る方が避けることを義務付けている。だが実際には、小回りの利く小型船が大型船をよけるケースが多く、漁師や海事関係者らは「あたごは漁船団がよけてくれるだろうという予断があったのでは」と指摘している。 東京湾の出入り口やその近海は、タンカーや自衛艦などの大型船から漁船などの小型船まで、様々な船舶が頻繁に行き来する。ある遊漁船業者(35)は、小さな釣り船を操縦する際、「自衛艦とわずか数十メートルの距離ですれ違うことが多いが、よけるのはいつも自分の方だ」と話す。全長100メートル以上ある自衛艦は小回りが利かない。釣り船は半径30~40メートルで旋回できるため、自衛艦に回避義務があるケースでも、「客の安全のためにも、こちらから早めに回避している」という。 |
「あたご」に予断があったのではと記事はいっている。
ようするに、記事が事実であるとすれば、海自は通常、回避行動をとらないか、とるケースはほとんどないということである。
それは記事中の業者の話でも裏づけられている。「客の安全のためにも、こちらから早めに回避している」というのが慣例となっているということだ。
今回も、仮に衝突しそうな事態である場合、それは漁船側が回避行動をとり、海自戦闘艦側は回避する必要はないとそもそも考えていたものという予測も成り立つ。
さらにこんな疑問も浮かんでくる。事件の起きた東京湾周辺では、年間約28万隻の船舶が入港する(2005五年、国土交通省統計)。世界有数の海上交通量である。
これだけの超過密な水域の上に、「あたご」が向かおうとしていた横須賀には米軍・自衛隊の基地がある。ここには艦船50隻が常駐する。だから、これだけの過密のなかで、なぜ自動操舵なのか、疑問は依然として残る。
ところが、イージス艦と漁船の衝突事故が起き、関心がそこに集中すると、一方で、冒頭の米兵の事件が人びとの心から遠のき、かすんでいくような気がしてならない。
沖縄県での米海兵隊員による女子中学生暴行事件を受け、在日米軍は22日、「反省の日」として、全国の米軍基地で米兵や軍属ら約4万人を対象に倫理教育の研修を実施した。
「反省の日」の取り組みは、1995年に沖縄本島北部で発生した海兵隊員ら3人による女児暴行事件の際に海兵隊が実施して以来で、陸、海、空を含めた全4軍では初めて。 極東最大の航空基地で戦闘機など約120機が常駐する米空軍嘉手納基地。この日は、計画していた爆破装置を使った模擬訓練を急きょ中止した。研修は部隊ごとに行い、性的暴行の防止に関する指導や日本の文化などについて学んだという。 |
圧倒的な批判にさらされている米軍はこれくらいのことはやらざるをえない。しかし、この「反省の日」自体がすでに2度目である。体面を保つためのものにすぎない。
米兵が横暴、無法のかぎりを尽くすのは、少なくとも本人に司直の手が及ばない今のしくみの存在が大きい。極端なことをいえば何をやろうと日本が逮捕することはきわめて困難なのだから。
だから、事実上の治外法権に守られている在日米軍の立場そのものを否定するのが、それこそが事件根絶のたしかな方法である。
これまで、「本土」に住む人間にとって米軍基地の8割を抱える沖縄の、そこに住む県民がどのような矛盾を抱え込もうと、それは他人事ですますことができた。日米安保条約と日米地位協定があるがゆえの矛盾を、沖縄県民に平たくいえば押し付けて生きていくことができたのであった。ある種の欺瞞でもあった。
しかし、米兵の暴行と、それに加えてイージス艦の、今となっては人命を奪う可能性がきわめて大きい事件が起きた現在の時点にたっていえることは、日本と、日本に住む日本国民を取り巻くしくみと状況が、少しも日本人によりそうのではなく、それとは無関係に動いているということをわれわれに教えている。
それは端的にいえば日米同盟の強化のためということになる。沖縄の米兵は日本の、あるいは沖縄の国民、県民をまもるためのものではけっしてない。ましてや、横須賀の米軍・自衛隊基地、軍用港は日本のためのものではない。
単なる一米兵の起こした事件、あるいは「あたご」の指揮官や乗組員たちの「過失」におし留めようとして、ここにいたっても官僚たちがおしなべて日米安保条約にふれず、地位協定に一切ふれようとしないのは、その事実の裏返しでもある。
明確なのは「軍の論理」である。米軍基地の米兵による沖縄の事件と首都東京に近接する横須賀基地に入港しようとした海自艦船による衝突事故。2つの事件は、時間と空間をむろん隔てているが、しかし、実は一つの糸で結ばれているといえる。
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PS;海上衝突予防法15条は「二隻の動力船が互いに進路を横切る場合において衝突するおそれがあるときは、他の動力船を右げん側に見る動力船は、当該他の動力船の進路を避けなければならない」と定めています。
堤未果『ルポ貧困大国アメリカ』-あとを追う日本は…。
日本もアメリカの後を追うようにしてさまざまなものが民営化され、社会保障費が削減され、ワーキング・プアと呼ばれる人々や、生活保護を受けられない者、医療保険を持たない者などが急増し始めた。アメリカで私が取材した高校生たちがかけられたのと同じ勧誘文句で、自衛隊が高校生たちをリクルートしているという話が日本各地から私の元に届き始めたのは最近だが、同時にアメリカ国内では、この流れに気がついた人たちが立ち上がり始めていた。 |
この把握にみられるように、日本は確実にアメリカの歩んだ道を何年か遅れて辿っている。
堤未果氏がこうのべるとおり、日本もまた民営化、民営化の掛け声のもとに民間企業に置き換えられた。たとえば、私たちがこれこそ国の仕事だと当然のごとく考えてきた教育や医療の分野で、国立大学や国立病院が独立行政法人に化けていったように。社会保障費の削減はいうに及ばず、毎年の自然増でさえ抑えこまれてきた。そして、ワーキングプアは全国民のうちの何分の一かを占めるほどの一大潮流となっている。生活保護世帯は減らないばかりか増えつづけ、一方で水際で申請にたいする圧力が強められているため、潜在的な受給希望者が少なからずいることは容易に想像がつく。また、医療保険の底が現実に抜けている状態は、当ブログでしばしばふれてきた。
さらに、紹介されている兵士リクルートは海の向こうのことではけっしてなく、とくに地方部で高校生を対象にした勧誘が繰り返されている実情は今や私たち自身が知りうるほどになってきた。
『ルポ貧困大国アメリカ』で堤氏が追いかけるのは、底辺で懸命に生きる人たちの日常だ。
食の貧しさは肥満という結果で形にし、それを表す。たとえば貧困地域では無料・割引給食が提供されているが、当然、コスト削減の課題がついてまわる。学校側は常に効率化を考慮しないといけないため、少ない予算にならざるをえない。だから、給食でもファーストフード産業と契約する学校するでてきているという。これはおそらく洋の東西をとわないのだろうが、貧困な地域の子どもたちは家庭での食事もジャンクなものに偏りがちになる。その象徴ともいえる一枚の写真が本書に収められている。I am not fat と書いた13歳の少女の大きなお腹は、種々、読者に考えさせるにちがいない。
もう一つあげる。
日本では今、産科は「医療崩壊」を示す指標といえるくらい、もっとも地域の病院から医師が「立ち去っている」標榜科の一つだろう。そうして、病院から産科が撤退する結果もくわわって、「妊婦たらいまわし」という事態も生まれてきた。一方で、貧困が広がり、飛び込み出産が増えている。
こんな日本の産科だが、ではアメリカはどうか。それを堤氏が紹介している。その一節をあげてみよう。
「後で全部請求されますから、ただでさえ出産費用が高いのに、ティッシュと脱脂綿だけで35ドルのコストがかかるんですよ」 難産のために帝王切開したナンシーが最初に聞いたのは看護師の「奥さん。一人で起きられますか」という声だった。 「看護師はもちろん知っているんです。長くいればいる程費用がかかることをね。それだけじゃない、動けるようになった患者はできるだけ早く病室から出して次の患者を入れる。回転させるためにです」 「回転? 出産したその日にですか」 「私の出産は日帰り出産です。入院すると一日大体4000ドルから8000ドルかかるんですもの。今アメリカの多くの女性は、高すぎる医療費のせいで入院出産なんてできません」 アメリカには日本のような一律35万円の出産育児一時金制度がなく、すべて民営化による自己負担のため、所得による格差のしわ寄せが妊婦たちを直撃する。入院出産費用の相場は1万5000ドルだ。 「体は動かせるけどまだふらふらするって伝えたら、その看護師、親切に病室から外に出るための車椅子を持ってきたんですよ」とナンシーは苦笑いする。 |
話は、最後のナンシーの苦笑に尽きている。
自己責任と効率化の徹底した姿がここにある。看護師の親切も、病院を追い出すための車椅子を差し出すという気遣いに転化させられてしまうという、何という皮肉か。
日本はまだ、アメリカの域にはたしかに至っていない。しかし、多くは貧困が原因の飛び込み出産が増加しているという日本の現実で、仮に医療費がアメリカ程度であれば、どんな事態に立ち至るかはおよそ見当がつくのではないだろうか。
冒頭の一節のあとに、筆者はつぎのように記している。
兵士やその親たちだけではない。民営化の犠牲になった教師や医師、ハリケーンの被災者や失業手当を切られた労働者たち、出口をふさがれている若者たちや、表現の自由を奪われたジャーナリストたちが今声を上げている。生存権という、人間にとって基本的な権利を取り戻すことが戦争のない社会につながるという、真実に気がついた人々だ。アメリカから寄せられてくるこの新しいうねりは、同じ頃日本で急速に拡がった憲法九条を守ろうとする動きに一つの大きなヒントを差し出してくる。 |
このアメリカの変化は、一つは今たたかわれている米大統領選でも垣間見ることができるのではないか。つまり、こうした貧困のもっとも底の部分にまで追い詰められた米国民は、ブッシュ現政権からの何らかの変化を期待し、ヒラリーに、あるいはオバマに期待を寄せている。しかし、その期待に彼らが応えられるか、これが問題である。堤氏は別のところで、ヒラリーも、オバマもその点では期待できない、同じだとのべている。05年、日本ではまさに集団ヒステリーともいえる経験をした。同氏は、大統領選の「狂騒」が、現状では、まさに日本での小泉への期待と同じものだと冷静に指摘している。
話を戻すと堤氏は、アメリカを貧困大国という。ならば、日本の現状は、半ば貧困大国といえるのかもしれない。
アメリカの歩んできた道を当たり前のように歩むのではなく、しばし立ち止まって考えてみることは、無駄ではけっしてないだろう。思い切って引き返すことが要る。
社会保障削減をこのまま続けることはできない、と舛添氏が吐露するのも、この道を進み続けるのに抵抗が強いからである。別のことばでいえば長年の自民党政治がゆきづまっているからである。
ようは、この道をすすみつづけるのか否かは、憲法にてらして考えるということだろう。すすみつづけることは、日本国憲法の理念からますます遠ざかることを意味する。
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【関連エントリー】
堤未果『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』と新テロ法案
ブックマークに ぬるまゆにつかってすごす日々 を追加しました。
勤務医・こんたさんのブログ。
医療、社会保障への鋭い視線を感じさせます。
もちろん、こんたさんの舌鋒はそれにとどまりません。
下記の画像をクリックすると、 ぬるまゆにつかってすごす日々 にとびます。
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ひろがる格差-国民健康保険加入世帯の現実
国民健康保険(国保)料の滞納によって国保証を取り上げられ「資格証」を交付された被保険者の2006年度の受診率が、一般の被保険者と比べて「単純平均」で51分の1に止まっていることが2月20日までに明らかになった。年所得200万円世帯(4人家族)の年間保険料が収入の2割以上の約43万円に上る自治体もあり、高い保険料等によって国保加入世帯の約2割・約474.6万世帯が保険料を滞納する中、保険料を「払える」世帯と「払えない」世帯で〝医療格差〟が大きく広がってきている。 国保負担能力で〝医療格差〟 |
国民健康保険の加入者がどんな実態にあるのかをみると、すぐれた制度といわれてきた国民皆保険制度が機能しているかどうか、これを判断できる。他の保険制度とくらべ、もっとも財政的基盤が脆弱だし、保険料はけっして安くはないからだ。
記事が伝えるところによると、いまこの皆保険が事実上の機能していないことを意味する。
引用部分にあるように、極端な格差が、受診という加入者のとる行為一つに如実に表れている。格差とは、払える世帯と払えない世帯のそれだ。ようは、相対的に所得の低い世帯も少なくない国保では、高い保険料が払えない世帯が増えてきて、資格証明書や短期保険証が発行されると、このことが受診を抑制していることが明らかになる。保険料を払えなくなると、医療機関から遠のいてしまう。
こうして、受診率という数字でみたら、実に344分の1という差異の大きさは、最低のところでは保険の底から抜け落ちているといってもよいだろう。事実上の無保険状態にあって、受診するできない環境に置かれている人がふえていることに注目しなければならないのではないか。
記事は、全国保険医団体連合会のていねいなデータを紹介している。ここに示されているのは、保険料の滞納が、保険から「はずされている」人をつくるという現実である。国保加入全世帯のうちに占める滞納世帯の割合は年々、ふえている。実際には、加入世帯の所得水準をもってすれば、保険料が高すぎるのである。もともと、厚労省は収納率向上を掲げて資格証の発行を義務づけたが、資格証の交付が収納率の向上どころか、むしろ滞納世帯がふえる結果になった。
ながめているだけでは事態は打開できない。
他のエントリーでふれたように、国と自治体の繰り入れ、それに加入者の保険料から基本的に成り立つ国保制度には、強い財政的介入がいる。とくに国庫補助の増額が必要ではないか。
さしあたり、資格証明書を交付するという方針を撤回すべきで、滞納世帯へのきめ細かい支援策が緊急不可欠であることはいうまでもない。
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お知らせ-9条世界会議
世界の趨勢は、武力によらない平和をさし示す9条の考え方を、世界の共通理念にしていこうという方向だといってもよいでしょう。
5月に幕張メッセで開かれる9条世界会議。
日本国憲法を起草した一人である、あのベアテ・シロタ・ゴードンさんもゲストとして参加します。
そして、04年にノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさんも会議にメッセージを寄せています。
同会議へご賛同をいただきますよう、心からお願いいたします。
◆プログラムはこちら。
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【関連エントリー】
読者のみなさまへ
これが「世界のキヤノン」か。
その10代目が御手洗富士夫氏だ。
日本では、労働者の3人に1人を占めるといわれる派遣など非正規労働者だが、御手洗氏が会長を務める務めるキヤノンの子会社の実態が国会質疑で俎上にのぼった。とりあげたのは、共産党委員長の志位和夫氏である。「毎日新聞」のコラムでもとりあげられ、話題にもなっている(たとえば、ここ)。同社のホームページは、ロゴの下に、Canonの語源には、「聖典」「規範」「標準」という意味があり、業界の規範として活動していくという企業精神が込められているとのべている。しかし、実態は、以下にみるようなもので、皮肉なものである(右写真、クリックすると拡大します)。
志位氏がとりあげたのはキヤノンの100%子会社、長浜キヤノン。複写機のトナーカートリッジなどを製造するという。
志位氏は、
- 直接雇用は1138人で、半数以上は派遣労働者であること
- 1製造ラインで19人が働く。そのほかに5人の交代要員がいるがこの24人すべてが派遣労働者
派遣法改正し“労働者保護法に” 志位委員長が質問(動画)
政府は「常用雇用の代替にしない」といってきたが、この原則が守られていないことが浮き彫りにされた。原則を担保する「直接雇用の申し込み義務」(派遣期間を超えた場合、派遣先が直接雇用を申し込む義務)を守らせることが急務で、そのためにも派遣労働者を保護するための派遣法の抜本的な改正が必要だ。
「毎日新聞」は今国会で最高の質問だとたたえているが、マスコミはほとんど無視している。私たちが読み、視て、ふれるメディアの情報はこの一例に典型のようにフィルターがかけられている。
私は企業の社会的責任(CSR: Corporate Social Responsibility)にふれたことがある(参照)。それをみとめるとすれば、財界のトップにいる御手洗氏の企業のこの横暴、無法ぶりは、どうなるのか。御手洗氏の責任が問われることにならないか。派遣労働の実態を暴き、改善を迫ることは、派遣労働者だけのものではなく、おそらく全労働者の生活改善に結びつくものだろう。家計が冷えて久しいが、共産党へのスタンスがどうであれ、それは火急の課題といえるのではないか。(「世相を拾う」08037)
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PS;キヤノンが派遣をどうとらえているか、以下の事実でよく分かります。
志位氏が示した同社の内部資料は「外部要員の活用は…労働コスト面からも非常に有益」と、リストラのための派遣導入を「告白」しています。実際、大分県のキヤノンマテリアルでは直接雇用1160人に対し、派遣・請負1720人と半数以上を占めます。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-02-09/2008020901_01_0.html
日米地位協定という存在。
首相、再発防止を要求 相次ぐ米兵の不祥事で 沖縄で起きた米海兵隊員による一連の不祥事について福田康夫首相は18日昼の政府与党連絡会議で、「米側に強く申し入れ、今後こういうことのないようにしたい」と述べ、再発防止を求める考えを強調した。これに関連し、外務省の西宮伸一北米局長は同日午前、ドノバン駐日米首席公使に電話し、「綱紀粛正を申し入れてきたにもかかわらず、誠に遺憾だ」と強く抗議、再発防止策の見直し作業を加速するよう要求した。 |
米軍の「不祥事」は、今にはじまったものではもちろんない。首相の再発防止要求は当然だが、本気で再発防止を米国にやらせようとするのなら、別の形でないといけない。
今回の事件では、加害米兵が基地外に居住していて、自宅に連れ込んだことも明らかになっている。
ところが、基地外での米兵の犯罪についても日米関係が影を落とす。いうまでもなく、それは日米地位協定である。
第九条 1 この条の規定に従うことを条件として、合衆国は、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族である者を日本国に入れることができる。 2 合衆国軍隊の構成員は、旅券及び査証に関する日本国の法令の適用から除外される。合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族は、外国人の登録及び管理に関する日本国の法令の適用から除外される。ただし、日本国の領域における永久的な居所又は住所を要求する権利を取得するものとみなされない。 3 合衆国軍隊の構成員は、日本国への入国又は日本国からの出国に当たつて、次の文書を携帯しなければならない。 日米地位協定 |
同協定は、つぎのように不平等、かつ別の意味でいえば屈辱的でもある(上記協定の下点線はブログ管理人)。
米兵が犯罪を起こしても、公務中であれば第一次裁判権は米側にある。
したがって、つぎの記事は正確さに欠ける。基地外に住んでいたから、逮捕が可能になったのではない。
地位協定見直しが解決されなければならない課題として浮き彫りになっている。
◇日米地位協定 身柄の拘束、今回は実現
在日米軍兵士が容疑者となる事件で、日本側の捜査に大きな壁となることが多い「日米地位協定」。今回は容疑者が基地の外に住んでいたことなどで、日本側の身柄拘束が可能になった。 地位協定は、日本に駐留する米軍の法的地位を定めた日米両政府間の協定。米兵が事件を起こした場合、現行犯など犯罪事実が明白なケースを除いて、米側が身柄を拘束するとの規定がある。 日米両政府は02年、従来の殺人や強姦(ごうかん)に加えて、すべての犯罪で身柄を引き渡すとする運用改善に合意したが、身柄引き渡しの裁量は依然米側に残されており、米軍基地がある地域では、地位協定自体の改定を求める声が出ている。 |
だから、基地外に住む米軍関係者は住民登録を免れるため、居住の実態は把握されていないという。
しかも、自治体が把握をしようと思っても、地位協定をたてに公表を阻まれるのが現状である。
住民登録はおろか、パスポート・ビザも免除されるという特権的地位にある米兵。彼らにとって日本は無法地帯、どんな行動も許されると理解するに等しい特権を彼らは与えられている。日本は、通常の公共空間ではないのである。これが今回の事件の背景にある。
14市町村が抗議決議 読谷「基地撤去」踏み込む 米兵女子中学生暴行事件を受け、県内7市町村議会が15日午前、臨時議会を開き、抗議決議と意見書を全会一致で可決した。読谷村議会は、県内議会で初めて基地の撤去も要求。4議会が日米地位協定の抜本的な見直しを求め、3議会が米軍基地の整理縮小と削減を求めた。同事件の抗議決議などを同日午前までに可決したのは14市町村になった。同日午後には西原町と渡嘉敷村、18日にうるま市、与那原町、金武町議会が抗議決議を予定している。 抗議決議を可決したのは宜野湾市議会(伊波廣助議長)、糸満市議会(玉城朗永議長)、南城市議会(川平善範議長)、八重瀬町議会(神谷信吉議長)、嘉手納町議会(伊礼政吉議長)、読谷村議会(前田善輝議長)、中城村議会(新垣善功議長)の7議会。 読谷村議会では「その都度米軍当局に抗議し、綱紀粛正を要求してきたが、何ら実効性が見えない」などとして、日米地位協定の見直しに加え、同事件に関連して県内議会で初めて基地撤去まで踏み込んで要求した。 |
高村外相は、「(現在の)地位協定は(駐留米軍受け入れ国の)グローバルスタンダードだ」と指摘。「この事件がいくら忌まわしい事件だからといって、それ以上のことを外交上要求するのかどうか」と述べ、見直しを否定している(参照、魚拓)が、だったら事件根絶のために、同協定見直し以外にどんな方法があるのか示してもらいたい。基地撤去や安保条約の廃棄を視野にいれざるをえない。
米軍は沖縄から去るべきだ。
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消費税で社会保障を語れるか。
日本はまだまだ安いということと、消費税は社会保障のために上げざるをえないと、この2つのことを周りからよってたかっていわれると、少々上げてもやむなし、と考えたくなるのが、日本人なのかもしれない。あるいは、それに無関心を装うのもまた日本人か。
政府税調も、自民税調も、さらには民主党税調・藤井裕久も消費税増税を打ち出した。しかも「社会保障を目的に」と冠をつけて。加えて熱心なのは、経団連である。「今後のわが国税制のあり方と平成20年度税制改正に関する提言」をすでに公表している。昨年9月のことである。
消費税の利点を踏まえれば、わが国産業の国際競争力を維持しつつ、年1兆円のペースで増大する社会保障費用や息の長い少子化対策のための財源を安定的に賄い、かつ、債務残高のGDP比を着実に減少させていくためには、国・地方を通じた徹底した歳出削減を前提として、消費税率を引き上げ、今後のわが国における基幹的税目として役割を拡大していく必要がある。 |
89年に税率3%で導入された消費税は、途中で地方消費税が創設され、消費税税率4%とあわせて5%(*1)となった。07年度予算ベースではこうなる。消費税4%で税収10兆6000億円。地方消費税1%をふくめると13兆2500億円である。つまり1%で国民一人が2万円を負担する勘定になる。
こんな一網打尽に国民に負担させる消費税に、なぜ財界は血道をあげるのか。
こんなからくりがある。
消費税が、[課税売上-課税仕入]×5%で計算される。ところが、世界をまたにかける輸出産業は法外な利益をもたらす。
それは、輸出売上には消費税を課さないという租税特別措置、つまり優遇税制が存在していることによる。不当な利益確保といえる。たとえば、トヨタ自動車は上表のようになる。約2900億円の還付を受けているのである(上図をクリックすると拡大します)。
消費税をあげればあげるほど、輸出産業は不当な利益を得る。一方で、低所得者の税負担割合は高くなってしまう。税率が上がれば上がるほど低所得者の税負担割合が高くなり、輸出産業の不当な利益確保を許してしまうという結果になる。
だから、皮肉なことに、巨大な産業を優遇する一方で、所得を再分配し、社会的な格差を縮めていこうとする憲法の意思を税制面で否定してしまうのである。憲法25条・国民の生存権はないがしろにされる結果になる。
憲法が規定するのは、応能負担原則だ。つまり、税負担は能力に応じて支払うという考えだ。同時に、国民は「平和に生存する権利を有する」し、社会保障は国の義務として位置づけられている。だから、税金は国民の生存権を保障するために使われなければならない。
話を元にもどすと、財界や大企業の消費税増税の主張には、不当な利益を得るという側面とともに、大企業への減税の必要性を求める意思がこめられている。実際に、法人税率は順次引き下げられ30%にまで下がっている。所得税でも税率区分が縮小されてきた。歳入減がしばしばいわれる。しかし、その主な要因は、この間の税制改正によって憲法で定める応能負担原則を無視した税率の引下げだともいえる。
その上に、消費税引き上げが主張されるとき、再三、日本の消費税は低いといわれる。しかし、実際には世界でも最高水準にあるといえる。たしかに日本の税率は今、他国にくらべて低いかもしれないが、税収比率でみるとまったく遜色ない(下図)。
日本 | イギリス | イタリア | アメリカ | |
---|---|---|---|---|
消費税率 | 5.0% | 17.5% | 20.0% | 0.0% |
国税収入比率 | 24.60% | 23.70% | 27.50% | 0.0% |
経団連が多額の政治献金を支払う際に政党の「通信簿」をつけることはよく知られている。その際、政党を評価する基準に「消費税の引上げを含む抜本的改革をする」という優先事項が盛られている。経団連から献金をもらおうとすれば、消費税引き上げに賛成しなければならないのである。先にあげた政党の消費税増税への合唱ともいうべき事態は、その忠実な実践にほかならない。
憲法がいう応能負担の原則にたち、生存権の保障とは何か、あらためてとらえ返すことが必要ではないか。財界・大企業が自らの権益確保を前提に、政党を支配する事態にいたっている今、それが、なおいっそう重要である。
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*1;地方税である地方消費税は、以下のように定められています。
消費税4%×(100分の25)=1%
両方の税をあわせて税率は5%となります。
「かかりやすさ」はどこにあるのか。
フリーアクセスの制限と「尊厳死」
ここに、こんな数字がある。日本とスウェーデンの比較である。
各国の医療費の支出をGDP比でながめた場合、(右図、クリックすると拡大します)
- スウェーデン 7.9%
- 日本 7.5%
となっている。スウェーデンが真ん中からやや下、日本はそれよりも下位にある。
医師の数は人口1000人比でみると、(参照)
- スウェーデン 3.4人
- 日本 2.0人
だから医療費支出も、医師数もスウェーデンがやや上回るという位置関係にある。
医師1人あたりの診察件数は、
- スウェーデン 2.3件
- 日本 14 件
である(2000年)。
宮本太郎氏によれば、スウェーデンの医療改革の目標は0、7、90の原則として定式化されている。これは、医師とコンタクトをとるのはその日のうちにできる。つまり0。実際に医師に診てもらうのは7日以内。治療が開始されるまでの90日以内。これが目標となっているらしい。
宮本氏の講演録でこのことを知ったとき、狐につままれたような気がした。最近またクローズアップされている福祉国家。その代表格でもあるスウェーデンにして、このアクセスの実態に驚かされた。日本に住む私たちは、こんな中に置かれたら、たちまち怒り出してしまうのではないか。実際に診てもらうのに3カ月もかかるなど、とうてい考えられないのである。
裏をかえせば、それだけ日本では医療へのアクセスがきわめていいということだ。かかりやすさが西欧にくらべてはるかに高い。
このアクセスのよさは、まず国民皆保険制度と自由開業医制によって保たれてきた。だれもが保険で診てもらえる。そして街のどこかに開業医がいる。日本の医療制度の発達史をみてみると、明治以来、西欧医療を導入してはじめて日本に病院ができたといえる。大学病院がつくられた。いうまでもなく、そこは教育の機関でもあって、西洋医学を学んだ医師をまずつくらねばならなかった。そして、その医師たちが開業していく。病院はあくまで教育機関だった。結果的に日本の医療はこの経過からも分かるように、制度的には外来医療が優遇されてきたといえるだろう。それは長年、開業医が主流をなす日本医師会がステークホルダーとして機能してきたことにも表れている。逆に病院の医療は相対的に後塵を拝してきた。日本のすぐれたアクセシビリティはこうして築かれてきた。
けれど、こんなアクセスのよさとあいまって、医師数が絶対的に不足していることも重なって、むしろ日本では「3分診療」ともいわれる一人の患者を医師が診る時間の少なさもまた、負の特徴となっている。先にあげた一人あたり医師の診察数とそれは反比例する。
いくつかの指標を示した。各国と見比べていただきたい。
安い医療費、少ない医師。その反面で、国際的にも高い評価を受ける日本医療(参照)。その根底には、だれもがその場で医療サービスを受けられるという国民皆保険制度と現物給付がある。フリーアクセスが形作られている。
しかし、皆保険制度も、現物給付も、たとえば国民健康保険制度の実態にみられるように、そして老人医療の償還制にみられるように風穴があけられつつある。その上に絶対的な医師不足が根底にあって医療というしくみのさまざまな面で亀裂をもたらしている。
アマルティア・センは福祉を考える際、well-beingという観点を示した(たとえば『貧困の克服』)。今、日本のアクセスのよさをこの点であらためて評価しなおすことが要る。(「世相を拾う」08036)
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崩れかけた国民皆保険-貧困を投影。
日本では国民が何らかの公的な医療保険に加入している。正確にいえば、加入することになっている。
しかし、だれもが保険に入っているというこの国民皆保険制度が、いま危機に直面している。それは、保険制度からこぼれおち、さりとて生活保護も受給していない事実上の無保険者が存在しているからである。本人の意思とは関わりなく。アメリカならいざ知らず、この日本において。
この実態に『クローズアップ現代』が迫った。そのことを当ブログでとりあげた(参照)。
日本の社会保障の根幹をなす国民健康保険。いま、貧しくて保険料を支払うことができず、医療費10割負担の「資格証明書」を交付される人が急増し、その結果、命を落とすケースが全国で相次いでいる。実は、「病気の人々は保険証を維持できる」というセーフティネットがあるにもかかわらず、それが機能していないのだ。背景には、滞納世帯が増え続ける中、「資格証明書」を積極的に交付し、徴収率を上げることに躍起になっている自治体の姿がある。 |
これは、そのときの番組案内なのだが、低所得者層が多い国民健康保険(以下、国保)制度にたとえ「資格証明書」などのしかけを施したところで根本的解決はとうてい望めない。
国保財政は自治体からの繰り入れ、国庫補助、保険料からなっていて、自治体が運営主体である。国庫補助が切り下げられると、自治体は繰り入れを増やすか、加入者の保険料を値上げするか、いずれかに選択は限られる。身動きがとれなくなる。ましてや三位一体改革のなかで繰り入れ増を自治体がしぶるのは容易に想像がつく。
ならば、保険料値上げは可能なのか。それがまた、滞納をうむのではないか。こう考えてしまうのだ。
一つの調査がある。国保加入者の実態の一端がこれで分かる。
上で低所得者が多いといったが、この調査でも歴然としている。
加入世帯の所得を認識していたのは29自治体。その集計によると、国保加入世帯153万739世帯のうち、世帯所得が年間100万円未満と回答した世帯は60.7%、100万円以上150万円未満は14.1%、150万以上200万円未満は8.4%。全体の約8割が200万円未満であることが分かった。 所得とは収入から必要経費を引いたもので、所得100万円は年金収入で表すと220万円、現役世代だと収入200万円とおおむね置き換えることができる。
|
しかし、調査によれば、高い保険料を払いたくても払えない実態があるのが読み取れる。
100万円未満の世帯所得というのは、月収20万円にもならない。そこから、保険料が払えるのかというと、きわめて深刻な水準といい切ってよいだろう。通常、保険料は、均等割、人頭割、所得割で決まるため、所得が少なくても、均等割と人頭割で一定の金額になってしまう。月20万円以下の収入でいったいどれくらいの保険料が払えるのか。世帯人員が多いと、とても払える水準ではない。
先のエントリーでものべたが、国保を制度として成り立たせるためには国庫補助が強化されないといけない。それが必須の条件だと私は思う。
記事にあるように、国保制度は「支え合いの中で誰もが医療を受けるために創設された医療保険制度」という位置づけを明確にしながら発足している。
その原点は、皆保険制度に価値をおくとすれば、けっしてはずしてはならない。(「世相を拾う」08035)
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【関連エントリー】
「クローズアップ現代」の警鐘-国民健康保険が崩壊する
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