森羅万象、政治・経済・思想を一寸観察 by これお・ぷてら
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数字の裏側- 失業は減ったのか?!
たとえば、ぼろ儲けしながら、大量の期間工や派遣労働者の首を切る大企業を徹底して追及し、救済策を今こそ示すことに私ならむしろ価値を置く。
そこで雇用情勢だが、失業率が低下しているそうだ。
低下するとは、いったいどうしたことか。だいいち、米国に端を発した金融危機が日本の実体経済を確実に襲っているのに。その結果、派遣労働者にとって明日がどうなるのか、不安を抱え続ける毎日ではないか、そう予測させるに十分なほど、自動車メーカーの派遣切りが続いているのに。
そう考えると、失業率は低下どころか、上がると考えるのが普通だろう。
しかし、つぶさにみると、失業率低下についての記事の視点、扱いがメディア各社でちがっている(*1)。みたなかでは、以下の記事が丁寧だと思える。
記事はこう記している。
総務省が28日発表した労働力調査によると、10月の完全失業率(季節調整値)は3.7%と9月(4.0%)から低下し、昨年7月(3.6%)以来の低水準となった。
ロイターが民間調査機関に行った聞き取り調査での予測中央値は4.2%となっていたが、これを大きく下回った。 就業者数は前年比36万人減と9カ月連続で減少し、9月の29万人減から減少幅が拡大した。一方で、失業者数は前年比16万人減となり、9月の同2万人増から減少に転じた。減少するのは3月(13万人減)以来7カ月ぶり。 職探しをあきらめた人口がカウントされる非労働力人口は、男女ともに増加した結果、前年比56万人増となり、9月の同36万人増から増加幅が拡大した。 総務省では、就業者の減少傾向に加え、就業者から完全失業者や非労働力人口にシフトする動きがみられることから、今後の雇用状況については「一層注意する必要がある」との認識を示した。 特に、非労働力人口の増加は「過去の景気後退期にもみられている」とし、今後は就業者数、失業者数に加え、非労働力人口の動きも注視する必要がある、との見解を示した。 |
完全失業率が数字の上で低下しているのは事実なのだが、それでは雇用された者が増えているのかといえば、そうではなく、失業率の低下が、非労働力人口に起因する可能性もある。それを同時に記事は伝えている。
記事は、9月、10月を比較して(数字はいずれも前年比)、
- 失業者数は、2万人→△16万人と減少
- 就業者数は、△29万人→△36万人と減少
- 非労働力人口の増加幅が36万人→56万人と増加
という結果を伝えている。
つまり、10月を例にとると、就業者が36万人減っているのに、失業者は16万人しか減っていない。差し引き20万人がどこかに移動している。結果、就業していない者が就業者減36万人+失業者増16万人=52万人増となる一方、非労働力人口には職探しをあきらめた人もふくまれ、56万人増だから、差し引き20万人はほぼ非労働力人口に吸収されたとみてよいだろう。
もともと日本の失業者の定義は、つぎのように狭い。
完全失業者とは、①月末の一週間に一時間以上仕事をしていないこと、②その一週間に求職活動をしていること、③仕事があればすぐに就ける状態にあること―などの条件を満たす人を指している。また、自衛隊員も労働力にカウントしており、軍人を労働力に入れない米国とは異なる。
ようは、完全失業者の定義は厳しく、分母の労働力は広いわけだから、失業率は各国と比較しても、実態と比べても少なくでることが指摘されている。
記事に戻ると、いずれも官庁発表の数字だが、各社報道でこれほどのちがいがでるのは、今の局面での雇用問題、国民の暮らしへの関心のありようが異なっているということを端的に示している。
官庁の発表も失業率が減ったことに力点を置いたものだったと想像される。だが、それにしても時事通信社などの記事(下記参照)は、国民にたいするまなざしを欠いたものといわざるをえない。その姿勢は、明確な違法をふくむ大企業の派遣切りにたしいても黙ってしまうメディアの態度と連続しているのだ。
(「世相を拾う」08250)
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*1;引用した記事以外では以下。
10月の有効求人倍率0.80倍に低下 失業率改善も雇用情勢は悪化 (日経)
有効求人倍率、大幅低下0.80倍=4年5カ月ぶり低水準-10月 (時事通信社)
同じ地位協定なのだが- イラクと日本
来年以降の米軍のイラク駐留を可能とすると同時に、2011年末の撤退期限も明記したイラク駐留米軍の地位協定が、イラク国民議会(定数275)で可決された。出席議員198人のうち149人が賛成した。正副大統領3人で構成する大統領評議会の承認を得て発効する。
これにより、米軍など多国籍軍にイラク駐留を委任した国連安全保障理事会決議の期限が今年末に切れた後も、米軍がイラク駐留を続けられる法的根拠が整う。 この協定はまた、03年3月にイラク戦争を始めた米軍のイラクからの撤退プロセス、出口戦略の始まりとなるものでもある。難航した協定の成立を歓迎したい。 今後のイラクには、治安回復、国内対立の克服、経済復興などの課題が山積しているが、この協定がイラクの真の主権回復、独立の始まりになることを願う。 協定はこのほか、(1)来年6月までに都市部から米戦闘部隊を撤退させる(2)任務外の米兵の重大犯罪の裁判権はイラク側が持つ(3)米軍はイラクの領土、領空、領海を他国への攻撃に使用しない-などを規定している。いずれも米側が譲歩した項目とされる。 議会での審議では、少数派のイスラム教スンニ派が、協定の是非を問う国民投票の実施を要求、紛糾した。これも多数派のシーア派やクルド人会派が受け入れ、来年7月30日実施と決まった。 国民投票で否決されれば、協定は1年後に破棄されるため、危うさも残った。だが、米国のオバマ次期大統領は「就任後16カ月以内(10年4月ごろまで)の撤退」を公約としてきた。このため、否決でも影響は少なくて済む。 今後は、米軍撤退に伴う力の空白を生まないことが大事である。米軍の重しがなくなれば、テロリストの暗躍を許し、イラク国内の宗派、部族間の主導権争い、対立激化も招きかねない。 イラク国内の対立は、スンニ派主流の周辺アラブ諸国、シーア派のイランなどをかかえる地域の国際情勢も不安定化させる。 そうした事態を防ぐには、イラクの軍、警察など治安部隊の強化が急務だ。オバマ米次期政権による撤退作戦も、イラクの安定を第一にすべきである。 国際社会がイラクへの関心を薄めることなく、イラク復興を支援していくことも、安定化の基礎であることはいうまでもない。 |
これは、「しんぶん赤旗」の記事ではありません。産経のものです(【主張】米軍地位協定 イラク「独立」の始まりに)。
どうしたことでしょう、あの産経が。こんな感想すらもってしまいます。
ところで、国連多国籍軍の駐留をこれ以上、望まないという立場をイラク・マリク政権はすでに明確にしていましたから(参照)、今回の地位協定の基本方向はいわば想定されていたことだといえます。
これによって、イラクは主権回復へ大きく踏み出すことになるでしょう。明確に米軍の行動を規制したのですから。その限りで、産経の表題の、イラク「独立」の始まりに、というのはまちがいではない。
ただ、「米軍撤退に伴う力の空白を生まないことが大事である。米軍の重しがなくなれば、テロリストの暗躍を許し、イラク国内の宗派、部族間の主導権争い、対立激化も招きかねない」とのべるところは、やはり産経新聞。武力による解決など不可能であったことは、イラクのこれまで、米軍駐留をみれはおのずと分かるのですが。力による政治の観点で記されているのですね。
このニュースが伝えられると、やはり日本での日米地位協定にふれざるをえません。日米地位協定ほど、日本と米国の間の関係性が鮮やかに描かれているものは他にないでしょう。
そこで思うのは、イラクという地での、当のイラクと米国の関係について、以上の記事のように一国の独立とのかかわりでとらえられるのに、どうして日米関係ではその視点が欠落するのかということです。イラク「独立」の始まりという視点をもってすれば、日米地位協定が存在する以上、日本にはたして主権が存在するといえるのかという疑問を抱かざるをえないはずです。
日米関係を前にすると、たちまちペンが折れる、声も出ない。ひらたく表現すれば、こんな事情が、政治においても、メディアの姿勢においても厳然としてある、これは否定できないのではないでしょうか。日米の今日の関係を所与のものとしてではなく、一度、根本から問い直す必要がある。
イラクの今回の地位協定を、主権回復の第一歩とみる立場は、日本における地位協定を破棄するという立場でなければ整合しないのです。
(「世相を拾う」08249)
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【関連エントリー】
「毎日」記者の目は地位協定をどうとらえたか。
ブックマークに追加しました- A PLACE IN THE SUN
遅ればせながら、紹介します。
A PLACE IN THE SUN。pochi_さんのブログです。
ブログのカテゴリーで一際、人の目を惹きつけるのは「浜田省吾」ではないでしょうか。
その過去のエントリーをのぞくと、ある法則性があります。
おそらくpochi_さんにとってのメモリアルなのでしょうが、その一つひとつに、浜田省吾の楽曲が配置され、構成されているのです。
たとえば、
長女の誕生日の日に――SHOGO's Words No.27「Happy Birthday Song」
63回目の8月15日――SHOGO's Words No.26「RISING SUN(風の勲章)」
のように。
pochi_さんの記憶を誰も我がものにすることはむろんできないのですが、ひとたびその文章にふれると、それを共有しているかのような気分にさせられます。
ぜひお立ち寄りください。
下記の画像をクリックすると、 A PLACE IN THE SUN にとびます。
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党首討論の決算書
私は以前に、安倍・小沢の党首討論をB級映画だと評したことがあります(参照)。今回も、この域を少しもでませんでした。
以前にもまして民主党が政権交代などと強調しているものですから、自然とこちらの見る目も、では将来を託せるものかどうか、そこに焦点を置きたくなるのです。
その点からいえば、結論は、ノーでした。どちらにも私たちの将来を託せないと。
まあ、この党首討論をめぐっては、自民党側が討論を再三申し出て、民主党がこれに応じてこなかったと伝えられています。そんないきさつが醸し出す、もったいぶりは、あけてみると、大したことはほとんどなかったといえる。数日前のエントリーで、「信用できない」「チンピラの言い掛かり」などという言葉の応酬を、あたかも対決と勘違いしているかのようだとのべたのですが、結局、討論はその再来であったような印象です。
重箱の隅をつつくような。討論はそんなものではなかったでしょうか。
つまるところ、この2つの政党の党首の討論が迫力もなく、面白くもないのは、2つの政党のよってたつところにちがいがまるでないために、政局やいちいちの対応という細かい、ほとんど国民にとってはどうでもよいところに差異を求めようとする、そんな強調が討論でははっきりしたように思えます。
二次補正予算案を語るのはよいのですが、たとえば補正の根幹には、国民生活に軸足を置けるかどうか、がある。あるいは景気刺激策でも、真に国民生活を温めるために消費税減税など考えてよさそうなのに、2党からは一向にでてこない。それもそのはずでしょう。
そのためには、今の日本の政治のあり方をゆがめている大企業にたいする毅然とした姿勢が求められているのでしょうが、自民党はもちろん、民主党もそこは弱い。一例をあげると、日々、伝えられる派遣労働者の首切りにどのようにこの2党が対処したというのでしょうか。
党首討論がまったく面白くないのは、こうした背景が深くかかわっています。実際の政治の焦点は、自民、民主の国会でのやりとりとはちがったところにあるといえるのではないでしょうか。
ですから、とりあえず今回の党首討論の決算書も、以上の意味で赤(字)でした。プラス評価などは考えられないのです。
(「世相を拾う」08248)
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麻生首相に社会保障は語れない。。
社会保障は、その対象にあらかじめ誰かを排除したものではないはずです。ですから、首相の発言は認識不足もはなはだしいといって過言ではないでしょう。
あえてこんな言い方をすれば、何もしない人、できない人でも救う、これが社会保障でしょう。
首相が発言したのは、経済財政諮問会議でのこと(記事参照、議事録)。
経済財政諮問会議(参照)では、およそ常識的とはいえない発言も許容される環境にあるということでしょうか。ちなみに同会議メンバーはこんな顔ぶれです。
- 麻生 太郎 議長 内閣総理大臣
- 河村 建夫 内閣官房長官
- 与謝野 馨 内閣府特命担当大臣(経済財政政策)
- 鳩山 邦夫 総務大臣
- 中川 昭一 財務大臣
- 二階 俊博 経済産業大臣
- 白川 方明 日本銀行総裁
- 岩田 一政 内閣府経済社会総合研究所長
- <張 富士夫 トヨタ自動車株式会社取締役会長
- 三村 明夫 新日本製鐵株式会社代表取締役会長
- 吉川 洋 東京大学大学院経済学研究科教授
この構成から、社会保障を充実させる方向が出るべくもありません。そうではなく、記事が伝えるように、「社会保障費の抑制や効率化」を課題に、構造改革をいくらか手直しをやるにしても継承していこうというのが議論の柱に置かれています。
財界のトップと一部の学者という有識者と閣僚によって構成される同会議は、首相がトップダウンで政策を決めるための機関として小泉首相時代に生まれたものです。かつて経団連では、当時の委員、奥田氏の意見はほぼ通っていると豪語していたくらいですから、財界・大企業の意向が大きく反映する議論の結果であることにちがいはありません。
これもまた、現政権がどこをむいているのか、それを如実に示すものではないでしょうか。
さて、麻生首相に戻ると、首相が払う、払わないと語るのは勝手でしょうが、しかし、あらかじめ誰かを排除するという首相の考え方は、そもそも社会保障を語れるものではありません。社会保障を語るには、すべての人びとを視野に入れてはじめて語れるものではないでしょうか。
(「世相を拾う」08247)
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追記;あらかたを早朝にまとめておいたのですが、帰宅してみると、首相は釈明していました。けれど、釈明したからといって、彼の思想がかわるわけではありません。
英国の消費税引き下げ- 日本との落差
日本で、なぜこんな対策が実現しないのか。その落差を、しみじみ考えさせるニュースだった。英労働党政権天晴れ。
イギリス:消費税引き下げ 3兆円近い景気対策を発表 英政府は24日、総額約200億ポンド(約2兆9000億円)に上る景気対策を発表した。個人消費を支えるため、日本の消費税に当たる付加価値税(VAT)を少なくとも1年間、17.5%から15%に引き下げ、125億ポンド規模の減税をするのが柱。欧州で最悪の事態に陥っている英景気をテコ入れできるか注目される。 欧州主要国で消費税率を引き下げるのは初めてとみられ、ブラウン首相は24日の講演で、「異例な時だからこそ、異例な行動が必要だ」と述べた。ガソリンにかかる燃料税の引き上げや中古車への課税を先送りするほか、中小企業への法人税の引き上げも見送る。 財源確保のため、国債を増発するほか、年収15万ポンド超の富裕層に新たな税収枠を設定し、12億ポンドを徴収する。これに伴い、来年度の財政赤字は、1180億ポンドに拡大する見通しだ。 |
翻って日本では、こんなことは期待できない。
たとえば、いまの民主党。
民主党からは、こんな政策は絶対に出ない。因みに、同党の景気浮揚政策をとくとご覧あれ。仮に紙をも透すような眼でみても、どこからもそれを見出すことはできないだろう。ましてや、わが自公政権がそんな理屈にあった政策を提案できようはずもない。
平たくいえば、この国では聖域というものが、厳然としてあるのだから。これをほとんど、まるで向こう見ずのように執拗に指摘しているのは今、共産党以外にはない。その他の政党においては、手をふれてはいけないものが厳然としてあるのだ。
元にもどると、英労働党政権が打ち出したのは、消費税の一時的減税。理にかなっている。日本でも、国内消費の冷え込みがたびたび指摘されているわけで、直接、効果を期待できる方途の一つとして消費税減税があると大方が考えるところだろう。
英国が踏み切ったのは、それだけではない。一方で、高額所得者への課税強化を宣言した(参照;英、消費税2.5%下げ発表 景気対策で09年末まで)。
英国では、景気刺激策に国内総生産の1%に相当する総額200億ポンド(約2兆9000億円)をあてるという。日本でいえば、5兆6000億円程度に相当する。消費税引き下げはその一環の対策だ。12月から来年末まで実施するらしい。
同国の財務相は「全員を支援する最良で最も公平な方策」「商品とサービスを安くし、消費を促進し、成長を刺激する」とのべたというのだから、まさに拍手をしたくなる。
「信用できない」「チンピラの言い掛かり」などという言葉の応酬を、あたかも対決と勘違いしているかのような日本国の二大政党党首。
明快で、的確な景気刺激策をいまこそ提起してもらいたいものだ。
といっても、米国にも、そして財界・大企業にも、モノがいえないという点で同じなのだから、まったく期待はできない。
だから、逆に、たとえばトヨタ・奥田発言みたいなものが横行するのだ、わが国では。
(「世相を拾う」08246)
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競争だよ、世の中は- 橋下知事の言い分
競争だよ君、世の中は。
こんな調子で橋下知事はいうのでしょうね。
伝えられるところによれば、教育とは競争であるかのような橋下氏の発言です。
「子どもが将来の夢を実現するためには競争に耐える力をつけることが必要」ですって。
もっと凄いのは、
橋下知事は「競争できる子から競争を奪ってはいけない」と答えた(参照)
とか。
ここまでくると、私には、経団連が、日本の人づくりと教育について、つぎのようにのべていたのを思い浮かべるのです。冒頭から競争命みたいな文章なのです、これは(参照;21世紀を生き抜く次世代育成のための提言)。これが、財界の考える日本の将来にむけた人づくり戦略なのです。一読いただいて、どんな感想をもたれるのでしょうか、皆さんは。
資源の乏しいわが国にとって、競争力の源泉は人材である。とりわけ、少子化・高齢化が進展する中で、活力ある経済・社会をつくるためには、国民一人ひとりが目的をもって生き生きと活躍することが必要である。 戦後の高度成長を可能としたのは、国民一人ひとりの高い勤労観と倫理観に加え、全ての国民に対して高い水準の義務教育が実現し、均質な人材が社会に送りだされたことであった。 これに対して、21世紀はIT化、グローバル化が進展し、情報が瞬時に共有化され、多様な価値観がぶつかり合い融合する時代である。その中で、わが国企業は、創造的な製品、サービスを供給することでグローバルに展開される競争を勝ち抜いていかなければならない。 |
これはまさに、橋下氏が強調するところと寸分もちがわないのではないでしょうか。競争を勝ち抜ける人材をつくる、これこそが教育だといわんばかりです。
ですから、「情報公開の原則」などをちらつかせて、学力テスト結果の公表を迫ることになる。点数競争の道を生徒に歩ませることになる。
じっさい、文科省はどんな立場をとってきたでしょうか。
文部科学省の実施要領は、「序列化や過度な競争につながらないよう十分配慮」「都道府県教育委員会は、個々の市町村名・学校名を明らかにした公表は行わない」などと明記しているのです。
だとすれば、結果公表はこの実施要領に照らしても問題だと指摘するのが筋でしょう。たとえば学力テストの結果の公表を求めている一人は財界です。日本経団連は「結果を学校ごとに速やかに公表する」ことを「重点的に講じるべき方策」の一つに掲げています。教育を点数至上の競争原理で染め上げて、安上がりに、従順な労働者をつくる教育にしようとしてきたといってよいと思います。
橋下氏はこれに追随しているにすぎない。
氏の政治的立場がここでも立証されているわけです。
ただ、財界・大企業のために。そこに、立脚点がある。
それは、例をあげれば、日本国憲法にたいする態度、あるいは道州制にたいする態度にも、鮮やかに表れているわけですけれども。
競争を謳歌したネオリベ。いまや米国の今日にまつまでもなく、その負の遺産は万人の共通の認識になりつつあります。自由競争の結果、社会にどんな影を落とすのか、米国に端を発したここ1年余りの世界経済の展開は、それを如実に示しているのではないでしょうか。
したがって、だから、記事で伝えられる人びとの発言に一縷の望みを私は見出すのです。こんな発言が出るうちは、大阪はまだ復元力をどこかに蓄えているのではないでしょうか。橋下の発言と対比のうえで。
(「世相を拾う」08245)
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麻生政権、最初の60日
米国には「最初の100日」があるらしいが、日本にはない(参照)。麻生政権が誕生しすでに2カ月がたった。だから、この2カ月を、おおまかにふりかえってみる。
繰り返しのべるように、この政権にもまた、改憲をめざし、構造改革を継続することに政権の使命がある。
といっても、この2カ月間、時が経つとともに少なくとも考えていたような筋書きからは遠ざかっているようにみえる。
もはや政権の維持そのものが使命となっている。
総裁選も、補正予算も、人心を集めることができなかった。目算がはずれた。総選挙にうってでるタイミングはことごとくつぶされてきたわけだ。
給付金も思いつきみたいなもので、練り上げられたものでけっしてないことは、その後のなりゆきをみれば一目瞭然ではないか。
G20もしかり、金融規制に乗り出したサミットそのものの成果はあっても、そのなかでの日本の位置などどこにも確認できなかった。日本はただ、宗主国・米国への追随を首相が強調したにすぎなかった。世界の認識は、すでに米国一国支配から解き放されているというのに。
これだけの障壁に直面し、手の打ちようがないほどにゆきづまっているのに、民主党は、一次補正予算案に賛成した。新テロ特措法延長案の通過も認めた。だいいち派兵恒久法を志向する同党にとって延長法案の通過などたいした意味もない。ただただ早期解散に至らせんがために、こんな「奇策」に出た。
けれど、ゆきづまったのは自民党だけではない。この作戦が破綻すると、こんどは「対決」姿勢を強調するという方針に転換。しかし、どこにほんとうの意味で自民党に対決する場面があったのか。
対決とはこんなものか。いまは、二次補正予算を出せ、出せとさけんでいるにすぎない。一方でテロ法案は採決可だという始末だ。
こんなていたらくが、日本政治の現状である。この二党の間の政権交代とはどんなものか、麻生政権の2カ月をみればほとんど察しがつくだろう。二党の間に、言葉の上での話であって、対決など存在しない。
ビル・トッテンは、米国の二大政党政治を「薄い青の色と、もう少し濃い目の青の色のどちらを選択するのかというような問題に過ぎない」と表現しているが、海を隔てた日本の自民、民主両党のちがいもまた、その程度にすぎない。
この麻生政権誕生後の2カ月は、自民党政治というものが破綻の深みにいっそう足を踏み入れたことを示すばかりでなく、自民、民主の違いなどほとんどないことを我われに教えている。
(「世相を拾う」08244)
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総選挙の三つの可能性
解散総選挙は予測がつかない。ただ私たちの眼前で繰り返されるのは、自民党と民主党、両党の迷走ばかりだ。
二代つづけて政権を投げ出したのだから、やり残しの課題が当然ある。それは、改憲と構造改革の継承だ。引き継ついだ麻生政権も、この2つの課題から逃れることはできない。
だから、首相になって真っ先に彼が強調し、約束したのは日米同盟であったし、派兵恒久法がことあるごとに取りざたされ、今国会では、新テロ特措法延長法案が自民党の重要法案に位置づけられている。派兵恒久法は改憲に連続する。
もう一つは構造改革の推進の課題だ。たしかにとくに小泉以来の構造改革がさまざまな面で破綻を来たし、たとえばそれにつづく後期高齢者医療制度も手直しに手直しを重ねてはいる。一方で消費税増税をセットにしながら構造改革を貫こうとする意思は明確に保持されている。
本来であれば、この2つが争点である。つまり、構造改革をつづけるのか、それとも国民本位の社会保障・福祉の充実へ転換するのか、そして、海外派兵の拡大をめざすのか、それとも武力によらず外交努力による平和・安全保障の枠組みをめざすか、それが問われる選挙だといえる。
本来といったが、2つの争点では、自民党、民主党ともに基本的方向は一致しているため、単純には争点になりにくい。だから、政権交代の強調であるし、景気回復に専念なのである。
今回の総選挙は、しかし、選挙後のありようが、選挙の結果の議席配置で異なる。
一つは、自民党・公明党が過半数を制した場合。
自民党は、民主党を切り崩し、派兵恒久法を実現すると予測できる。
消費税増税を実施するだろう。
もちろん小沢代表は退陣し、先にのべた2つの課題で一致する部分で少なくとも大連立が可能となる。
2つ目の可能性。
民主党単独で過半数の議席を獲得した場合。これに、民主党と、共産党を除く他の野党で過半数を上回る場合もこれに加えてよい。
構造改革は継続されるし、派兵恒久法は民主党案で自民党も巻き込み、成立される方向に動く。実践的には自民党と協調するだろう。
3つ目。最後の可能性は、共産党が前進し、共産党もふくめて野党が過半数を占めた場合だ。つまり、民主党は共産党を無視しえない立場に立たされる。この場合にのみ、反構造改革の展望はみえてくる。野党4党共同提案の後期高齢者医療制度廃止法案がいま衆院で議論されているが、この制度の廃止が現実となる可能性は高い。
消費税増税は困難に直面するし、派兵恒久法は、民主党がこの場合であっても自民党と手を組む以外に成立の見込みは立たなくなる。
この意味で、総選挙は日本の将来を決める選挙である。政治体制の変化をもたらす契機となるものだ。
(「世相を拾う」08243)
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内部留保を一部はき出せ -派遣首切り
自動車減産、国内8社で176万台 ホンダは小型車も 金融危機による個人消費の冷え込みが自動車メーカーを直撃し、減産の動きが拡大している。ホンダは21日、日本、北米、欧州の工場で、7万1千台を追加減産し、3月末までに当初計画に対し計14万1千台を減産すると発表した。自動車大手8社の減産計画台数は合計約176万台にのぼる。 国内の大手自動車メーカーでは、トヨタ自動車が国内外で95万台、スズキが24万台、日産自動車が20万台以上の減産を計画している。世界経済がさらに悪化すれば、各社の減産台数はさらに増える可能性もある。 一方、従業員を削減する動きも加速しており、少なくとも海外で2500人、国内で計7千人以上の削減が明らかになっている。 ホンダは、これまで米国では販売不振の大型車の減産が中心だったが、燃費のよい中小型車も減らす。ホンダの07年度の世界生産実績は395万台。11年続けて過去最高を更新している。 世界最大市場の北米では、アラバマ工場でSUV(スポーツ用多目的車)などの大型車を計1万2千台減産。さらに、オハイオ工場で中型車アコード、小型車シビックを含む計6千台を減産する。シビックは一時は米国で生産が追いつかない状態だった。英国工場では来年2、3月に工場の稼働を休止し、2万1千台を追加で減産する。 これまで海外に限られていたホンダの減産の動きは、国内にも波及。12月から埼玉製作所(狭山市)で3万2千台を減産する。 |
と、いかにも人員削減が世界的な動きだから、やむなしの世論をつくろうとしているように思えます。
経団連「企業行動憲章」によれば、企業は「経済的主体であると同時に、広く社会にとって有用な存在でなければならない」と規定していますから、今こそ社会にとってその存在を知らしめなければなりません。それは、働くものを切り捨てるのではなく、どう守るかという立場を発揮することではないでしょうか。
記事の文脈からすれば、先にのべたように減産を迫られ、減益になる、だから経費削減、もっとも手っ取り早い方法として派遣を切る、これは国際的にも同じだという叙述です。
ところが、私たちは、国内の自動車メーカーが多額の内部留保(*1)を保有しているという、もう一つの事実も知っています。内部留保とは、企業がさまざまな名目でため込んでいる利益のこと。日本の大企業は、商法や法人税法、租税特別措置法などで、さまざまな形で合法的にため込みことが認められ、欧米にくらべても異常に多いことが指摘されているのです。
この間の膨大な利益が、非正規への置き換え、そして労働基準法違反のサービス残業をはじめ低賃金と長時間過密労働、下請企業への単価切り下げなどで生み出されたものだとすると、今回の事態のような場合にこそ、内部留保というためこみをはき出してしかるべきです。
内部留保のごく一部をふり向けるだけで、雇用の維持(創出)は可能です。
たとえば、2003年から期間社員などを大々的に導入してきトヨタは、08年までに、トヨタ本体で8000人から18000人へと2.2倍以上に増やし、トヨタグループ全体でも、4万人から8万7000人へと、2.1倍以上になっているといわれています。
その結果、トヨタグループは、経常利益を大幅に伸ばし、内部留保は、03年度の9兆5千億円から07年度の13兆9千億円へと1.5倍近くも増やしました。国内第一の内部留保額です。ホンダがこれにつづきます。
わかりやすくいえば、この隠し利益は、非正規社員の汗と涙の結晶だともいえるものです。
ため込んだ隠し利益を温存しながら、不況や国際競争などの口実でリストラを強要するのは横暴勝手というものではないでしょうか。
(「世相を拾う」08242)
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*1;①企業の利益(税引前当期利益)から税金、配当金、役員報酬などを差し引いた部分をあてる「利益準備金」や、「任意積立金」などの剰余金、②株式の発行価額と額面金額との差益などをあてる「資本準備金」、③将来見込まれる費用や損失に備えるのがたてまえの「退職給与引当金」「修繕引当金」などの各種引当金・準備金など。
田母神論文問題- 自衛隊「歴史観講座」を見直すそうだが
昨日の朝日新聞「私の視点」欄で、林香里(東京大准教授)が田母神論文問題をとりあげている(写真)。
林は、政府側の対応とメディアの姿勢に疑問を呈している。
林によれば(気になるのは)、
田母神氏の歴史観そのものではない。挑戦状を突きつけられたともいえる政府側の対応と、それを監視する役割があるはずのメディアの姿勢だ。 |
田母神氏に「言論の自由」があるという論理を盾にして、いまだに政府としての歴史認識を語ることを避けている。
メディアの多くもこれに引きずられてしまい、文民統制や任命責任などに重きを置いて報道してきた。
しかし、ことは思想や歴史観の問題だ。文民統制や任命責任といった手続き論も重要だが、「それがすべて」と簡単に片づけるわけにはいかない。歴史認識は、特別な政治的アジェンダ(課題)として政府と国民が共有するべきだ。そのための努力を怠ってはならないという責任感が、政治家にもメディアにも欠落していないか。
肯んぜざるをえない。
同じように、ブログ言説のなかでは、田母神とそれを後援するアパ、そして政治家の関係性に熱心に言及するものもあるようだけれど、それだけにとどまっておいてはならない。
自衛隊は、統幕長が、共産党・井上哲士参院議員が追及してきた自衛隊内の教育・講座の内容を見直すことを表明したそうである。
自衛隊:「歴史観講座」の内容見直しへ 統合幕僚長表明 自衛隊トップの斎藤隆・統合幕僚長は20日の定例会見で、田母神(たもがみ)俊雄・前航空幕僚長が統合幕僚学校長時代に新設した講座「歴史観・国家観」について見直すことを表明した。 講座では「現在の日本における歴史『認識』は、日本人のための歴史観ではない」とする教育が行われ、田母神氏の論文に近い内容が散見されるとして、野党側が問題視している。 斎藤氏は「全体のバランスからみてやや隔たりがあるという印象を受けるかもしれないが許容される範囲を逸脱したとはいい切れない」としつつ「今回の件をふまえ、よりバランスの取れた教育内容になるよう見直しを検討したい」と述べた。 |
侵略戦争を否定するという、憲法にてらして特殊な歴史観を自衛隊に持ち込むシステムが問われているのだ。田母神氏は「歴史観・国家観」という課程を導入をはたらきかけた当事者だった。その後、「新しい歴史教科書をつくる会」の現副会長らが講義している。
つまり、あらためて田母神論文を当ブログがとりあげるのは、こうした課程や講義が、たとえば統幕学校という教育の場で過去の侵略戦争を美化したということにとどまらず、自衛隊そのものを侵略戦争美化に導くものだからだ。
林は、政府の明確な歴史観を問うている。賛成だ。
先の記事は、追及された結果と考えられるが、課程の見直しを統幕長が表明したという事実を伝えたものだ。しかし、林がいうように、挑戦状を突きつけられたのは政府であって、浜田防衛相が(特殊な歴史観の持ち込みを)「たいへい重大」とはのべたものの、いまだに政府としての歴史認識を明確には語ってはいない。
自衛隊が特殊な歴史観を教え込む実態にあることについて、明確な責任が存在する。土壌をつくってきた責任がある。
政府の歴史認識はどうか、あらためて明らかにすべきだ。
(「世相を拾う」08241)
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麻生「医師不足」問題発言と構造改革継承
地方の病院での医者の確保の話だが、自分で病院経営しているから言うわけじゃないが大変だ。社会的常識がかなり欠落している人が多いんで。 |
まあ、やり玉にあげられた医師にすれば、あんたには言われたくない、ということではないでしょうか。
けれども、この発言が医師不足と結合させて語られているところに問題があると思います。とはいえ、首相は、自身がふれたように麻生飯塚病院の経営者でもある。医師不足の実態もまた、理解していて当然です。求人情報を恒常的にホームページで流しているのですから。発言のなかでたしかに現状についてふれてはいる。
つけ加えれば、麻生飯塚病院は、株式会社立でもある。病院経営コンサルトもやっているのです。
医療とそれに関連する分野を、いわば利益追求を目的とする企業として扱っているのですから、そこにはおのずと、医療は公的責任でとする立場とは異なるものがあるとみてよいでしょう。したがって、医療を、そして患者をみる眼もちがうということです。
こんな企業の総帥が麻生首相自身です。
その彼の国民との感覚のずれは、彼が政治家を志したそのときから世に知られることになりました。下々のみなさんなどとよびかけたのは、余りにも有名です。
そこで、話を元に戻すと、医師不足について首相はこうのべています。
(医者の)確保をどうするかという話を真剣にやらないと。小児科、婦人科が猛烈に問題だ。急患が多いから。急患が多いところは皆、(医師の)人がいなくなる。だったらその人たちの(診療報酬)点数上げたらと、5年ぐらい前、自民党政調会長の時から指摘している。必ずこういうことになると申し上げて、そのままずっと答えが出てこない。医師会も、厚労省も。 ちょっと正直、これだけ(医師不足が)激しくなってくれば、責任はおたくら医者の話じゃないですか。しかも医者の数を減らせ、多過ぎると言ったのはどなたでしたっけ、という話も党として激しく申し上げた記憶があるので、臨床研修医制度の見直しなどに関しては、改めて考えなければならない。 |
このように医師不足の責任を転嫁しています。この認識はほとんど二階氏と同じといわなければなりません。
もう一つ、首相の発言には研修制度と医師不足を結合させようという意思が働いているといえそうです。一部に、そうした議論があることを私は承知していますが、この考えは、医療崩壊の原因が臨床研修制度にあるとするものです。しかし、性急な臨床研修制度の見直しがは禍根を残すことも考えなければなりません。慎重な対応が必要です。
長年、医師会は自民党の支持母体ともいうべき存在でした。
以前に、新自由主義、構造改革とは、90年代までの日本社会の安定を形づくってきた条件を切り捨ててきました、とのべました(参照)。
医師会は、ここでいう(自民党が)切り捨てた対象でしょう。
それゆえ、自民党と医師会の関係も変化をしてきた。むしろ、医師会の認識は、構造改革のなかで削減去れてきた社会保障を国民とともに拡充していこうとする点で、まともだといえるのではないでしょうか。
麻生氏の発言は、こうした点をふまえるならば、基本線で構造改革路線を貫いていこうとする確固とした立場の表明だともいえます。
それは、最近の社会保障国民会議の最終報告が消費税増税を既定路線のように扱い、しかも社会保障費の自然増2200億円の削減をひきつづき貫こうとしているのですから。
麻生首相の発言は単なる失言のたぐいと判断したらまちがうでしょう。むしろ、消費税増税をやる、社会保障削減もやる、医師不足問題では、たやすくは譲歩しないという決意の表われだと私は思います。
そのことは、同じ知事会議のなかで「改革の続行が不可欠」だと強調していることからも明らかです。
しっかりと、構造改革路線をふまえていることを直視しなければなりません。
(「世相を拾う」08240)
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【関連エントリー】
新自由主義の行き詰まり- 大企業本位を問え
トヨタの横暴- 労働者はこうして切り捨てられる
人員削減の事実を伝えることは仮にあっても、トヨタ減益を衝撃ととらえ、それを大々的に報じるのがマスメディアの実態でしょう。
けれど、減益とはいっても6000億円の経常利益を見込んでいるのです。しかも、その利益確保のために働く者を切り捨てるというのですから、地域の雇用を守るという点での大企業の社会的責任が問われるのではないでしょうか。
企業は経営者、株主だけでなく、そこで働く労働者から成り立っており、商品を買うのは消費者です。企業はこの意味で、地域の支えがなければ存立しえない。企業には雇用の責任があるのです。企業さえ利益確保すればよいとし、労働者も地域も犠牲にしてよいのか、これを今、問わねばなりません。
トヨタの労働者に徹底して犠牲を転嫁する姿勢は、たとえば最近の「派遣使い回し」で明らかです。繰り返せば、「派遣使い回し」とは、派遣労働には「臨時的・一時的」という原則があって、そのため労働者派遣法には最大3年という派遣労働の制限がある。それを超えると派遣先企業は労働者に直接雇用を申し込む義務が発生するのです。
それをのがれるために、トヨタ車体は、使い回しをやっていたのです。つまり、A直、B直の2つのグループを「三カ月と一日」(*1)の期間で交互に移動させ、派遣社員を永続的に使いまわしていたのです。
この事実をはたしてメディアが伝えたでしょうか。しんぶん赤旗がこれを伝えたのですが、残念ながら、日本のマスメディアは大企業に弱い。ましてや日本最大の製造業、トヨタが広告宣伝費を片方でちらつかせると、もう腰が引けてしまうのです。三大紙が「使い回し」を報道した事実はないようです。10月に共産党の志位委員長がこの問題をとりあげると、その一月後にトヨタ車体はこれを中止しました。
労働者派遣法からの重大な逸脱を、トヨタが知らないはずはないのですが、「法の解釈がまちがっていた」という釈明でした。
それだけではありません。
本日の「しんぶん赤旗」によれば、トヨタが法で義務づけられた届けもせずに2000人を解雇したというのです。雇用対策法では、人員削減(1カ月に30人以上)をおこなう場合、職業安定所に届け出なくてはなりません。これに反していたのです。
これまた共産党の追及です。参院厚生労働委員会で小池晃議員が、厚労省まとめの人員削減報告にトヨタの雇い止めが反映していない点を質問したのです(参照)。
あわてたトヨタは質問の翌日に届け出たということです。
ここでも、トヨタは、期間満了による雇い止めは(届出の)対象外だと理解していたと釈明したというのですから、トヨタの法をも無視してはばからない横暴ぶりが、ここに表われているのではないでしょうか。
世界に冠たるトヨタがコンプライアンスというものを知らないはずはなく、当然、承知していたと私は思うのですが、それでもトヨタには遵法という言葉がないかのような環境がすでにあるということを、この事実は裏づけているように思います。
つまり、監督官庁も見逃し、政治も見過ごすという…。
メディアには広告宣伝費で、政党には企業献金をばらまくことで、自らの権益を最大限、確保するという大企業。
まさに今、奥田氏が脅しを利かしたように、日本社会が、そして政治でも大企業の横暴や勝手がはびこる事態にあるということでしょう。
日本社会のゆがみをもたらす、財界・大企業の横暴・勝手を許し、優遇する政治の転換が求められているのではないでしょうか。
(「世相を拾う」08239)
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*1;「クーリング期間」といわれています。
【トヨタ関連記事】
最近の当ブログのトヨタ関連記事をあげてみました。
トヨタがにらむと、こんな記事になる。。。
トヨタがにらむと、こんな事実が隠される
世は大企業の天下なのか- トヨタ・奥田発言
大企業の横暴と「正社員になりたい」という思い。
利益が第一。景気回復はどうなる。。- トヨタの派遣削減
トヨタ大幅減益で労働者切り捨て。これでよいのか
麻生・小沢会談雑感
この二つの政党の関係は理解しづらいものが正直、ありますね。
伝えられるところによれば、両党の党首会談という名称に、昨日の二人のトップの話し合いがふさわしかったとは到底、思えるものではありませんでした。
そもそも密室の党首討論よりも、国会内の論戦で、両党の政策的なちがいを明確にし、しっかり議論を尽くすことが今、もっとも求められていることでしょう。世論は今の自民党ではダメだというのですから、野党は、政府・与党を国会論戦で追いつめ、世論を喚起し、解散・総選挙に追い込む、これが筋道ではないでしょうか。
党首会談は、民主党がいいだしたといわれています。
小沢代表は、分かりやすくいえば、補正予算案を出さないなら(新テロ特措法延長案の)採決には応じられない、出すのなら審議に応じるということです。
しかし、新テロ特措法延長案の審議について、解散の前提となる補正予算案提出を条件とするものにほかなりません。
新テロ延長案はそれくらいの重みのものでしょうか。あるいは逆に解散をかちとりたいがために、補正予算-その中身をどうするのかがもっとも重要なはずですが-、つまり国民の暮らしをいかに守るのかという課題すら、横においてよいということを表白したことにほかなりません。
自民党政権がいよいよ政権としての機能を果たせなくなっていることがさまざま露呈してきている。こんなときにこそ、野党を自認するのであれば、国会の論戦で堂々と自民党を追及してほしい。そして国民世論によびかけ解散・総選挙をかちとる。
これを国民は望んでいるのではないでしょうか。
小沢氏の麻生氏へのよびかけは、はたして国民の願いにこたえるものであったのでしょうか。
そうではない。
小沢氏は、論戦で追い込み、世論を見方にしてこそ解散がかちとれるということを忘れてしまったのです。
氏のやり方は、従来の政治手法よろしく、密室で、政局をにらみながら、法案の中身よりも、通すか通さないかというまさに党略を重視するものではないでしょうか。
そこに国民の立場がはたしてあるといえるでしょうか。
小沢氏は昨年の福田氏との大連立密室会談とあわせ2回目です。
それだけに、氏の党略的態度を強く感じるのです。
(「世相を拾う」08238)
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際だつ日本の米国擁護- 金融サミット
低迷する支持率。おそらくその起死回生策としても、もくろまれたであろう給付金をめぐって、いよいよ政府・与党は混迷を深めている。そして与党内の不協和音は、実施延期はもとより、期待していた人にとっては、ほんとうに実施されるのか否かという不安すらかきたてるだろうことを予測させる。
G20による金融サミットが閉幕した。
サミットは金融規制強化を宣言のなかでうたった。これが第一の成果だろう。
つまり、銀行などの金融市場参入者が自らの最大限の利益追求のためには、手段をえらばず、リスクも顧みないという動向、これが危機をもたらしたと断罪したといえる。
国内の迷走をかかえつつ、わが麻生首相ももちろん出席した。
政権を取り巻く環境が先にあげた状況にあればこそ、首相は会見で、サミットのなかでの日本の存在感と役割の大きさを大げさすぎるほどに強調してみせた。限られた情報からは、しかし、首相がいうほどには参加国に受け止められているとはいえないようだ。
たとえばつぎの事実一つからもそれが伺える。首相が次回開催は日本でと声高にさけんでみても、サルコジが一方で次はロンドンだと会見している映像が流されているのだから。
サミットのなかでの日本の対応は、このようにのべると、おおかた察してもらえると思うけれど、少なくともヨーロッパ諸国、新興勢力とは異なっていた。
今回のG20で課題とされていたのは、規制緩和に関する国際協調だけではもちろんない。金融危機のなかで、ドル体制は明らかにゆらいでいる。米国の地位低下を誰もが感じ取っているのが今だ。「米ドルはもはや基軸通貨ではない」と言い切ったサルコジの言葉が象徴するように、米国の低下とそれを乗り越えようとするヨーロッパ諸国の意思があらためて明確になった。
サルコジが「つぎはロンドン」というのも主導権をヨーロッパにという強い意思が働いているといってよい。
ブッシュが米国の威信を維持しようとこれに抗おうとしたことも伝えられているが、どうみても威信低下は疑うべくもない。
このなかで、麻生首相の態度はヨーロッパ諸国と比べるとそのちがいが際だつ。
彼は「ドル基軸体制を支える努力を払うべき」と提案したのだ。
率直にいえば、アメリカ発の金融危機に世界が直面している今こそ、米国が主導してきたカジノ資本主義の破綻をしっかり受け止めて、これまでの米国のいうことなら無条件に受け入れるというような米国との従属関係を、一から見直す好機ではないのか。
こう考えると、ここに至っても米国主導を支えることを提案する首相は、たとえると誰からも支持されず没落していく貴族に、一人手を貸そうとする僕のようなものだ。
世界の認識ははるかに先をいっている。
麻生首相は、IMFの資金増強のために1000億ドル(10兆円)を融通することをのべたが、この上に、米国を助けるために円を売って低下しつづけるドルを買うような愚挙を許してはならない。
(「世相を拾う」08237)
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【関連エントリー】
金融危機と基軸通貨のゆくえ- 岩井克人氏の所説から
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